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小さな力が集まったら  作者: ちゃい
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女神様の神殿

神官アレンの話です。

 神殿の仕事はつまらなくて、高いところにある窓ばかりみていた。


「なんで途中でやめるのよ」

 文句を言うのは、巫女の仕事を放棄したせいで塔に閉じ込められているはずのナナである。


「こんなところで祈りの言葉をきいている人間なんていないよ」


「お昼寝にちょうどいい声なのにやめないでよ」

 この子はここにいないはずの人間だから、そんな意見はきかない。


「それにしても、なんだかおかしいな」

 ここは神殿の奥の祈祷所なんだけど、近くに人の気配がない。


「アレン、どこへ行くの」

 急いで神殿の入り口まで走った、誰もいないのはおかしい、そんなに小さな神殿じゃないんだ。


「おお、アレンか、軍が攻めて来よった、神官長が捕らえられたから皆逃げてどこかへ行ったぞ、三日前に」

 三日前かあ、知らんかったな。魔法使いのおばばしか残っていないのだろう。

 政変があったようだ、神官長の権威もここまでか、陰謀で忙しい人だったな。


「扉を閉めきって三日も籠るから置いていかれることになる」

 ナナが見つかるとかわいそうでつい、お供え物を食べて適当にお祈りしていたんだけど、三日は長かったかも。


「こっそり静かに軍が入って来たの?」


「何を言っておるのじゃ、軍が攻めて来たんだぞ、きこえなかったのか」


「ええ、思ったより騒がしくないものですね、起こってみると」


「アレン……」

 おばばに呆れられてしまった。

 祈祷所の扉が厚くて防音効果があったのか、わたしが熱心にお祈りしていたのか。そのせいで時代に取り残された感じ。


「別に出て行かなくてもいいんでしょう? ここに住んでいていいの?」


「新政権の宗教施設ができるからそっちに行ったほうがいいじゃろ、力のある神官なら」


「おばばは行かないの?」


「寂れて人が来ないなら魔女には好都合じゃ、今までみたいに肩身の狭い思いをしなくて済むからな」


「なんだ、居ていいの? よくわからない新興宗教を始めるよりここの方がいいかな」


「アレンは変わっているのう」

 よく言われます。


 まだ信仰している人がいる宗教施設は無理に破壊されることもなく、1か月が過ぎた。

 女神様を信仰するおばあさんたちがお祈りしたり、お供えしてくれたりしている。

 それを迎えるのは魔女のおばばと、怠けてばかりで監禁されていた巫女のナナなんだけど、今までと同じように神殿に来てくれる。


「アレン様が残ってくださって、女神様も喜んでおられますよ」

 いえいえ、動くのが面倒だっただけです。女神様がどう思っていらっしゃるのか、呆れてないといいけど。


「年寄りは許されてますけど、若い者は新しい神殿へ行くように言われてましてねえ」

 ああ、新王から圧力がかかっているんだ。


「無理しないでくださいね、もめごとは女神様の望むところではないでしょう」

 と言ってみる、もめごとを起こすようなおばあさんたちではないんだけど。


「大丈夫ですよ、アレン様こそ気をつけて」

 わたしは大丈夫なんです。


 力が強い神官にはあるべき形が理解できるようになっている、簡単に言うと予知能力。女神様のおかげで感覚が普通の人より鋭くなっていて、みえないはずのものがみえたり、わかりにくいことが簡単にわかったりする能力があるのだ。それなのになんで今回はわからなかったんだろう。重要なことではないから教えてくれなかったのかな。


 女神様は青い宝石のようで、空と雲で表現されている。

 大きな白い石の柱と、青い石の壁でできている神殿の、すべての場所にいらっしゃる事になっている。

 飾りがない大きな青い石の壁には、何かが映ったり通り過ぎたりしていて、女神様が何かを伝えたがっているように感じることもある。普通の人にはみえないんだけど。

 この神殿は空のような、海のような場所だ。







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