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救世のディアフトライ  作者: 波多見錘


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THE COLLAPSE

 美穂が荒れているとき、加藤はなにもできなかった。

 彼女を押さえることも、落ち着かせることも、すべて美穂の大事な幼馴染の彼女がやった。


 彼は自分のふがいなさを痛感していた。


 1年の頃から腐っていた真司を健気に応援する彼女の姿が好きだった。その好意を自分に向けてほしかった。彼女の健気な笑顔をゆがめないように守りたかった。

 だからこそ、真司を失うわけにはいかない。彼を失えば、彼女は笑えなくなる。今でもたまに見せる笑顔は、彼に関係することだった。


 悔しいことではあるが、彼女にはまだ彼の支えが必要と言わざるを得ない。その代役を無理やり務めているだけに過ぎない加藤は、もっと自分にできることが―――彼女を笑顔にできる力が欲しかった。


 長年の愛情にも勝るものが彼にはほしかった。

 だが、その願いは歯痒く、簡単なものではない。


 (俺にはなにも……彼女を守る手立ては―――せめて、デモニアから彼女を守ることさえできれば……)


 彼女を笑顔にできない彼は、愚かにも数少ない笑顔を守るための戦う力を望んでしまうのだった。

 その願いがどれだけ愚かなことか。そして、彼がどれだけものを見ることができていないのか、知らなくてはならない。これからの真司がいない世界のために。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 あたりが一瞬だけ赤い閃光包まれたすぐ後、真司たちの通う学校には爆炎と煙が立ち込めていた。

 煙で前が見えなくなるのは想定済みだったが、ここまでの爆炎が周りを包むのは想定外だった。


 「真司、生きてるか?」

 「当然だ。もとより、そういう技だろうが」

 「それもそうか。だが、あまり乱発はするな。魔力の消費が激しく、街の被害終息への時間が長くなるだけだぞ」

 「それもわかってる。まあ、今ので相手が死んでくれれば楽なんだけど……」


 そう言いながら煙が晴れるのを待つ。

 彼らは先ほどの爆心地から少し離れたところに立ち、傍観する。少しだけ煙が晴れて、燃え上がる炎によってまた煙に包まれる。それの繰り返しで、うまく影を確認することはできないが、二人の予想では、まだだと考える。


 根拠は、相手の魔界の門が開いていることだ。


 どれだけ未知数の力であっても、そんな予感がする。その直感が戦時の反応を過敏にする。だからこそ、気づけた。


 「―――っ……!?」


 煙が一瞬光ったように見えた。

 その瞬間、彼は体を思いっきり倒して、横に逃げた。直後、彼のいた地面がえぐれた。


 強い勢いのまま何かが通過していき、すべてを破壊していった。

 その力は凄まじく、おそらくかすりでもしたら体が文字通り弾けていただろう。


 「今のはヤバかったな」

 「なんだ、今の攻撃は?」

 「ん?ただ魔力を捻出しただけの砲撃じゃないのか?」

 「違う。魔界の門を開いたにしては、弱すぎる。速度ももっと早い術のはずだ。なぜ、こんなに遅く?避けさせることが目的……?―――なにかある!真司、突っ込め!」

 「なにが言いたいのかわかんねえけど、お前が言うならそういうことなんだな―――しっ!」


 そう言って真司は煙の中に走り出す。

 青龍の読み通りか、次の攻撃は飛んでこず、簡単に魔物の懐に飛び込むことができた彼は、持っていた剣を振りぬいた。


 振りぬかれた剣は、その刃で魔物を―――切り裂けなかった。


 カァン!


 「なっ!?」

 「グアアアアアアアア!」


 魔物は雄たけびを上げると、思いっきり彼を蹴り上げた。


 「がはっ!?」


 打ち上げられた彼は、なにもできぬままに飛んでいき、受け身もろくに取れずに落下した。しかし、そんなことよりも刃が通らないほうがよっぽど問題だった。


 「なんで通らない……?」

 「硬度が上がっている?だが、すでに門は開いた。これ以上の魔物の強化は……」

 「もう、アサルトを出すしかないのか……?」

 「ダメだ。あの力は消耗が激しい。我の魔力を少量しか使わないのに、戦いが終わった後のお前はなぜか過剰に魔力を行使した状態と似たような状況になっている」

 「じゃあ、どうしろってんだ!」

 「まずは、様子を見なければ……」


 そう言っていると、突如魔界の門が魔物の上に現れた。


 と、思った瞬間。それが崩壊した。


 「魔界の門は崩壊するのか?」

 「知らん。だが、あれは強化状態の魔物の力の根源のはず。なら、壊れるのは少々問題があるはずなのでは……?」

 「グオオオオオオオ!!!!」


 青龍の言葉の通りに、魔物は悶絶し始める。そして、同時に体が少しずつ大きくなっているような気がする。


 「なんだあれは?」

 「門の崩壊、根源の消失―――まさか、魔力暴走か!?」

 「本当になんなんだそれは!」

 「説明している暇はない!出し惜しみはダメだ!やむを得ない。アサルトを使うんだ。でなければ、命はない!」


 青龍がアサルトを―――暴走状態になる力を使えと言ってきた。

 それが日常的にならなんら問題はなかった。一番の問題は、それを青龍が初めて言うことだった。


 それだけ危険な状況だということ。しかし、その考えにいたり、力を行使しようとするまでに時間がかかった。

 その一瞬の隙で、彼は攻撃を受けた。


 全長が10メートルほどになった魔物に魔力の塊を打ち出された。彼はそれをもろに食らって吹き飛ばされた。


 「がっ!?」

 (なんだ、今の攻撃は……?威力が桁違いすぎる。体がデカくなると、魔力の総量が多くなるのか?仕方ない。使うしかあるまい)


 そう思い、彼はすべてを投げ出した。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 「あれが我々の敵である“青龍”とその契約している人間だ」

 「本当にデモニア。いや、魔物は世界を守るために戦っているのか?」

 「ああ、こちらの世界を破壊しているように見えるが、破壊しているところには、世界の根幹を揺るがすものがあるのだ。そして、我々魔物がこの学校を狙うのは、そういうことなのだ」

 「だけど、俺はそれを破壊するつもりはないぞ。あくまで、あの裏切者ってやつを倒すだけだ」

 「本当は、お前にも破壊に協力してほしいのだがな」

 「ふざけろ。それは、俺たちのいる場所を、彼女の大切なものを壊すことになる。だから、お前たちに協力するが、破壊工作には関与しない」

 「そうか……なら、それで契約は成立だ。お前は私のために戦い、私はお前にそれだけの力を与える」

 「ああ、それで構わない」

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