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別れと新たな歩み


ここに、一人の冒険者がいた。


彼の名はドラン


正式な名前は、「ドラン・A(アルファ)・ガーヴァン」

ザッツ・G・ガーヴァンの、実の息子である。



―――



「はー…そろそろ故郷に帰って、母さんの飯食べたいなぁ…」


1人で、枯れ果てた大地を歩いている。

格好は、どうみても王族の格好では無かった。


紅色の綺麗な髪の毛は、泥で汚れている。

着ている鎧は、ガーヴァン王国の紋章である、紅い龍の模様が所々に張り巡らされている。

だが、その模様も今では、擦り切れて、観る影もなくなっているようだ。


「お、そこのあんちゃん。新聞読むかい?」


通りかかった馬乗りの言葉に、ドランは聞く耳も持たない。


「あー、ガーヴァンに帰りてぇ…」


ふと、そう声を漏らすと、新聞売りは驚いた顔で言った。


「え? ガーヴァンって、あのガーヴァンだよな? 」


「あ? そうだけど、何か悪い?」


「いや、数日前にガーヴァンは滅んだろ。魔神軍にやられて」



は…? ガーヴァンが滅んだって、どうゆうことだよ。

父さんも、母さんも、無事なのか?

俺の故郷は、もう無いのか?


「新聞よこせ。いくら?」


「1銅」


「ほら。さっさとあっちいけ」


新聞を、強く握りしめて見る。

その日の新聞は、ガーヴァン王国についてのものばかりだった。


ガーヴァン王国 魔神軍の襲来により滅びる。

ガーヴァン王の行方は不明。


その魔神軍を討伐したのは、恐らく 勇者 フォルネ・ラリバーである。


そう、記述されていた。


父さんは、行方不明…

母さんについては、何も書いていない。

こうなれば、することは1つ。


「くっそ…! 行くしかねぇじゃねぇか!」


ドランは、枯れ果てた大地から、急ぎでガーヴァン王国まで向かうのであった。



◆ ◆ ◆



「馬車がないから、歩きで向かわないといけないな」


次は、どこに行こう。

まず、魔神軍がどこに住み着いているのかも分からないんだ。

それを知るために、まずは色々な街や国に行こう。


「ねぇ、フォルネ! あれって、なに?」


リアムが指を指す方には、何かいた。


「おーい、あんた! ガーヴァン王国になんのようだー?」


だが、返答はない。

リアムも顔色を変え、戦闘態勢に入った。


まさか、追手か?

魔神軍め…!

だけど、相手は1人!

殺れる。


「おい! そこをどけろ! フォルネ・ラリバー! 」


「あんたこそ、何者だ‼」


「チッ…今急いでんのに」


馬に乗った男は、機嫌が悪そうだった。

一見、魔神軍には見えないが、見た目で判断してはいけない。


警戒を緩めるな。


「俺はドラン・ガーヴァン。ザッツ・ガーヴァンの実の息子だ」


息子だと? もし、ガーヴァン家の血筋なら、なぜこんな格好をしているんだ。

まるで、冒険者みたいな見た目だ。


「いいや、信用出来ないな」


「あぁ…もう! バルセルを呼んでくれ。俺の幼なじみだ!」


リアムを、こいつと二人きりにさせておけないな。


「リアム、俺がここで待ってるから、バルセル呼んできてくれ」


「分かった!」




「え、あの女の人って、あんたの彼女?」


「いや、フツーのパーティーメンバーですが。なんで?」


「いや…なんとなく」


マジなんなんだ。

コイツ…

王子って、こうゆうもんなのかよ。


「お待たせ――って、ドラン! 帰ってきてたのか!」


「ほらな?」


ドランは、ドヤ顔で俺を見てそう言った。


こいつ、まじうぜぇ…



―――



「そうか…父さんも、母さんも…」


「あぁ、ガーヴァン王は見つけたんだ。でも、元々重い病気を患っていたみたいでさ」


「そっか…」


久しぶりの再会…ってことか。

なんか悪いな。ホントに、この人が王子だとは思わなかったから。


「じゃあ、バルセル。今度はホントに行くよ」


「分かりました。ありがとうございます。またお越しください」


「分かった。絶対来るよ」



そして、今度は本当に、ここから経つことになった



「ねぇ、フォルネ」


「ん?」


「私、お腹すいた…」


「俺もお腹へったな。朝から何も食べてないし。」


どうしよう。

食料は、あるにはある。

だが、あまり味の良い物ではない。

出来ることなら、美味しいご飯を食べたいんだが。


あ、そういえば、ここから北に10分程度進むと、小規模な村があったはずだ。

そこで、ご飯を食べるか。


「よし、行くぞ」


ドランから譲り受けた馬のおかげで、想定していたよりも、結構速く着くことが出来た。


「ここが…ヤーン村」


話に聞いていた通り、本当に小さな村だ。

だが、飯屋はあるっぽい。


こうゆう所のご飯は、大体美味しい と、よく言う。

楽しみになってきたな。

何を食べようか。


「猪肉の焼き豚丼と、鶏炒め丼だね。少し待ってて、急ぎで作りますから」


猪肉かぁ、あんまり食べたこと無いけど、結構美味いって誰かが言ってたな。


飯屋には、俺たちの他に一組、冒険者らしき人々がいた。


「私は魚の方が―――」


「何いってんだ! こうゆうときに来たら肉だろ―――」


「うちは野菜で――」


彼らはそんな話をしていたのだが、一人の屈強な男が言った。


「それで、魔神軍は ザリバーム帝国 にいるというのは本当なのか?」


魔神軍についての情報だ。

少し、話を聞いてみよう。


俺は席を立ち、彼らに聞く。


「すみません。そのお話、詳しく聞かせてもらえますか?」


「え? え! まさか勇者様!」


俺も、随分と有名になったものだな。

少し前までは、ただの少年だったのに。

それが、今では勇者様! なんて言われるのだから、この世は凄いな。



「―――――って事があったんだよ。噂話だから、ホントの事かどうかは知らねぇけどな」


今までは、魔神軍の下っ端が目撃されたとかいう情報しか無かったが、今回は拠点としている場所の情報だ。

嘘か本当かは分からないが、試してみる価値はある。


「ありがとうございます。その情報を頼りに、ザリバーム帝国まで行ってこようと思います」


「じゃあな! 魔神軍、絶対殺してこいよ!」


彼らはとても人柄の良い人たちだ。

冒険者なんて、大体は情報を教えるから、金をくれ。

とか言ってくるんだよ。

そして、教えてもらった情報もしょーもないものばかり。

『魔神軍が糞してるとこ見たぜ』

とか、絶対にデマだろっていう情報もあった。


ま、それでも情報には変わりないんだけどさ…




リアムは、悩んでいた。


フォルネとこのままの関係でいいのかと。

それは、今が不満というわけではない。

ただ、いつまでもこうしているのは、駄目なんじゃないか。


そう思っていたのだ。

だが、その反面、リアムはこうも思っていた。


告白したりしたら、冒険するのが気まずくなってしまうと。


リアムがそんなメルヘンな話題で悩んでいる最中、フォルネは全く別な事を考えていた。


ザリバーム帝国といったら、あまり良いイメージはない。

治安は悪いし、人殺しなんて日常。

そこに行った冒険者は皆、身ぐるみを剥がされて帰ってくるそうだ。

俺がいくら勇者だからといっても、大人数に囲まれたりしたら、勝てるわけ無い。


しかも、こっちにはリアムもいる。

ザリバーム帝国に女の人を連れて行くと…

あまり良い扱いは受けないらしい。

まあ、ザリバーム帝国には飢えた奴らがいっぱいいる。

色々な意味でも。


だから、リアムを連れて行くのはあまり懸命な判断ではない。


だがどうする。

正直に言うか? リアムは連れていけないって。

それもそれで、何か可哀想なんだが。

いや、それよりももっと嫌なことをされるくらいなら、その方がマシだ。

よし、正直に告げよう。


そう、フォルネが決意した時、リアムも決意した。


よし、決めた。

私告る。



「「あのさ!」」


二人の言葉が重なり、二人ともが驚いた顔でおたがいを見つめる。


リアムは、フォルネに何か期待するような目で彼を見つめていた。

だが、フォルネの口から発された言葉は、リアムの期待するような言葉では無かった。


「ザリバーム帝国は、危ないんだ。色んな意味で。だから今回ばっかりは、リアムはついて来ないでくれ。」


「え…あ、うん。分かった。私も噂に聞いてたし」


どうしたんだ。リアム。

何か機嫌悪いな。

俺、なんかやらかしたのか。

やっぱり、ついて来ないでくれって言ったからかな。

まあ、長くても来週には機嫌取り戻してるだろ。

というか、これはリアムのためなんだ。


あ、でも1人か。

あっちでもし、魔神軍との戦闘になったら不味いな。

俺死ぬくね。


とりあえず、見つけたら一旦戻ろう。

その場で戦うのは、あまり良い判断では無いからな。



こうして、フォルネはザリバーム帝国へ。

リアムは、少し離れた村で待機することになったのである。


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