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救世のディアフトライ  作者: 波多見錘


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リバイバルクリムゾン

 深夜―――誰もが寝静まる時間に、警報が鳴り響いた。


 物語で聞いたことのある、空襲の時に流れる警報の音だ。

 最近の魔物の襲撃への対策の一環として、避難を促すために政府が魔物出現時に近隣の半径10キロを避難対象の範囲として警報を出すことにしたのだ。


 そして、この間に導入されて、少ししてから訓練の形で鳴らされる予定だったのだが―――


 「魔物……」


 真司はその警報のサイレンが鳴る前に、魔物が来ていることに気付いた。

 ぶっつけ本番の登場になってしまった警報よりも先に感知した真司は、ベッドから起き上がり着替え始める。


 「こんな時間に魔物……しかも、この気配この間の―――ん?」


 ここまで独り言をつぶやいて、彼は気づいた。―――青龍が起きていないことに。


 「青龍……起きろ」

 『む……こんな時間に―――なんだ、この音は……』

 「魔物出現の時用の警報だ」

 『む……確かに、魔物が来ている。だが、なぜこんな時間に?』

 「わからん」

 『早くいくぞ』

 「ちょっと待て」


 そんなやり取りをして、真司の謎はさらに深まった。


 寝ている状態から起きた青龍は、気づいていなかった。つまり、真司は自分の力だけで完全に魔物を感知していた。

 その異変を感じ取った真司だが、なんだか嫌な予感がしたので、気づかないふりをすることにした。


 着替え終わった彼は部屋を出ていこうとすると、不意に服の裾を掴まれた。

 力の加わった方を見ると、アリスが眠そうな目をこすりながらなんとか彼の服を引っ張っていた。


 「どこ、行くの?」

 「魔物が出た……」

 「……ちゃんと帰ってきてね」

 「ああ……もう、アリスを泣かせたりしないさ」


 そう言うと、彼は彼女の頬にキスをした。


 「ふぇ……?」

 「まだ恥ずかしいから―――これで許してくれ」

 「えへへ……」


 自分手で頬を触り、自身にされたキスの感覚を確かめると、アリスは満足したように眠りについた。彼女は、また知らぬ間に真司が壊れていくのを見たくなかっただけだ。こうして愛を伝えてくれるのなら、彼女は彼の帰りを待てるというものだ。


 「行くぞ、青龍」

 『ああ……』


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 コルバルトに変身し、現場に急行した真司は、その場所に近づくにつれて一瞬の閃光が何度も続くことに気付いた。


 おそらく銃火器かなにかを使っているのだろう。


 無論、一般の兵器など魔物には通用しない。

 ―――もちろん核兵器など、それなりの威力があれば通用するが、たいていの重火器は市街で使えるようなものではない。


 「ギシャアアア!」

 「うわあああ!来るな!来るなああ!」


 パンパンパン!


 自衛隊よりも早く避難誘導をしていた警察が、魔物に向かって発砲するが、意味をなさずに避難中の住民に近づいていく。


 それを見た真司は、なんの迷いもなく武器を展開して魔物と警官の間に割って入る。


 突然の衝撃に避難民たちが動きを止めて真司の姿を確認するが、彼はそんな住人たちに向かって叫んだ。


 「早く逃げろ!死にたくないなら、全力で逃げろ!」


 そう言うと、住民たちは我先にと足を速めていき、いつの間にかその場に人はいなくなっていた。


 それを確認した彼は魔物に向き直り構える。


 「今度は逃がさねえぞ」

 「ギリャアアアア!」


 その瞬間、風が切れた。

 ―――二人は、各々の能力を発動して、高速の世界で戦闘を始めたのだ。


 先の戦いとは違い、肉弾戦への恐怖が若干薄れた彼は、躊躇なくコルバルトで殴りこむ。

 というよりは、腕に着いたトンファーブレードで斬りつけているのだが……


 どちらも高速の世界でヒットアンドアウェーの戦い方でやっている。

 高速で距離をとり、高速で距離を詰めて、相手を斬りつける。


 先ほどからこれのやり取りだ。


 現状は真司のほうが上手ということもなく、魔物のほうが優勢というわけでもない。

 お互いに力が拮抗し、ほとんど同じくらいに傷がついていた。だが、ここで魔物は奥の手を出してきた。


 「グギイイイイイ!」

 「ぐっ……!?」


 突然放たれた羽からの異音―――前の戦いで真司の動きに重大な影響を与えたものだ。


 その音に高速移動中で態勢を思いっきり崩してしまい、その隙を魔物につかれた。


 「ちっ、ガードが間に合わない……」

 「グガアアアア!」

 「虫の魔物は知性が低いんじゃなかったのかよ……」


 態勢を崩して、がら空きの胴に蹴りを受けて、直線状に吹き飛んでいき、マンションに激突した。


 衝突した瞬間に、とんでもない轟音を立てて建物に穴をあけて煙がたつ。


 それを見た魔物は、間髪入れずに煙の中の真司に突っ込む。―――だが、その選択は誤りだった。

 よく見えない相手に不用意に近づくべきではないのだ。


 それを体現するかの如く、魔物は煙の中から伸びてきた手に頭を鷲掴みにされた。


 「ぐぎ、ぎ……」

 「これ以上は、コルバルトは使えない……メイズもブラックも同じ―――なら、怖がってばかりじゃ進まない!」


 煙の中から出てきた真司は、文字通り真っ赤な姿に変わっていた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 『ご覧ください!今、地上では怪物同士の激しい戦闘が行われています!』


 美穂は、深夜に起きて怪物の戦闘の中継を見ていた。―――とはいっても、アナウンサーの安全を考慮してある程度の距離を保っているため、詳しく観察することはできない。


 だが、真司のことで泣き腫らしながら眠った彼女は、こんな時間に目が覚めてしまい、彼のことを考えないためにテレビを見ていた。

 彼女にもさっきの警報が聞こえていたが、音が聞こえただけで、彼女の地域は避難域に指定されていないために、彼女が動くことはない。


 「真司……」


 テレビでしか見たことないような戦闘がテレビの中で繰り広げられて―――だからと言って、美穂自身がほかのことを考えられるかと言われれば、そんなわけもない。

 別に浮気だと責める気もないし、できない。


 彼が彼なりに大事な人を見つけただけ、だというのに、彼女は気持ちに踏ん切りがつかない。

 こんな深夜に起きて、ただ悲しくなるだけなのに真司のことを考えてしまうくらいには……


 だが、違うことを考えようとはしている。


 「スマホ、壊れちゃったなー。みんなから連絡来てたら……もしかしたら、真司から来てるかも―――って、あるはずないよね」


 今度は、初恋を拗らせた少女が壊れていく番なのかもしれない。

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