THE EXPLOSION
戦闘を開始した二人は見境なく周りを破壊していく。
魔物はまだしも、真司が急いで戦いを終わらせようとする理由は、アサルトを出さないため。そして、これ以上人類が手に余る力を手に入れないようにするためだ。
現在、DBTの戦闘要員として扱われているあのパワードスーツ。開発者が誰なのかは知らないが、魔物に対抗しうる力を生み出せるものがいる。そうなれば、門の開いた魔物に対して、近いうちに対抗戦力となるものは出てきてしまうだろう。
その時に戦え、人類を救う力となるのなら問題ない。だが、彼はもう子供ではない。国の政府機関がなにを思ってDBTの活動を黙認しているのか。その意味がわからないガキではない。
明けない夜がないように、終わらない戦争はない。
どれだけ時間がかかろうと、いつか魔界の戦いは終結する。その時、人類の手にした力はなにに使われる?災害時の救助手段になる?それとも、人類未開拓の地を進む力となる?そうなれば御の字。だが、世界はそう甘くない。いや、綺麗ではない。
おそらく、戦争戦力の筆頭になる。
どんな形であれ、真司が戦えず、人類が自身で戦わせる選択肢を与えれば、かならず人類は自らの手で滅びる。それだけは、避けなくてはならない。
だからこそ彼は急ぎ、迅速に魔物を排除、または撤退させなければならない。
「グオオオオオオオ!」
「食らうかあ!!」
お互いに雄たけびを上げながら拳を振るい、剣で薙ぐ。
敵の魔物が打ち出した砲弾を、何の躊躇もなく剣で真っ二つにして自身に当たらないようにする。自分に当たらなかった攻撃は後ろに飛んでいき、後方を爆発させる。
先ほどの放送によって生徒はもう学校内にいない。
なら彼は人目をはばからず、被害を考えずに特攻したほうがいい。
力の使い方は千差万別。彼が思えば、その適した姿ならどんな力でも顕現する。
彼はそう考え、あるイメージを頭に浮かべて左手のクリスタルを押し込む。
すると、彼の胸の前に少しずつ肥大化する球体が出現し、高出力のエネルギーを孕み始める。
「ナンダ、ソレハ……?」
「わかんねえか?お前を殺すための力だろうが!」
そうして、その球体を前方に―――打ち出すことはせず、自身の体に装填する。すると、彼の全身が赤く発光し始める。
(拳に力を込めれば打撃が強く、足に力を込めれば蹴りが強くなる。全身に力を込めて、一気に開放して爆発させる!)
「うおおおおおおおおおお!!!」
球体が完全に彼の体に収束した時、魔物に向かって走り出す。魔物も違和感を覚えつつも、力でねじ伏せてしまえばいいと、自身も構えを取る。だが、そんなこと真司には関係なかった。
突っ込んできたかと思えば、彼は殴るでも突進するでもなく、ただ組み手の形を取る。
その時点で魔物は嫌な予感がしたのか、自分の腰にしがみつく彼の背中を強く叩きつける。だが、それでも彼は止まらない。
「ヤメロ!ハナレロ!」
「ふっ、魔物でも怖いとかあるんだな」
「コワいワケが―――ナイ!」
「そうか―――じゃあ、吹っ飛べ!」
真司がそう言った瞬間、彼らを中心に、周辺一帯が赤い光に包まれた。
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避難する生徒たちの中に、わずかに遅れて後続についていく生徒たちがいた。
ひとまず近くの施設に避難するように誘導されて、全校生徒がそこに集められる。
しかし、数人分だろうか、明らかに教員が数えただけでは決して少なくはない人数がいなかった。
そしてその中にある人物たちにとってはかけがえのない人物も入っていることがわかる。
「ねえ、真司は!?」
「待って、落ち着いて唯咲さん!」
「落ち着け、美穂!」
その中でも、特に唯咲美穂が荒れていた。
フラれたし、もう付き合っている人がいるとはいえ、心残りもあれば、そんなの関係なしに大事な幼馴染だ。
彼女にとって、彼がすべてだった時期もある。そんな相手がデモニアという化け物が現れて、みんなが避難したところにいない。もしかしたら指示を聞けていなくて、ここに集まることを知らないのかもしれないと考えることもできる。
だが、そうではない可能性―――もう、彼が死んでしまっている可能性は否めない。
そして、さらに彼女を追い詰める出来事が起こる。
「みんな、誰かいない奴らと連絡つくか?もしかしたら、家に帰ってるやつも、逃げ遅れた奴とかわかるかもしれん!」
その先生の一言で、あらゆる生徒が連絡を取り始める。
一人、また一人と避難場所にいない生徒たちの安否が確認されていく。みんな、指示が聞こえておらず帰ってしまったもの。逃げ惑って、いつの間にか集団から離れてしまい、仕方なく近くの交番に駆け込んだ者たち。それは様々だった。
20分もすればほとんどの生徒の安否が確認されて、ほとんどの生徒が落ち着きを取り戻す。だが―――
『おかけになった番号は現在使われていないか……』
「なんで!なんで真司は出ないの!」
美穂は取り乱し続ける。
彼は番号も機種も高校3年間で変えていない。ならば、番号が使われていないのはあり得ない。なら、電波が通じないところにいる可能性が高い。そう思うと、発狂せざるを得ない。
「いや!いやああああ!」
「落ち着きなさい!唯咲さん!真司なら大丈夫よ!」
唯一、真司の正体を知るものとして、アリスは極めて冷静。だが、美穂にはそれが気に入らなかった。
「お前……本当に真司の恋人か!なんでそんなに冷静なの!」
「それは……あいつが絶対無事なのを知ってるからよ!」
「なんで!じゃあなんで真司はここにいないの!あいつは―――人の話を聞かないような奴じゃないの!」
「だから、あいつは大丈夫なのよ。それしか言えることはないわ」
「想像だけならなんとでも言えるの!でも、現実は違うの!もし、真司が死んでたら、私は……」
パァン!
なにかを口走ろうとした美穂に、アリスは鋭いビンタをお見舞いした。
「なんでそんなことばっかり言うの!死んでることより、生きてることを願うなら、彼が生きてることを信じなさいよ!それに、私の大好きな人は、こんなところで死ぬ人じゃないのよ!」
「わかんない!わかんないよ!」
そんな美穂の悲痛な叫びがあたりに響く。
苦しそうな彼女を見て、アリスは思う。
(真司、やっぱりあなたは命を投げ出しちゃいけない人だったのよ。私や彼女みたいに死ぬことを受け入れきれない人ばっかりなのよ……)




