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救世のディアフトライ  作者: 波多見錘


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THE NATIONAL POLICY

 コト


 「結論から言うと、私たちの出撃の許可はされなかったわ」

 「そう……ですか」


 伊集院は渡辺の持ってきた答えに落胆はしたものの、驚いたり激高することはなかった。まあ、わかってはいた。今回の件で国はDBTを出撃させず、国主体の力で動こうとするのはある程度予測はしていた。


 「まず、上が言った理由として国からそう言われている。民間の避難も完了している今、警察は無用だと」

 「まあ、本来の警察の目的はそっちですしね」

 「これは、上から圧力かかってんだから皆まで言わせるなタコ、という意思がこもってるわね」

 「……」

 「冗談よ。ただ、今回の件に関して私たちが出る幕は本当にないわ」

 「ですが……」

 「ですがもクソもないのよ。どれだけデカかろうと、相手は一体。自衛隊たち―――いや、この場合は軍と言った方がいいかもね。その軍が持つありったけの弾薬、身サルなどの兵器諸々。国が秘匿所持していた軍事物品をすべて投入するでしょうね。すべては憲法改正のために。軍事力を持たなければ、日本は滅んでしまうということを―――果ては、軍事力さえあればデモニアを倒せることを証明したいのよ」

 「渡辺さんは、それでデモニアを倒せると?」


 伊集院がそう聞くと、渡辺は考えるようなそぶりを見せる。だが、彼はちゃんと理解している。

 デモニアがどれだけ存在か。戦った本人がよく理解している。その上、渡辺がどれだけ戦闘データを見てきていたか。彼女の答えは考えずとも決まっていることは明白だった。


 「―――無理ね」


 たったその一言に反論する者はその場には存在しなかった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 当然だが、魔物の出現で学校は休校。仕方なく、期末テストを近くの大学の講義室で受けることになり、それ以外の日は自宅学習。その後は、終業式の旨の手紙だけ受け取って夏休みに入ることが連絡網によって伝えられた。


 真司が目を覚ましてから数日。国も彼も動かなかった。


 依然としてテレビに学校の様子が写るばかりで、国からの報道や動向は一切国民には知らされていない。

 そして、一番の問題は学校の近隣住民がいまだに家に帰れていないことだ。まだ数日、と言いたいところだが、精神的に辛いものがあるのか、避難所でのいさかいやトラブルも増えてきていて、それが問題になっているとも報道があった。


 SNS上では、2度も魔物―――デモニアの侵入を許した学校側のセキュリティがどうのだとか、見当違いな発言も見られて、どこか他人事だ。

 当事者からすればたまったものではないのに。


 「国の動きが静かだな……」

 『真司はそれをどう見る?』

 「本当に何もしてないか、検討段階か。それはわからない。事実、魔物になにか策を講じるということは、武力を行使することに他ならない。魔物も日本にしか出現していない以上、国際情勢には関与せず、おそらく日本独自での解決を求められて、米軍が出ることはないかもしれない」

 『だから、野党や国民からの反対意見が出ると?』

 「それもある。ただそれだけには思えない。今までの警察の対応で、魔物に拳銃が効かないことは国はわかっているはず……なら、対魔物という大義名分のもとに出した兵器も通用しないかもしれないな。それも想定済みだとするのなら―――核?いや、さすがにそれは国際問題を恐れるか?だが、魔物討伐の名分もある。いずれにせよ、俺たちが早急に動かないとな」

 『核はそんなにダメなものなのか?魔物に対抗できる力は、心強いではないか?』

 「忌み嫌い、恐れてきたものが突然国内で使われる。その恐怖で国民は縛られる。それも問題だが、今度は避難区域以上の地域が、死の街と化す。それだけは避けなくちゃならない」


 核を使ってはならない理由はそれだけじゃない。だが、青龍にはそれが理解できない。人間の力に対する畏怖と魔物の力に対する敬愛は、両者に埋めようのない認識の齟齬が生まれてしまっている。問答は、するだけ無駄というわけだ。


 そう考え、真司は青龍と会話することをやめると、自身が座るベッドの中に視線を向ける。すると、そこには気持ちよさそうに眠るアリスの姿があった。


 昨日、突然いなくなった彼を本気で心配して、どうしようもできなくなって今夜はと昨日の夜彼女は真司の布団に入ってきていた。


 「んぅ……」

 「アリス……」


 ぼそっと漏れた言葉。それがなにを意味しているのか、それをどんな意図で発したのか。真司にもわからない。だが、その言葉でアリスは目を覚ましてしまう。


 「んー……真司」

 「……おはよ。もう、8時だぞ」

 「んぅ……学校休みだから、もうちょっと休みましょ。ほら、真司も私を抱きしめて一緒に寝ましょ?」

 「はいはい……」


 彼の幸せのひと時。誰にも奪われたくない幸せ。

 数え上げればキリのない戦う理由。果たして真司は、答えを出せるのだろうか?いや、出したところで何があるというのだろうか。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 「魔界の門の研究はどれほど進んでいる?」

 「はい、崩壊による主力暴走まで確認。ビーストの波動からコスモまで波動が増幅中です」

 「そうか。そのまま研究を続けろ。どうせ青龍が相手だ。コスモ級と言えど、未知との遭遇なら奴もうまくは対処できまい」

 「ですが、出動中の魔物はもうこれ以上体が……」

 「だからなんだ?―――我ら魔物は、魔王陛下とともにある。魔王陛下がご存命の限り、我々が滅ぶことはない。たとえ、世界が限りなく小さくなろうと……陛下は必ず世界を取り戻す。陛下と我々では、存在そのものから違うのだ」

 「はい、わかりました」


 ここはどこかの怪しげな研究所。その場所には真司の学校に襲撃を仕掛けたゴリラの魔物の写真やデータ。家族構成や健康状態。そのすべてが記載されてる。


 「やはり戦うにはオスが―――それも若い個体が適しているようだな」

 「はい。ですが、同時に魔界の門を崩壊させることは現状難しいようです」

 「だろうな。それを可能にしろとは言わん。だが、複数部隊が門を開けるようにはしておけ」

 「はい。そこはサンプルがとれています」


 そう言う研究所の職員は小さなカマキリの死骸を持っていた。

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