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救世のディアフトライ  作者: 波多見錘


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THE FEAR

 「な、なんですか、あれは!?」

 『高出力のエネルギーを感知!伊集院君、なにか来るわ!』


 突如出現した魔界の門の禍々しさ、そしてその悍ましさに驚愕の声をあげる。

 本当なら真司の先ほどで倒れていたはずの魔物が息を吹き返し、手を大空に掲げてなにかを受け取ろうとするようなポーズを取る。


 「青龍……」

 「ああ、魔界の門で間違いないな」

 「ちょっとまずいかもな」


 そう話すと、門から禍々しい光が振ってきてゴリラの魔物に降り注ぐ。

 黒い光のせいで中が見えず、魔物の影を捉えなくなった時、その異変に焦りを覚えた伊集院が真司に質問してくる。


 「ぜ、0号!あれは、なんですか!」

 「知らねえよ。というか、俺が聞きたいレベルなんだよ」


 もちろん魔物が強くなること以外何も知らない。

 魔界の力だというのに、青龍も知らなければ真司も同じ。となれば、人類側が知らぬのは当たり前。


 これから何が起こるのかは真司たちにも図り切れぬこと。しかし、よくないことだというのは、想像に難くない。


 光が収束し、姿を現した魔物は見てくれが禍々しく変貌するなど変化はなかった。

 いや、ほかの魔物に比べて変化が少ないだけで、確かに姿かたちは変わっていた。


 さっきまでのような筋骨隆々でTHEゴリラみたいな見た目が、今は必要最低限の筋肉しかついていないようなスリムな体形に変わってしまった。


 はたから見れば、それは弱体化のようにも見えた。現に、明らかに弱くなったであろう魔物の姿に少々安堵していた。しかし、真司たちもそうとはいかなかった。


 なぜかって?

 それは彼らが幾万にも及ぶ戦闘の経験がある。その経験則から言わせてもらえば、弱くなることなんて絶対にありえない。だからこそ、彼らは考えていた。


 (スリム化……パワーダウン―――いや、据え置きかな?おそらくスピードアップとかそんな感じだろうな)


 そう考え、魔物のスピードに対応しようとしっかりと目で捉える。が、その瞬間、魔物の姿がブレた。

 その一瞬で真司は理解した。


 「まずい!」


 自分の目の前に魔物が迫っていること。


 (いつ動いた?いつこっちに来た?予備動作は?―――クソッ!なにも見えなかった!)


 無論、その魔物のスピードに対応することができず、真司は顔面にストレートをもろで食らう。

 食らった瞬間にパワーは据え置きでそれだけの火力があることは理解した。そして、それに真司ですら追いきれなかったスピードが乗る。破壊力は計り知れない。


 「がっ!?」


 彼はなにもできずに後ろに吹き飛ぶ。真司が壁に叩きつけられるのを確認する間もなく、魔物は次の獲物を伊集院に定める。

 いまだなにが起きているのか理解できていない相手の上段蹴りをもろに食らって回転しながら地面に叩きつけられる。頭部をすさまじい勢いでたたきつけられたが、スーツを纏っていたので少々激痛が走るくらいで済んだ。


 だが、その衝撃がよくなかった。


 『頭部ユニット破損!前方映像信号ロスト!伊集院君聞こえる!』

 「き、聞こえます……でも、前が」

 『カメラが壊れたのね―――外してと言えないし……でも、外さないと前が……』

 「外せば前が見えるんですか?」

 『馬鹿!そんなことしたら、頭がむき出しになって攻撃してくださいと言っているようなものよ!』


 渡辺はそう言うが、伊集院はまたも彼女の言葉を聞こうとしない。

 真司―――0号はダウン。今世界を守れるのは自分しかいない。そうなれば、命を投げ出しても……


 そう思い、右腕を頭にやろうとするが、動かない。足は動いてなんとか立つことはできたが、右腕が動かない。ならばと、左腕で頭部装甲を外すが、目の前には絶望が写っていた。


 『右腕部、システム全壊……頭部ユニットの解除を確認。胸部装甲のカメラに切り替え―――は、早く逃げ成さい!』


 カメラをどうにか切り替えたことで、外の状況が見えた渡辺は思わずそう叫んだ。

 だが、その言葉とは裏腹に伊集院は動けなくなっていた。


 目の前で集まっているエネルギーの塊が大きな球体になっている。それは、確実に伊集院に当てるためのものだ。しかし、それがわかっていても恐怖で動けない。少しでも横に避けて当たらない可能性を作れば生存の可能性はある。だが、生き残ってどうする。どうやって勝つ?


 覚悟を決めて戦場に赴いているはずなのに、体が動かなくなる。

 どうしても、自身の本能的な恐怖に打ち勝てない。


 『なにをしているの!早くその場から退避しなさい!』

 「あ、あ……」


 もはや彼に指示の声は届いていない。

 ただ立ち尽くし、己の来る恐怖に震えるのみ。


 そうしていると、ついに魔物のためていた光球が放たれる。それは大量のエネルギーを纏いながら地面をえぐりながら進んでいく。これに当たれば塵一つ残らない。


 『伊集院君!』


 カメラ越しに見ていたあまりの光量に思わず画面から目をそらす。そして、スーツが光に飲み込まれて信号ロストの警告音が数えきれないほど―――















 鳴らなかった。


 いつまでたってもやってこないその時を不思議に思い、モニターに目を戻すと、そこには―――


 「ぐっ……」


 苦しそうにしながら光球を防いでいる0号の姿があった。しかし、その様相は明らかに変わっていた。

 ボロボロのマントを羽織っているし、光球を防いでいる腕には亀の甲羅のようなものがついているし、明らかに先ほどまでと違う。


 「ガアアアアアアアアアア!」


 そう真司が雄たけびを上げた瞬間、彼は光球を左右に引き裂いた。そうすることで、後ろの建物やらなにやらが爆散したが、伊集院と真司には命中しなかった。


 だが、それで彼は終わったりしなかった。


 そのまま雄たけびを上げながら剣を空に掲げる。すると、いつかのあの日のように刀身が天高く伸びる。何メートルになったかもわからないような剣を彼は振り下ろす。


 振り下ろされた剣はすさまじい速度で魔物に衝突し、周囲一帯を巻き込んで爆発させた。


 「な、な……なにが?」

 『伊集院君、聞こえる?』

 「は、はい、聞こえます」

 『なにが起こったの!』

 「い、いや、0号が剣を振り下ろしたら……」


 そう状況説明をするが、説明すればするほど意味が分からなくなる。そして、爆発による煙が晴れると……


 『反応消失……これ、逃げられたわね』


 魔物はすでに撤退していた。

 真司の方はというと、煙が晴れその姿を確認した瞬間に前方に倒れこみながら消滅した。


 「き、消えた……」


 その場に残されたのは、伊集院ただ一人となってしまった。

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