魔物の少女
猫が火柱からどんどん離れていく。
シューと一緒に猫を追った。
「だめだ、間に合わない」
走りながらシューに声をかけた。
すると舞い上がった猫を目で追っていたシューが、猫に向かって手を上げた。
猫はふわりと浮いたようにゆっくり落ちている。
風を操っているようだ。
それでも猫はあせったように暴れている。
「にゃあーー、きゃーー、にゃー、きゃーーー」
暴れたまま、白い猫の姿が白い服を着た少女と重なって見える。
猫と白い服の小さな女の子は、二重になってぼやけている。
「なんだこれ」
ときくと
「猫が女の子になった」
と言いながら、シューが女の子を見つめていた。
ふわりと浮いているのに、猫? 女の子は叫び続けている。
白い服を着た小柄な少女は、白猫になったり少女になったりして動きが止まらない。
興奮しているのか、どうしていいのかわからないように変化し続けている。
そしてゆっくり、シューの腕の中に落ちた。
驚いた顔の少女と、シューが見つめ合っている。
「にゃ?」
猫は少女の姿なのに、変なあいさつをした。
シューは抱きとめた白猫が、魔物だとわかっているみたいだ。
それでも可愛らしい少女に変化しているそれを、魔物だ、と叫んだりしない。
ふんわりシューの腕の中に落ちてきた少女を見て、目を見張っている。
魔物の白猫であることなど、関係ないように驚いている。
「下ろして」
少女が小さな声で言うと、シューはていねいに少女を下ろした。
三人で近くの灯りに向かって歩くと、そこは次の火柱の場所だった。
王宮の丘の下の左側で、多くの人が集まっていた。
王宮の前の大きな火柱が輝いているのが見える、明るい場所だった。
楽器の音が聞こえてきて、女神様を讃える歌が、火柱とともに高く響いている。
火柱の光は、そこに集まった人々に祝福を与えているかのように輝いている。
火柱を見ている異民族の兵士も、この国の人々も、そこにいただけの誰かも、祝福されている。
「ああ、これだ、誰もが女神様に祝福されることが必要なんだよ」
王を信仰しても、王を崇めるだけで祝福されない。
どこの国の誰であっても、生きていることを祝福される時間が必要なんだ。
シューと猫だった少女も、ぼんやり火柱を見ている。
魔物の少女も祝福されているようにみえる。




