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救世のディアフトライ  作者: 波多見錘


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エルダー再臨

 最近真司には気になることがある。

 それは、自身の力のみで魔物の存在を感知できるようになったことだ。


 本来、人族に分類される彼は別次元の存在に当たる魔物の存在は見ることができ触れることができても、遠くからなんの情報もなしに感知することはできないはず。同じ魔物である青龍も、魔界の扉が開いたときの波動と魔物が孕んでいる魔力の流れを感知することでようやく存在を認識することができる。


 言ってしまえば、この世界で魔物が暴れない限り青龍ですら魔物の存在に気づけない。


 だというのに、真司はその青龍よりも早く魔物の存在を感知してしまっている。


 なぜかはわからない。ただ、現に今もその存在に気付いている。


 『真司、魔物だ』

 「ああ……わかった」

 「魔物が出たの?」

 「ああ、だから行ってくる。アリスも明日までの練習、頑張れよ」

 「もちろんよ―――あ、あと。今日はあなたの家に泊まるからね」

 「はあ……好きにしろ」


 アリスの放った彼の家に泊まるという言葉。真司は呆れながらも、こんなにも愛おしいものかと思いながら学校を抜け出すのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 魔物に襲われている区画は混乱の渦に巻かれていた。


 突如として出現した魔物―――一般の人にはデモニアと行った方がいいのだろうか。その存在の破壊活動により、道路もふさがれて救助が遅れているのだ。むしろ今まで警察や自衛隊が来れる道が1本でも残っていたのが奇跡なのだ。


 到着した真司は、迷いなくクリスタルを押し込んでブラックに変身した。


 そしてそのまま魔物に飛びついて押し倒し、いったん距離をとった。

 本来ならそのままマウントポジションをとって殴りこむのがいいのだろうが、如何せん相手は魔物。ただの人間でない以上、どんな能力を持っているのかがわからない。


 見てくれは虫―――雑魚のセクト級とはいえ、単騎でこんなに街を壊滅状態に持って行ける存在だ。油断は禁物ともいえる。


 「見たまんまならクワガタだな―――ただ……」

 「ああ、奴はセクト級の中でも上位に君臨する存在―――能力は厄介だぞ。パワー系の能力ではあるがな」

 「変則的な能力よりそういう物理で押される方が面倒なんだけど―――おわあ!?」


 真司が青龍と話して一瞬魔物から目を離したすきに、相手は高速で飛行して接近し、そのクワガタ特有の顎で挟もうとしてきた。

 それにいち早く反応し、彼は両腕を広げてなんとかそれを掴んで防御する。


 だが、想像の以上の強さに彼は驚かされていた。


 「ちっ、クリムゾンを使う」

 「わかった。今度こそ暴走の原因を突き止めて見せる」

 「頼んだぞ―――うおおおおおおおお!」


 段々と体が赤く変色していく真司は、そのまま顎を持つ手を持ち替えて、力任せに持ち上げる。

 魔物は顎をから力をかけられたものの、あまりの力に抵抗することができず、そのまま体ごと持ち上げられてしまった。


 すべての体重が顎の一点に集まることになっても折れることがないくらいに丈夫だ。

 そこは魔物が故だろう。だが、そんな小手先の能力など彼には通じない。


 「ぬおおおおらあああ!」

 「グギ……グゴ!」


 勢いよくクワガタの魔物を振り上げて宙に浮かせて、一瞬だけ相手に無重力の状態を生ませる。その一瞬、魔物はなにをしようと地面に着くまで何もすることができないので、完全な隙が生まれてしまう。


 それを狙っていた真司は、片方の顎から手を放し、その手を手刀にしてつかんでいるもう片方の顎に振り下ろす。

 バキンと音を立ててへし折れた顎はそのまま剣に変化する。


 すかさず彼は変化したばかりの剣にクリスタルをかざして、目一杯突きの準備姿勢をとった。

 そして、魔物がちょうどいい高さに墜ちてきた瞬間―――


 グサッ!


 剣は見事に魔物の腹部突き刺さり、完璧な致命打を与えた。


 「グゴアア!」


 叫びにならない断末魔。それが真司に聞こえた瞬間に、魔物は爆散した。


 「今回は暴走しなかったな」

 「ああ……その兆候の電撃すら現れなかった―――やはりセクト級相手では弱すぎて出すに値しないのか?」

 「そういうわけでもない気がするんだよなあ……」


 魔物を倒したからと、そんな悠長な会話をしていると―――


 ドンドンドンドン!


 「かはっ!?」


 ―――突然、背中から攻撃を受けた。


 剣撃ではない。遠距離というよりも、中距離からの爆破弾を飛ばされたようだった。

 彼はもろにその攻撃を受けて吹き飛ばされていくが、その中で相手の正体を見るためになんとか体を反転させた彼の目に映ったのは……


 「っ……!?お前っ、―――アヌビス!」

 「……」


 正体に気付き、咆える真司だったが、対照的にアヌビスはなにを喋らずにこちらに向かってくる。相変わらずの速度で、前の真司では対応しきれなさそうなものだったが……


 「速い……けど、反応できない速さじゃ、ない!」


 そう言って、振りぬかれかけた鎌に足をかけて無理やり後方に飛ばされながら下がる。

 その途中でメイズに変わり、元に戻った顎もL字に曲げて銃に変形させる。飛ばされたままの体勢で射撃する。


 放たれた銃弾は見事にアヌビスを捉えて、さらに射撃の反動でさらに後ろに後退することに成功した。


 そのまま思いがけないほどの遠距離のリーチをとれた真司は、ライフルモードに変化させて強力な一撃をお見舞いしようとするが、それは許されなかった。


 「ふんっ!」

 「速すぎだろ!」


 一瞬だけ距離を詰める姿が見えたので、真司は一瞬で頭を回転させて攻撃姿勢から回避行動への移行を速やかに済ませて鎌の一撃を躱した。

 その一連の動作に間に、彼は隙を見逃すことなく下に回り込んだ瞬間、腹部に向けて射撃していた。


 「ぐふ……」

 「なんの目的で攻めてきた―――単なる私怨か?」

 「ちっ……そんなところだ―――これ以上は稲妻が降ってしまう。さらばだ」

 「稲妻……?おい、どこにいく!なにがしてえんだてめえ!」


 少しずつ半透明になって消えていくアヌビスの姿に、真司は驚いたがすぐに正気に戻り相手を追いかけようとする。しかし、もう遅い。

 追いかけた始めたころには、もうアヌビスの姿は、この世界に会ってないようなものだった。


 「クソッ、逃げられた!」

 「いや、撤退だ。奴なら真司を殺すことは容易でないにしろ、今の段階ならまだ可能のはずだ」

 「じゃあ、なんで止めねえんだよ」

 「止める隙も無かったからだ」

 「ちっ……こんなことのために、アリスの走ってる姿が見れなくなるのかよ……」


 なんとなく彼は察していた。奴は来る。すぐにでも―――というより、明日にでも来るのではないかと。

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