夢占い
「『魔術と魔神伝説』ですって! どうしてそんな本を持っているの」
ナナが立ち上がって、わたしに言う。
「ナナが探していた本の気配がしたから、本に乗って踏んだの」
ぱっちり目が開いた少女も、急に立ち上がった。
「おかげで風の魔人になったんですよ」
シューも立ち上がった。
なんでみんな立ってるの?
三人に見下ろされながら本をテーブルに置くと、ナナが本を手に取った。
「ああ、その本に触ると魔人になるよ」
と言うと、ナナはすばやく本を後ろの箱に入れた。
「うっかり火の魔人になったんだ」
ちょうど、スープが出来上がった、とおばばが部屋に入ってきた。
無言で食堂へ移動して、あやしい香りのスープの前に座った。
火の魔人と風の魔人について、ナナはなにも質問しない。
本で魔人になるなんて怖いよね。
「疲労回復の薬草が多めに入っているから、元気になるぞ」
とおばばは言うが、変な味がして元気になる感じではない。
力が抜けて、急に眠くなった。
食べ終わるとふらつきながら寝室に行って、朝までぐっすり眠った。
おばばは今夜見る夢を覚えておくといい、と言っていた。
魔法使いのおばばは、夢占いができる。
翌朝、夢だったのかいつもの夢のような予知なのかわからない記憶があった。
シューとわたしは魔人になって、風と火を操って街を破壊していた。
魔人になると、人間にはできないような残酷なことをしてしまう。
魔の力は簡単に人間の暮らしを破壊するんだな、とその光景を見ながら考えていた。
わたしと魔人のわたしは同じ人間の中にいる、別の人格になっていた。
魔の力は、わたしの中にある小さな魔の人格を増幅させる。
あり得ないと自分の中に押し込めた選択肢の一つが、魔の力らしい。
王都で店先を破壊しながら走って逃げた、異民族の兵士を思い出した。
この小さな魔の力は、自分が敵だと認めた相手には大きくなって現実化する。
目にみえる魔の力は、炎より赤く輝いて火柱のように高く上がっていた。
夢か未来かわからない世界では、わたしがその力を使っていた。
「そんな夢だったよ」
と朝食の席で話すと、誰もが嫌な目つきでわたしを見る。
「アレンや、魔王にでもなるつもりか」
おばばの夢占いの結果が、魔王だった。
いやいやいや、そんなわけないでしょう。




