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救世のディアフトライ  作者: 波多見錘


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THE GURD VENT

タイトルはネタです。

 真司の入れた得点によって、得点係は無情に彼らのチーム側に点の表示を『2‐0』に変えた。

 彼が見せた動きにクラス中が驚きで黙り込んでいるが、川峯は満足そうに眺めていた。まるで、真司にはこれをできるだけの能力があったのはわかっていたのかのように。


 「ほら、なに呆けてんだ。次だ次」

 「へ?あ、ああ……」


 彼はチームメンバーの肩をたたいて呆然とした状態から連れ戻す。

 その後の数分は、真司にボールが必ず回ってきて、それを彼が寸分たがわずに完璧なシュートを決めてどんどんと点差を広げていく。


 おおよそ、8点くらいの差がついたころくらいからだろうか、相手の戦法が変わった。

 彼らは先ほどまで、一人一人にマークを付けて、キャプテンと一騎打ちにさせるという形で点を取ろうとしていた。


 だが、どんな状況でもパスカットや後ろからなど、どんな状況であろうとも真司がボールを奪って点を重ねていくので、完全にヘイトが彼に向いた。


 4人制の試合だというのに、3人が彼のもとにマークに入り、またもや相手のキャプテンが1人で3人を相手取るというカオスな試合展開に変わっていった。


 だが、それでも真司はひるまない。相手からボールを奪うと、すぐにマークに入られてドリブルなんかできたものじゃないが、察しのいいチームメイトが相手のマークがない直線に入ってくる。そこに彼が投げると、今度はその生徒がほかのチームメイトに投げる。


 そうすると、さすがにバスケ部のキャプテンとはいえ、3人に振り回され続けるのは堪えるようで、全然マイボールに持ち込めなかった。そうこうしていると、ついに真司以外の生徒がシュートを打つ。しかし、ボールは大きくそれて、ゴールネットにも掠めそうにない。


 すると、真司のマークについていた生徒たちは全員リバウンドを取ろうとゴール下に群がり始める。しかし、真司は一味違った。


 誰よりも早く誰よりも高く飛び上がってバックボードから跳ね返ってきたボールをダンクでゴールネットに叩き入れた。

 その時に、バコンと爆発するような音があたりに響き渡って、今度は女子の授業のほうも時間が止まったかのように静かになる。


 ただ、真司はそんなことも気にせずにシュートを放った生徒に言った。


 「ナイスシュー……狙いは良かったぞ」

 「あ、あ……うん、十神君もナイ、ス……?」

 「ははっ、次も頼むぞ」


 その数分後、誰も予想だにしなかった『25-0』というストレートでバスケ部のキャプテンが在籍するチームが初戦敗退を喫してしまった。

 この時点でほかのチームは真司という存在を強く警戒することになった。


 そして同時に―――いや、この話はいいだろう。どうせすぐにわかる。


 その後の試合は順当に真司たちのチームが勝ち進めていった。

 最初こそは真司のことを邪魔だと思う人物たちも、一部ではあるが彼の見せるスーパープレーの数々に見入っていた。


 「楽しいか?」

 「う、うん……!たぶん体育で初めて楽しいって思ってる!」

 「そうか、それならいい!覚えとけよ、競技はやった後に笑うもの。スポーツはやりながら笑うもんだ。体育の授業はな、みんなが楽しく体を動かす場なんだ。自分だけ楽しもうとするやつには退場願おうか!」


 その後、彼らの快進撃―――ほとんど真司のアシストありきではあるが、それが続いて、決勝まで駒を進めて優勝した。

 真司も真面目に相手をつぶしに行ったのは、1、2回戦くらいで、あとはいい感じに手を抜いてほかのメンバーが楽しめるようにアシストしていた。


 彼にとっては試合の結果なんてどうでもよくて、同じメンバーの人が楽しそうにしてさえいれば十分だった。


 授業が終わった後は、真司も一人だ。

 別に今回のメンバーはそこまで仲がいいわけじゃないので、授業が終われば離れていく。ドライな関係だ。


 しかし、そんな彼にも話しかける人はいる。


 「カッコよかったわね、真司」

 「ははっ、ありがとな」

 「思ってた以上に運動できたわね。自前?」

 「自前だよ。元々ジャンプ力とかには自身はあったんだ」

 「そうなの……じゃあ、本気でバスケとかっやたら?」

 「ははっ、それこそありえないな」

 「そう?あなたならすぐにレギュラー入りできそうなものだけれど」

 「ヤダよ、あんな程度の低い奴が部長なんて部活。行かなくてもそこが知れるわ」

 「誰が程度が低いって?」


 そう言いながら明らかにブチギれているバスケ部の部長が後ろにいた。

 しかも、ほかの取り巻きにも囲まれているようだった。


 ここは体育館から教室に戻るまでに通る道なのだが、先生の巡回も少なければ、他からの視線の通りにくい場所。こうして大勢が囲い、ほかの人が避けてしまう状況を作り出せば、目撃者はあってないようなものだ。


 「よくも俺に恥を……」

 「いや、言動もなにもかも見ていて恥ずかしかったぞ?」

 「てめえ!」


 真司の煽りに一発で耐えられなくなった相手は拳を振るおうとする。が、真司はそれよりも一歩早く傍にいて、手軽そうなやつを自身の前に持ってきた。

 そうすると、飛んできた拳は見事に本来殴られるはずじゃなかった生徒の頬を捉える。


 「いっ!?な、なんで……!?」


 突然のことに驚いていたが、真司は言い放つ。


 「近くにいた、お前が悪い」

 「お前っ!」

 「なにしてんだ!」


 と、そこで川峯が怒鳴りながらこちらに向かってきた。

 その瞬間生徒が散り散りに逃げようとし始める。もちろん、真司はなにもやましいことはないので逃げることはしないが、バスケ部の部長は違うようだった。


 彼は一目散に逃げようとするが、真司の脇を通ろうとしたのが悪かった。


 一瞬にして真司に首根っこを掴まれてしまい、生徒指導室に連行されていく。川峯には特に心配もされず、言葉もかけられることもなかったが、真司は彼の真意はわかっていた。


 体育の授業であれだけ派手にやったら、メンツをつぶされたやつらはなにかしに来る。それがいつかわからなかった川峯は、とりあえず見回りだけはしておこうとしていたところだったのだろう、と。一応は心配されていることは、真司にはわかっていた。


 「アリス、ケガはないか?」

 「いや、私今空気だったでしょ?」

 「それでもだ。恋人に傷でも付きようものなら、俺だって怒るんだからな?」

 「もう、そういうことを自然に言う……ばか」

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