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救世のディアフトライ  作者: 波多見錘


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体育祭へ登校

 『ご覧ください!あれが第0号の姿です!目撃情報によると、近隣の高校を破壊したのはデモニアではなく、0号が自ら行ったとのことです!』


 魔物に打ち勝った後、危険が少なくなったと判断した報道がヘリを飛ばし、上空を飛んでいる。

 本来、警戒すべきはその0号だというのに、今までの功績で完全に神格化してしまっている。だが、それも今日で終わりなのかもしれない。


 なんせ、今の真司は両手にしっかりと銃を持ち、それをライフルモードに切り替えていた。

 そう、彼は魔物を倒すのと同時に、後方の高校の校舎を打ち抜いたのだ。幸い、体育祭ということもあって、校舎内に人がいるということはなく怪我人や死者は出なかった。


 出なかっただけ。それだけの事実では人は許さない。事実はどうであれ、死人が出かけたのだ。いくら青龍がすぐに直して登校がすぐにできるとは言ってもだ。事実以上に人を陥れる手段はない。


 しかし、彼のことを理解している青龍ならこの状況を止めなければならなかった。だが、それをできなかった理由。真司の変わり果てた姿を見ればすぐにわかる。


 近くで見ると、彼の腕は白虎を思わせる爪が出現し、首から全身にかけて真っ白な毛皮が出現していた。そして、それこそが彼の赤信号の象徴だったのだろう。

 ボロボロのマントがこの姿にも、存在していた。


 (もっと、手段があったはずなのに―――抑えきれなかった……)


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 朝はいろいろと気まずいことがあったが、それでも二人は並んで登校する。

 真司は制服でいるのだが、アリスはと言うと―――


 「アリス、スカートの下に体育着履いてきてないか?」

 「なに?あなた、私のスカートの中を見たのね!―――えっち!」

 「そんな体をいろいろな方向にブランブランさせてたら、スカートの裾も浮き上がって見えるんだよ」

 「やっぱり真司はスケベね。こんな麗しい美少女のスカートの中身を見るなんて……私はそんな人に育てた憶えはありません!」

 「育てられた記憶もねえよ、バカが」

 「あ、バカって言った!私、バカじゃないもん!」

 「完全にバカのムーブやってるけどな。絶対確信犯だろ」

 「あ、バレた?」

 「当り前だ。キャラにないことはあんまりしないほうがいいぞ。俺はアリスがそういう奴だと知ってるからいいけど、ほかのやつらはそういかないんだから」


 そう言ってアリスのもとにすぐに駆け寄る真司。

 彼女が少しだけ体育祭の前と言うことではしゃいでいるせいで、歩いているだけだとすぐに取り残されてしまうのだ。


 しかし、真司自体にそこまでの負担はない。ただいちいち追いかけなくてはならないのが、非常に面倒だった。

 もう少しアリスにはおとなしくしてほしいと考えている。


 「翔一、玉入れくらい出よう!」

 「だから無理だって。俺はそもそも選手名簿に存在しないんだよ」

 「はあ!?なにそれ!!」

 「だから俺は人に嫌われ過ぎたんだよ。出ないって言ったら、ここまでされるんだよ」

 「ほんっとにクソね!なんでこういうことができるのかしら!」

 「はあ……アリスが被害に遭ってるわけじゃ―――」

 「あなたも馬鹿よ!なんで怒らないの!」


 歩きながら怒られる。まだ学校からは遠いため、誰も気にしている様子こそないが、真司には気が気ではない出来事だった。しかし、そんな様子もお構いなしにアリスは真司に詰め寄ってくる。


 「あなたが優しいのは素晴らしいわ!でも、それはあなたの心を殺してまでやることじゃないのよ!なんであなたは、自分より他人を優先するの!」

 「それは、俺が人より強い力を―――」

 「持ってるからじゃないの!確かにあなたは強い。本気を出したら、そこら辺の不良なんて瞬殺よ。だからって、あなたのやりたいことはないの!」

 「アリスと―――」

 「いれればいいなんて脚下に決まってるでしょ!もっと、あなたの欲望を聞かせなさい!なんでもするわよ!それこそ、今年の体育祭であなたのために優勝してやるわ!」


 そう宣言すると、アリスは不機嫌そうに歩いていく。普段よりも歩幅は大きく、回転も速い。明らかに怒っている。


 真司もアリスの言いたいことはわかる。だが、人に手をあげたくないのは、心から思っていることなのだ。

 彼自身が部活の水泳選手だったときからそうだ。自分の才能をつぶされるようなことはされたくない。なら、自分が他人にそういうことをしない。そういうスタンスで生きてきたから、真司は他人に手をあげようとしない。


 これは生来の性格―――そして、こう決めたことを絶対に曲げない母の教え。


 彼なりの正しい生き方であっても、アリスからすると許せないことがたくさんあった。

 あまりにもこれでは、真司が不利過ぎる。いや、美学として正しいのかもしれない。しかし、人としての幸せを享受するには圧倒的に時間が足りない。


 彼の先が短いことを知っているのだから、なおさら怒る。

 彼女の幸せとは、今のところは真司の笑っていること。こう考えると、アリスも大概な気はするが、それでも彼女にはまだ未来がある。


 それに対して、真司は今を生きることに執着しなければならない。そんな彼が不利な生き方など、おそらく唯咲美穂でも許せないことだ。


 アリスは、いきなり歩みを止めて真司の頬を挟み込んだ。

 最近はこれをすることが多いが、今回はバチン!と結構大きな音がしてしまった。


 「真司、幸せになるにはどうすればいいと思う?」

 「それは……」

 「私はね―――欲望を表に出すことだと思う。もちろん、出しちゃいけないものもあるだろうし、そこらへんはちゃんと折り合いをつけないといけない。でも、人は欲望を出さなくなったら廃人だと思うのよ」

 「廃人は言い過ぎじゃ……」

 「それくらい、ってこと!夢をかなえる人は己の欲望をさらけ出して形にした人―――夢がかなわなかった人は、さらけ出したけど形にしきれなかった人、もしくは最初から欲望をさらけ出さなかった人。前者はいいわ。挑戦してできなかったのは、成長する糧となるから。でも、後者は違う。なにも得られない。なにも糧にならない」


 そう言うと、彼女は真司の目を真面目に見つめる。


 「あなたは、どっち?」


 その質問に真司が答えられるはずがなかった。だが、このことが原因で、アリスが玉入れの選手枠に真司の名前をねじ込むのだった。

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