猫の神様の神殿
「人間に戻って人間の言葉で話さないと、何もわからないよ」
にゃ、にゃ、と言ってる猫は、シューの言葉で気がついたように少女に戻った。
「でも、人間の言葉でそれをなんていうかわからないの」
少女は、人間の言葉が表現しない、本当は有るもののことだという。
「人間は、目に見えないものを表す言葉が少ないから」
魔王に関することは、力を持つのに目には見えないから、ないものにされているらしい。
神のように、目には見えなくても表現されるような、何かなのかな。
少女は、難しい、と言いながら、困っている。
女神様の祭りが始まって、街は多くの人で賑わっている。
その賑わいの音とは別の、何かの声が届いた。
「にゃ、にゃ、にゃ」
その声に応えるように、少女が鳴いた。
「何の声なんだ?」
と聞くと
「この街の中から、湧き出るような猫たちの声が」
と少女が答えた。
「どこなの? 行ってみよう」
シューの言葉に反応して、少女が走り出した。
街の中心部から遠ざかっていく。
途中から、少女の姿で走ることに疲れたのか、ゆっくり歩き出した。
「もっとずっと向こうから聞こえる」
少女が指差す方向には、廃墟のある荒地が広がっている。
「あそこから聞こえる」
そこに着くと、なぜかわたしにも猫の声が聞こえた。
「これが猫の声なのか」
地面から湧き上がる、数百、数千匹の小さなくぐもった猫の声が聞こえる。
「元々巨大な神殿だった場所ですね」
シューが、柱の飾りだったと思われる大きな石を指差した。
巨大な神殿は、廃墟となって崩れて砂に埋もれたようだ。
「この下から猫の声がする」
少女が言うと、シューが風を操った。
つむじ風に乗って、砂が巻き上げられる。
しばらくすると、美しい猫の神様の像が浮き上がってきた。
その下では埋葬された古い時代の猫たちが、小さな声で鳴いている。
数百年前に埋葬された猫たちは、少女を励ますように鳴いた。
猫たちの力は、鳴き声から小さな光に変わって、猫の神様の像の周りをくるくる回って輝き始めた。
シューが操っているのか、猫たちの力なのか、神像は美しい光に包まれて浮かび上がっている。
「神様」
少女は神像に声をかけた。
猫の神様の像は少女を見下ろして、少し笑った。
少女がそれを見ると、すぐに猫の神様の気配は神像から消えた。
埋葬された多くの猫たちの光も、力を使い果たしたかのように消えていった。




