表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
救世のディアフトライ  作者: 波多見錘


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/214

記憶なき戦い

 目を覚ますと、真司は自分の部屋で寝ていた。


 見慣れた天井に、寝慣れたベッド。だが、彼には強い違和感があった。


 ―――戦いの記憶がない。真司はは前々から自分の中でくすぶっていた力を解き放った。それまでは覚えている。だが、そこからの記憶が完全に途切れている。


 しかし、戦いの傷は見事についているし、強い疲労感も感じる。寝てはいたが、おそらくさほど時間は経っていないはず。


 「っ……」

 『やっと起きたか……下に降りてニュースを見てみろ』

 「……?それよりもなにが起きたんだ?」

 『見ればわかる。ここ数日は、その話でもちきりだからな』

 「数日……!待、て―――俺は何日寝てた?」

 『ざっと2日程度だ。まあ魔物は何度か出現したが、自衛隊がなんとか退けていたぞ』


 青龍にそう言われて、真司は痛めた体に鞭打って下に降りていった。

 すると、リビングにいた明音が目を丸くしながら駆け寄ってきた。


 少しだけその雰囲気に驚きながらも、真司はテレビをつけようとする。だが、明音に止められた。


 「そ、その……見ないほうがいいんじゃないかな?」

 「なにがあったんだよ……青龍も教えてくんねえし」

 「そ、それはな……今は良くないニュースが流れてるから……」

 「それを知らなくちゃならないんだ」

 「あっ……つけちゃ―――」


 『先日出現した怪物に対抗していた人物が、破壊活動を行っていた事件に関して防衛省は、依然警戒を解かない姿勢を固めるとのことです。―――こちらがおとといの怪物騒ぎの際の上空からの映像です』


 テレビで流れた映像には、変身した真司がまさに魔物の攻撃を受け止めているところだった。


 その瞬間、亀の甲羅のようなものが出現し、完全に攻撃を防いだ。

 しかし、そこからの記憶がない真司は驚かざるを得なかった。


 「な、なんだこの姿は……」


 真司のクリムゾンへの変身態は、彼に知るものから大きく形を変えて、青龍の装甲が明らかに違うものに変わっていたのだ。

 肩や腕などについていた青色の鎧が、赤色になっているうえに、亀の甲羅を半分に割ったような形のものが腕についていた。そしてなにより特徴的なのが、なんのものかわからないボロボロのマントを背中に纏っていたのだ。


 そうして変わってしまった映像の中の真司は、ゆっくりと魔物に向かって歩き始めた。


 中の真司は、一切の攻撃に怯むことなく歩みを止めなかった。

 魔物も強力な力を手にして、自分が彼を倒せると踏んでいたのだろう。一切倒れる様子を見せない真司に、動揺を隠せないようで、何度もあの水砲を連発してくる。


 しかし、その攻撃を、記憶に存在しない真司は、よりに纏われている甲羅を前に掲げて防ぐ。


 一直線で向かってきた水は真司という壁に阻まれて、前に進めなくなり横側にあったビルを破壊していく。


 「なんだよ、これ……」

 「真司、もう見るのはよそう……」

 「い、いや……そんなはず……」


 そのまま見続けると衝撃の映像が流れた。


 突然歩みを止めたかと思うと、映像の中の彼は剣にクリスタルをかざす。その瞬間に、真司が見たことないほどに剣が赤く輝き始める。

 それを振り下ろすと、すべてを巻き込みながら魔物を斬り伏せた。


 その衝撃はすさまじく、魔物を倒した時の爆発を大きく上回り、彼の半径おおよそ200メートルが消し炭に変わった。


 それだけならまだしも、映像を取っていたTVのヘリに視線を向けた真司は、一切の躊躇なく撃ち落とした。

 報道によれば、奇跡的にも犠牲者はおらず、考えたくもない費用がパーになったくらいのものらしい。


 「青龍、お前が助けたのか?」

 『そうだが……我が聞きたいのは、あの力はなんなのかだ―――玄武の力に似ていたが、お前はいつあいつと契約した?』

 「玄武?」

 「真司、どうなってるの?私にも青龍の声が聞こえるのだけれど……」

 『我が共有すべきと考えたからだ―――それよりも、いつ玄武と契約していた?』

 「ちょっと待て、なんの話だ。玄武なんて名前、聞いたことすらないぞ」


 真司はそう言って青龍の質問を否定する。

 確かに彼には、青龍以外の魔物と契約を結んだ記憶はない。だが、青龍にとって、あの力は契約しないとありえないような力だったのだ。


 『真司があの力を使った瞬間に、我の力が強制的に押さえ込まれた』

 「それって……」

 『ああ、真司の意識が押さえ込まれた瞬間に、我も力を失ったのだ。あれは、真司の姿をしているが、実質的には別の力だ』

 「そんな……打開策になりうると思ったのに……」

 「真司、あれはお前の意思じゃないのか?―――よかったあ……」

 「よくねえよ!俺があの力を使ったばっかりに!」

 『だが、お前の言う通り、あの時にそれしかなかったのはわかってる。口ではああいっていたが、我も限界には気づいていた。だから、お前が気に病む必要はない。誰も死ななかったんだ。まずはそれでいいではないか』


 青龍の言葉で慰められるかと思われた真司は、なにも言わずに自分の部屋に消えていく。


 「真司……」

 『大丈夫だ。奴は強い―――なんだかんだ、次の戦いには立ち上がる』

 「そういうものかな……真司にも限界はある。だから、あんまり無理はさせないでやってくれよ」

 『心得ている。だが、あいつしかいない以上は、無理をしてもらうしか……』

 「っ……私はどうすればいいのさ。息子が命かけてるのに、見てるだけなんて……」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 部屋に戻った真司は、ベッドに寝転がっていた。

 少しだけ自分の血でヌチャっとしていたが、気にならないくらいには気に病んでいた。


 青龍に犠牲者はいなかったといわれても、結局は出しかけた。


 自分のあずかり知らぬところで、自分の力で誰かが死ぬところだった。

 これがただの知らない人なら、良くはないが立ち上がるのは簡単だ。しかし、もし自分の身近な人が死んだら―――美穂が、母さんが……そう考えると、胸が苦しくなる。


 そして、アリスのことを考えると―――彼女が血まみれになりながら自分に刺されている画を想像した瞬間、おぞましさがこみ上げてきた。


 幸い履くようなことはなかったが、自分の目の前に、血まみれで目の光を失った彼女がいると考えると、どうしても耐えられない。考えるだけで、気分が落ち込む。


 新しい力を手にした真司。だが、それは絶対に使うことのできない力―――しかし、真司という障害がいると判断した魔界は、一層侵攻に力を込めるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ