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救世のディアフトライ  作者: 波多見錘


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THE ORDER

 「命令、ですか……」

 「そうよ。今回の件で上は0号を正式に敵と断定したわ。次の出現から、奴もデモニアとして対処せよとのことらしいわ」

 「でも、0号はこれまでに何度も被害拡大を阻止、ネットでは明るみになる前から人々を守っていたとの声もあります。その0号をただの1回で敵と認定するのは……」

 「1回でも被害が出たというのが重要なのよ。すでにマスコミも映像の一部を放送している」

 「1部って、あれじゃあ完全にデモニアが悪者みたいじゃないですか!」

 「それが狙いなのよ。政府は憲法の改正に向けて軍事力を持ついいきっかけと考えているのよ。わが国にはデモニアの脅威がある。だからこそ、自衛隊だけではどうしようもないと」


 そんな会話をするのは、先日新たに編成された対デモニア特殊技術戦闘部隊―――通称DBTの初期メンバーだった。

 この隊はデモニアの存在が明るみに出たときから水面下に編成が始まっており、つい先日この部隊専用の特殊装備も渡されている。


 その部隊長は渡辺香織わたなべかおり―――技術者兼指導指揮担当の女性。編成にあたって、ほかにもメンバーが候補に選ばれていたのだが、最終的にある理由で彼女が最後に選ばれた。

 そして現地戦闘や住民避難誘導など、実践担当の伊集院康太いじゅういんこうた―――彼は元々対凶悪犯罪にて優秀な刑事だったが、ある出来事をきっかけにその成績が激しく落ち込んでしまった。


 編成部隊はこの二人。

 上の対応―――いや、組織の形として体を成していないこの状況に伊集院は文句を覚えていた。


 「ですが、デモニアの対抗にこれだけの人数では……」

 「お互い内部で厄介者扱いされていたから、事実上捨て駒にされたんでしょ?こんなろくに実地訓練もしてない急造のパワードスーツなんか渡して―――データを取って、私たちが死んだら本格的に対策を取る気満々じゃない」

 「そうですけど……でも、僕はわかりますけど、なんで渡辺さんが?すごい優秀な人なんでしょ?噂になってこっちにも回ってきますよ。大学時代に記録は消されたけど大発明をしたり、警察になってからも特殊技術を誰よりも駆使して、犯人を追い詰めたとか」

 「―――そんなもの、過去の栄光でしかないわ。結局、私は国にとって都合の悪い結果を出して、女なのに男よりもいい結果を残して……上の人間からしたら、私は目の上のたんこぶでしかないのよ」

 「そ、そんなことないですよ!」

 「あら?じゃあ、あなたはどうなの―――伊川いがわの片割れさん?」

 「っ……僕はその名で呼ばれる資格なんて……」


 そう言って俯く伊集院。

 そんな訳アリの二人が歩むのは、0号を倒す道なのか。それとも0号と共闘する道なのか。はたまた、その二つとも違う未来を待っているのかわからない。

 ただ、わかっていることは、この二人はただで上に屈するような人物ではないということだけだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 学校が破壊された件で一週間だけ一時休校という措置がとられた。

 普通なら1週間しかないのかと思うところだが、破壊された校舎は一夜にして元通りになっており、安全点検などの期間しか設けられていないのだ。


 そんな連絡を受けた女子三人衆はその中の女子の一人の家に集まっていた。


 話題はほかの何でもない真司のことだった。


 「まさか先輩が0号だったなんて……」


 それを切り口に始まった会話。

 しかし、彼女たちは本当に彼を信じるべきなのかを疑っていた。


 別に彼の悪いところを知っているわけじゃない。ただ、良いところも同じ。

 しかも、彼のことについてはいいうわさが一つもない。ただ、彼女がいるという話だけは聞いたことはある。


 彼に好意があると有名なのは唯咲美穂という水泳部のマネージャーではあるが、どうやら付き合ったのは転校生の美人ハーフとのこと。彼女たちは結局は顔かと思うが、なぜかそれがしっくりこなかった。


 一番の引っかかりを覚えたのは、その真司が自分たちの目の前でぶっ倒れたことだろう。


 それを自分たちが助けようとしたのだが、彼はそれを突っぱねた。その時の彼は誰一人として自分にひとを近づけまいとしていた。その気迫がすさまじかった。だというのに、恋人を作った。これは彼に何かがあったと断定するしかない。


 だが、それも彼がみんなの味方なのかわからない。でも―――


 「テレビはこんな放送の仕方してるけど―――あの時、デモニア?もいたよね」

 「うん……ちょっと0号の雰囲気は怖かったけど、私たちのことに一切手を出さなかった」

 「だから、マスコミの敵って言葉もいまいち信用できないよね」


 三人の意見は正直一致しつつある。

 そもそも、彼の中学の頃の評判は今とは180度違う。


 真司が輝いていたころ―――中学で全国の出場時には、みんなに囲まれるほど人望の厚い人物だった。唯咲美穂と言う存在がいるから誰も彼に告白なんてしなかったが、陰ではものすごくモテていたらしい。そんな人物がどんどん高校で評価を落としていった。


 「もしかしてだよ。もしかしての話だよ?」

 「前置きはいいよ。で、なんなの?」

 「もし、十神先輩がすごく優しい人で、誰も巻き込まれないためにあんな噂が流れるくらいひどいことをしてるのだとしたら?」

 「ありえる……でも、それだと先輩の恋人はなんなの?って、なるけど……でも、」

 「そう、だね。恋人は傷つけてもいい人?って、ことなのかな?」

 「自己犠牲までするほど優しい人がそんな人をわざわざそばに置く?」

 「うーん……なんでだろうなあ?」


 彼女たちの答えはほぼ的を射ていて、正解に近いものだったが、彼女たちには理解ができなかった。

 なぜアリスが彼に恋人になったのか。なぜ真司が彼女がそばにいることを良しとするのか。優しいからこそ嫌われに行っているというのなら、なぜ彼は誰かに好かれてしまったのか。


 その答えは彼女たちにはわからない。と言うより、理解することはできない。


 もはや真司は常人の域をとうに飛び越えてしまった。いわば、怪物と言っても差し支えないのだから。


 「こうなったら本人に直接聞くしか―――」

 「でも、それが原因で私たちの命が狙われたら……」

 「だけど、このままじゃわからないのは事実。学校が再開したら、真っ先に聞きに行くぞ!おー!」

 「「お、おー……?」」

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