少女の家
「なんでついてきちゃったの?」
白猫だった少女にきいてみると、
「にゃ」
と答えた。
「人間の言葉で話して」
とシューがお願いすると、
「うん」
と返事をした。
故郷の町から街道へ出た所で、白猫がいることに気づいた。
この猫は、わたしの故郷から来たのだろうか。
「猫の神様に、遠くまで用事を頼まれたの」
少女が、人間の言葉で話し始めた。
「帰って来たら、猫の神様はいなくなって、神殿は深く積もった砂の下になっていたの」
猫の神様は、古い時代の信仰だ。
この国が大国だった、もう誰も知らないような時代のこと。
今もこの国のどこかで、ひっそりと信仰されているのだろうか。
「ずっと砂を掘っていたら、女神様が神殿に呼んでくれたの」
(神殿に来たら、猫の神様に会う時が来るかもしれない)
(でも砂を掘り続けていたら、使いの猫は消えてなくなってしまうだろう)
と女神様に教えてもらったそうだ。
「しばらく神殿にいたら、女神様が、その神官と一緒に行きなさい、と言うから」
わたしが女神様の声を聞いた、あの時、この猫もそう言われていたのか。
「一緒に旅をしたの」
こっちは聞いてないから、変な猫がいると思っていたよ。
「猫の神様のお使いをする猫は、人間が神様を思う気持ちがなくなったら、消えてしまうの」
猫の神様は見えていたのに、今の世界では見えなくなってしまった。
猫の神様の使いは、人間の思いが集まって、仕事をしていた。
「いつでも人間に変身できたのに、今は難しくて、すぐ猫に戻っちゃう」
そう言いながら、少女は白猫の姿に戻った。
「猫の神様に会いたいの?」
シューがきくと、猫がうなずいた。
「じゃあ、会いに行こうか?」
シューが言うと、猫はうれしそうに跳ねた。
魔人になったわたしとシューと、猫の神様の使いの少女は、一緒に旅をすることになった。
とりあえず、猫が砂を掘っていた、神殿が埋まっている場所に行ってみよう。
何か手がかりがあるかもしれない。
「わたしたちは、魔人になったみたいなんだけど、魔王って知ってる?」
と猫に聞いてみた。
あの魔人の本を買ってしまったのは、この猫のせいだし。
「にゃ、にゃ」
と猫が答えた。
何か言いたそうなんだけど、人間の言葉で話してくれない。
言いたくても言えないかのように、にゃ、にゃ、と言い続けている。




