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救世のディアフトライ  作者: 波多見錘


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THE VIOLENCE MAIZE

 唇に手を当てながらアリスとのキスの感覚を思い出しながら帰ってきた真司は、早々に部屋に戻り先ほどあったことを思い返していた。


 アリスには考えないでいたほうがいいと言われたが、それでも見過ごしていい問題ではない。

 しかし、一見考えないというのは無責任に聞こえるが、彼にとってそれは心を守るうえで有効な手段だった。


 だが、明らかな力の暴走ともいえる現象は、原因をすぐにでも探る必要があった。


 まずは自分の意思に関係なく発動する点。暴走するのだから当たり前ともいえる。意思に関係ないと言えば、体の支配権が青龍に移ったときもそうだが、その時とは違い青龍の意思も関与していなかった。


 ほかにも真司たちが知る攻撃よりはるかな強力なもの。


 彼の意思とは関係なく放たれた弾は、見事に男に着弾した瞬間頭を消し飛ばした。その威力はすさまじいもので、熱量も想像を超えていたのか、触れたところを焼けこげさせて出血を許さなかった。それだけなら真司の力とは断定するには早かったが、その後の弾の軌道がおかしかった。


 男に着弾した後、貫通後に誰かに当たったりすることがないように貫考通後、確かに消滅した。


 ここまで来ると、この物理法則を無視した動きは否定するわけにはいかなくなってしまう。

 彼自身も一瞬自分の力ではないと信じたかったが、考えれば考えるほど自分がやったと思い知らされていった。


 『やはり―――』

 「ああ、あれはクリムゾンの時と同じなのかもしれない」

 『ならば、事故と考えるしかない。思いつめても……』

 「心配いらない。そこはもう、大丈夫。実際のところ、クズが死んだだけだ。世界にとって毒にはならない。それにな、ちゃんと考えれば命を奪う行為は前からやってきた。人かそうじゃないかの違いでしかないんだ」


 そう割り切ったことを言う真司だが、青龍にはそれが強がりにしか見えなかった。

 アリスに言われたことをそのまま実行すればいいものを、彼は家に帰って考えている。自分がやってしまったことを受け入れて、どうにか呑み込もうとする。優しすぎるがゆえに、本当は彼には戦いが向いていない。だというのに、運命は彼を選んだ。なんとも残酷なものだ。


 青龍に心配されながらも自身の意思を見せた彼は、そのままベッドに横たわって天井を見つめる。


 そうすると、いつの間にやら自身の気持ちは晴れていき、この態勢で思い出すのはやはりあの時のアリスの姿。

 今は自分を押し倒そうとして来ないが、彼の瞳には彼女の姿がはっきりと思い出される。


 あんなにひどいことを言ったのに決意に満ちたあの目。心のどこかで救いを求めていた自分の心に入り込むような救済の瞳。すべてを引き込むような決意の血ににじんだ光―――今思い出しても、彼には彼女が魅力的な女子だと再認識させまくるだけだ。


 『幸せそうだな』

 「うるせえよ。俺もこんなつもりはなかったよ」

 『だが、お前は受け入れただろ?』

 「わかってる。こうなった以上はできるだけ長生きして、アリスに笑顔でいる時間を少しでもあげるんだ。そうすれば、いつかの日に彼女は俺を思い出して笑えるようになるはずだ」

 『真司は、探さないのか?』

 「なにを?」

 『生きる、方法を……』

 「あるのなら欲しいし、すぐにでもすがりたい。―――でもな、そんなことする時間があるのなら、俺は魔物を倒し続ける。誰かの笑顔のない世界に生きる命なんか、俺にはいらない―――俺が欲しいのは、誰かのために捨てることができる命だ」

 『―――漫画の読み過ぎだ』

 「いいだろ、カッコつけさせてくれよ」


 そう言って笑う彼は前より少しだけ余裕があるように見える。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 時間は少し遡って……


 今日から付き合い始めた加藤と美穂―――二人は並んで歩いていたが、特にこれと言っ会話はない。

 本当に付き合っているのかわからない光景だが、確かに彼女たちは告白をし、それを受けて付き合い始めた。


 それを見ていたクラスの人たちは、付き合っていることに疑いはない。しかし、ほかのクラスの人たちは告白のことを知らない。

 疑われてしまったら、結局いつもと変わらなくなる。


 「どこか、寄ってくか?」

 「……うん」


 話を振ってもすぐに切れてしまう。だが、加藤はそれを織り込み済みだった。

 それだけ彼女にとって真司の存在は大きかった。心がボロボロになっても真司だけはと励まそうとするのが証拠だ。


 彼女はいい意味でも悪い意味でも純粋。一途に人を想い続けて結ばれたいと思う理想がある。

 そんな彼女だからこそ、誰からも好かれて愛されるのだろうが、一度傷つくと中々立ち直れない。


 そんな二人は、放課後にカフェに立ち寄る。


 二人ともこういう場所に来る機会は少なく、どうすればいいのかピンとこない。どうにかして店員に注文を頼むと、またしばしの沈黙の時間が訪れる。


 その沈黙を破ったのは、意外にも美穂だった。


 「ごめんね加藤君……」

 「……なにがかな?」

 「やっぱりまだ真司の顔がちらついちゃう……」

 「いいよ。それだけ長く一途に想ってきたんでしょ?俺はそんな唯咲さんを好きになったんだから」

 「でも、男の子って自分だけを見てほしいものなんじゃ……」

 「そりゃあね。でも、そんな苦しそうな顔をしてまでしてほしいとは思わないよ。でも、将来的にはちゃんと乗り越えて、俺のこと見てほしいな」


 その優しい言葉―――美穂には苦しい言葉だった。今でも申し訳ない気持ちでいっぱいなのに、わかりもしない未来のことなど想像するだけで辛くて……


 「ああもう!唯咲さん、この話はやめよう!今はカフェにいるんだ―――コーヒーでも飲んでまったりしよう!」

 「でも私……頼んだの紅茶……」

 「いいから!甘いもん食って今は忘れよう!な!」

 「お金が……」

 「いつもマネージャーやってくれてるだろ!奢るよ、今日くらいは!」

 「あ、ありがと……」


 突如として明らかなから元気を使い始めた加藤に驚いた美穂だったが、その好意に素直に甘えることにする。

 今この時だけはすべてを忘れて、目の前にいる優しい彼氏のことを好きになろう。


 彼女は、ひそかに拳を握り、自分自身の大きな覚悟をこの場で決めることにするのだった。


 だが、この二人は知らない。

 近い未来、二人が全く望まないことが起きてしまうことを……

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