王都に戻る
王都に戻ると、北の神殿が破壊されたことが問題になっていた。
北の神殿から王都に戻った神官が伝えたのだろう。
多くの神官たちの怒りが、そのまま街の人々の怒りになっているようだ。
勇者の王は、伝統的な神殿を理解していない異国の人間である。
神殿の信仰は数千年の歴史がある。
異国の人間が勝手に神になれるものではない。
異民族に神殿を破壊された、と王都の人々が思ったとしても不思議はない。
街の中は荒れていた。
王は宮殿で生活していて、街には出てこない。
兵士は街の人で、神殿を破壊した王に不信感がある。
異民族の兵士たちは、街に出てこなくなった。
丘の上にある宮殿には、この様子が伝わらないのだろうか。
王宮近くにある神殿に、多くの人が集まって礼拝している。
神殿が破壊されないように、防いでいるかのようだ。
数日前から、王宮がある丘に火を放つ人々がいるそうだ。
消火する兵士が取り締まっていいはずなのに、
誰もそれを止めない。
「街が荒れています」
と言うシューは、北の町よりも大きいこの街の様子が不安なのだろう。
大通りの商店街では、声を荒げて話す人が多い。
危険があるのか、閉まっている店が多くなっている。
王宮の丘は、木が焦げて黒ずんでいる。
焦げたようなにおいが、街中に漂っている。
王が少しも気づかない、なんてことはないだろう。
交通の要衝で、港には多くの船が行き交っている。
外国からも、多く商人が集まっている。
何かが起こる気配を、誰もが感じている。
この商業都市で戦闘が始まったら、どうなるのだろう?
にゃ〜、といつもの猫がのんきに鳴いた。
「この猫、おかしくないですか」
とシューが言う。
「ああ、こいつも王都に戻ってきたのか」
シューが疑い深い目つきで猫を見ると、猫が目をそらした。
「ほら、やっぱり、目をそらすなんておかしいですよ」
「そういえばそうだな、いつもいるんだ」
「飼ってもいないのに、北の町から王都まで来て、いつもいるなんて」
どう考えてもおかしいな。
「おまえは魔物なのか?」
そう言いながら猫を見ると、また思いっきり目をそらす。
「この猫、魔物なんですか!」
シューが驚いて大声を出すと、猫は逃げて行った。
こんなふうに逃げるなんて、魔物みたいだな。




