砂漠の書庫
「王都には図書館があるし、研究所もあるでしょう、でも今そこで研究されているのは、魔術じゃないの」
ナナは魔法の本について話し続けている。
怠け者の巫女だったナナとは別人のようだ。
ナナが集めている魔法の本は、魔術師が古代魔法を使うために必要なものだ。
でも王都の有名な学者たちは、魔法を迷信だと決めつけて研究しなくなった。
「私の国では、古代からいくつもの王国が滅んでいるの」
繁栄した国家を力で滅ぼした古代の王は、滅ぼした国の技術や知恵が失われたことに気づいたそうだ。
「失われた技術や知恵が欲しかった古代の王は、滅ぼした国の文書を砂の中から掘り出して、書庫に集めたの」
その国が滅ぶと、書庫は再び砂に埋もれて、さらに別の国の王がそれを集めて、国が滅ぶと再び書庫は砂に埋もれた。魔術などの貴重な本は、何度も砂に埋もれて失われたそうだ。
「失われた古代の技術や知恵を、今も集め続けているわ」
ナナの国の古代の書物は深く埋もれて掘り出せないから、交流のあった外国のどこかに残っている写本を探すことにしたそうだ。
「この国にも昔、図書館があったけど、戦争で焼けてしまったよ」
というと
「私の国にも古代の図書館があったけど、それは砂に埋もれているの」
とナナが答えた。
図書館は戦乱で破壊されるし、国が滅ぶと埋もれてしまう。
でも図書館では多くの写本が作られた。
「その写本は他の神殿の書庫にあったり、本屋で売られたりしているの」
ナナはその本を集めるために、この国に来たのだという。
「古い神殿の書庫は、廃墟となって砂に埋もれていることもあるの」
ナナの国の古代の図書館は深いところに埋まっているけど、まだ廃墟が地上に残っている古い神殿の書庫は浅いところに埋まっていて、掘り出すこともできるそうだ。
「砂に埋もれた猫の神殿があるのなら、写本があるかもしれないでしょう」
そうだね。
この長い話に耐えきれなくなって少女は眠っているし、おばばは台所で夕食を作り始めた。
シューはなぜか目を輝かせて、わたしを見つめている。
「何? どうしたの」
シューに尋ねると、わたしを指さして言った。
「それじゃないですか、『魔術と魔神伝説』ですよ!」
シューが叫ぶと、ナナが驚いた顔でわたしを見た。
そうだった、魔法の本があったね。
ナナがずっと話しているから、忘れてた。




