魔の力
「冥界の神に会って?」
ナナが大きな声できくから、そうだよ、と大きな声で答えてしまう。
神殿に戻って、ナナの部屋で今日あったことを話している。
「冥界は神様がいる世界で、魔族の世界ではないようだ」
と言うと、ナナは不思議そうな顔をした。
少女とシューはうなずいている。
「じゃあ、魔族は人間の世界にしかいないの?」
とナナに尋ねられて、そうかもしれないと思った。
「人間の世界の、目に見えないところにその力が集まっているの」
少女が答えた。
「本の中とかに力があるの」
少女が言うように、昔の物語の中に魔がある。
「昔の人が魔だと思うような恐ろしい事が、物語になって伝わったんだろうね」
と言いながらこの部屋にある多くの本を見た。
人々に共有された物語の魔は、魔術師に古い呪文で呼び出されるのだろう。
「魔の物語になるまでに、どれほど多くの人の恐ろしい気持ちが集まったんだろう」
シューもそう言いながら、部屋中にある本を見ている。
「多くの国が滅んできたのよ、どれほどの人なんて考えたら星の数ほどになるわ」
ナナの国では、滅んだ国々の多くの記録が残されている。
滅んだ国々の恐怖が集まった魔の物語は、のちの時代の別の国でも本によって共有された。
「人間の目に見えないだけで、形にならない力はこの世界にたくさんあるの」
少女は見えているかのように話す。
「魔の力を集めて一番多くの力を使う事ができる何かを魔王というなら、魔王はなんでもいいの」
「えっ、なんでもいいの?」
「うん」
少女はシューに答えながら、つないだ手を振り回した。
わかってもらえてうれしそうだ。
「魔族って人間でもなんでもいいの?」
「うん、魔の力を持っているもののことでしょう?」
少女はシューに答えながら、つないだ手を振り回し続けている。
「人間でも? じゃあ誰でも?」
シューは混乱している。
そうだねえ、わたしたちは魔族ってことになるのかな、魔人だし。
「でも神官だし、そんなはずはない、魔族ってどういうこと?」
シューは認めたくないようで、まだ混乱している。
「魔族、魔族」
少女はなぜか楽しそうに手を振り回している。
ナナは魔術師なのに、魔族の説明に驚いている。
なんだろうね、神の使いが魔族と楽しそうで、魔族は恐くないのかな。




