北の町の反乱
宿屋の窓から外を見ると、月が大通りを照らしている。
白猫が数匹の猫に追われて、深夜なのに騒いでいるのが見える。
うるさいなあ、と思いながら姿を追っていると、
向かいの建物の部屋の窓が開いた。
町の大通りには、レンガ作りの三階建ての建物が並んでいる。
その窓から顔を出して、美しい少女が神殿に向かって祈りを捧げた。
いつもの習慣のようで、ためらいなく正しい方向に祈る。
手に持っているのは、商人が作った丸い動物の置物なのか、
祈り終わるとそれを、大事そうに抱えた。
翌日、宿から大通りをまっすぐ歩いて北の神殿に向かった。
神殿の前には、土産物屋が並んでいる。
昨日の商人の店なのか、丸い動物の置物を売っている店があった。
「ここで買ったんですよ」
とシューが言う。
そこでしばらく置物を見ていると、神殿へ行くのか兵士たちが通りがかった。
神官がいることに気づいて、こちらを見た。
するといきなり、兵士の一人が怒ったような顔で近づいてきた。
「なんだこれは!」
とわたしの隣で叫ぶと
(女神様のご加護があります)と書かれた紙を商品の間から抜き取って、
丸い動物の置物を棚から落として割った。
「なにするんですか!」
シューが叫ぶと、店の奥から昨日の商人が出てきた。
商人が兵士につかみかかろうとする。
兵士がにやりと笑う。
シューがあわてた顔でそれを見ている。
その光景は、まるで昨日見た夢であるかのように見覚えがある。
わたしにはいつも変なことが起こる。
商人の怒った顔と、兵士がにやりと笑った顔、シューのあわてた顔、
なぜかこの状況に、見覚えがあるのだ。
その記憶の中では、一瞬時が止まったかのように思考している時間があった。
それが今だ。
このあと商人が兵士に殴られて、商品を壊されて終わるはず。
でも今回は、そうならないように動くことができる。
兵士の足が目の前で止まって見える。
ほんの数秒余裕ができて、わたしは兵士を足で引っ掛けて転ばせた。
その上に商人がのしかかって「詫びろ!」と叫んだ。
後ろにいた数人の兵士の周りには、丸い動物の置物が風に乗ってくるくる回っている。
兵士たちは、いくつもの置物が舞うつむじ風に中に閉じ込められているようだ。
シューが怒りながら、風を操っている。
怒るほど、技が冴えている。
天才かな。
「女神様の怒りが!」
一人の兵士が、腰を抜かしながら叫んだ。
置物の動物はのんびりした顔のまま、高速で回転し始めた。
すごい、これは見覚えない、シューの力は未来を書き換えながら回転しているのかもしれない。
兵士たちが降参したように座ると、置物の動物たちは兵士を囲むように着地した。




