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救世のディアフトライ  作者: 波多見錘


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49/214

???年前

 「陛下!ついに奴らが攻めてきました!」

 「クソッ!本当に来たというのか!」

 「このままで第一防衛ラインを突破されて―――」

 「報告します!奴が―――ディアフトが現れました!」


 ディアフトが現れた。その一報はこちら側の陣営を絶望に陥れるのには十分なものだった。

 事実、その報告により、数人の要人が戦意を喪失していた。


 ディアフトといえば、すでに“魔界”の一部を滅却―――すでにいくつかの都市を従属させている“人類側”にとっての最高戦力だ。


 「陛下!聖法魔術の使用許可を!」

 「ぐ……あれは、威力が強すぎる上に付近にとてつもないほどの毒素を振りまく―――許可は、出せない……」

 「陛下!今はそんなことを言っている場合ではありません!一刻を争う事態です!」

 「それでも、民を見捨てることは……」

 「なら、四神に掛け合ってください!彼らの力があれば、今よりは幾分かマシになるはずです!」

 「だが―――なぜ四神が一か所にまとまらないかは知っているはずだ!」

 「知っています!だから、ここで!」

 「ダメだ!あれを使っては、魔界も終わる!」


 まさに八方塞がり―――魔界は万事休すかと思われたところに、通信が入った。

 それは、今そのディアフトと対峙している部隊からだった。


 『これより、対ディアフト戦として爆撃魔術を使用します!撃てええええ!』


 ドン!ドン!ドン!ドン!


 『全弾命中!繰り返す!全弾命中!』

 「陛下!」

 「これで倒れてくれれば……」


 魔王のそんな声が届いたのか、少しずつ煙幕が晴れていき、中の様子が見えてくる。

 ―――が、


 『煙幕晴れま―――クソッ!ディアフト、立ってます!』

 「クソ!爆撃ですらダメだというのか!」

 「陛下、ご決断を!」

 「―――私が出る!」

 「陛下!?―――なにを言っているのですか!?」

 「息子もいる。次期魔王はもう存在している。なら、私が死んでも問題ない。私が死んだら、ディアフトに聖法魔術を使用しろ。民の命を犠牲にするのなら、私もならなければ……」

 「おやめください!今、陛下を失ったら!」


 そんな要人たちの声を無視して、魔王は戦場に転移した。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 「総員!これ以上進ませるな!」

 「人間め!なんで、なんで侵略なんか!」

 「それは奴らが発展しすぎたからだ」

 「へ、陛下!?」


 死屍累々の戦いを見せる魔物たちの前に現れたのは、そこにいるはずがない。ましてや、訪れるはずもない魔王の姿だった。


 「人界は発展し、多くの国を築いた―――だが、資源には限りがある。すでに奴らの時空は滅びかけているのだ」

 「だからって……」

 「人間とは―――生きものとはそういうものだ。足りなくなれば、都合のいいように使うために略奪をする。だからこそ、我々も屈してはならない。だから、あの男は我が相手をする。全員、撤退しろ―――もうすぐ聖法魔術が降るぞ。できるだけでいい。取り残された民を避難させるのだ」

 「わ、わかりました。それで、陛下は……?」

 「我は、この地とともに果てる。そして、我はもう魔王ではない。魔王の座は、すでに我が息子のものだ」


 それだけ伝えると、元魔王は一人だけで戦場に残りディアフトを迎える。


 「お前が魔王か?」

 「“元”魔王だ……引いてくれないか?そうしてくれればある程度交渉には応じる」

 「なにを言っている?ここまで来て交渉なんて―――そんなシラケたことするわけねえだろ?」

 「今までのことを道楽としてやっていたのか?」

 「楽しいだろ?新しい力でどこまでやれるのか。―――だからお前も、ぶっ殺してやるよ!」


 その瞬間、ディアフトは魔王に襲い掛かった。

 だが、仮にも魔王。そんな簡単に攻撃はできなかった。


 「ふんっ!」

 「ぐはっ!?」


 ただ手をかざしただけでディアフトは吹き飛んでいき、反り立つ崖にたたきつけられる。だが、そんな程度の傷と言わんばかりに、なにごともなかったかのように立ち上がった。

 ―――そうだ。奴はこうして、無尽蔵に立ち上がり、破壊と暴虐の限りを尽くした。


 そしてディアフトの真価とはここからだった。


 最初こそ、魔王の魔力によって吹き飛ばされていた彼であったが、いつの間にか最初ほど吹っ飛ぶことはなくなり、恐ろしいことにその場に立っていられるように変わってしまった。

 そしてついに……


 ズドン!


 「かはっ!?」


 魔王の腹部をディアフトの拳がとらえた。

 絶対に通るはずがない。近づくことすら不可能と思われていたディアフトは攻撃を見事に命中させて、魔王をひるませた。

 しかし、それで止まることはなく、彼はさらなる猛攻を仕掛ける。


 「ぐふっ……な、なぜ攻撃が……」

 「無駄だ。対策すればするほど、お前は俺に攻略されるんだよ!」

 「攻略だと……ぐはっ!?―――これなら……」


 そうつぶやきながらの一撃。今のつぶやきは相手に聞こえていないはずだし、完全に不意を突いた一撃だった。だというのに―――


 「はっ、“もう”通じねえよ」

 「なっ!?」


 まるで見切っていたかのように動きを変えて、攻撃を避けたのだ。

 意味が分からないとばかりに元魔王は目を白黒とさせるが、そんな余裕もディアフトは与えなかった。


 「おらおら、なんか奥の手あんだろ―――使えよ!」

 「クソ……ここまでか―――聖法魔術の使用を……許可する」


 元魔王が呟き、通信した瞬間―――ディアフトのいる空間が黄金の光に包まれた。

 その光は徐々に大きくなっていき、一帯を明るく照らし、破壊した。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 「陛下……」

 「聖法魔術―――着弾確認。これより、この地域一帯へのし、ん、にゅうを……」

 「どうした?」

 「光―――収束します。生体反応より、生存1。ディアフト……生きてます」

 「な!?そんなはずはない!最大火力の魔術だぞ!」

 「ですが―――へ、陛下!?」


 光が収まり、大きなクレーターと化した地域の中心にディアフトの姿が見える。

 そして、その男の手には魔物たちにとって一番大事な存在。いや、大事だった存在である魔王がぼろきれのようにつかまれ、魔術の盾にされていた。


 「そ、そんな……陛下が命をとしてまでの魔術だというのに……」

 「終わりだ……」

 「もう、魔界は人界の支配下に……」


 この一件以降―――魔物たちは抵抗する意思を失った。

 だが、人類文明はなぜか―――この二年後、一度滅びる。


 そして、その原因を知るのは、次期魔王―――つまり、現代の破壊神の名を冠す現魔王のみだった。

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