表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
救世のディアフトライ  作者: 波多見錘


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/214

奥の手

 帰還時、満身創痍だったアヌビスはようやく立ち上がって歩けるようになるまで回復し、魔王から処分を下されていた。


 「ふむ……四神獣の馬鹿どもの邪魔が入ったか……」

 「そうです……ですが、私が確認したのは、青龍のただ一人。もしかしたら、我々への対抗勢力は最低でも、あと3人はいる可能性が……」

 「そうか……だが、卵が孵化しなかったのはどう責任を取るつもりだ?」

 「それは……」

 「まあよい―――しかし、エルダー級を撤退させるほどの力がるのか……だとするのなら、よほど青龍との適性が高いか―――もしくは、すべての神獣と……いや、それはないな。これは普通の人間が使えば、強力なリスクを伴うはずだ。人間にそこまでの覚悟はないはずだ」

 「陛下……?」


 魔王は少しだけ思案する。

 自分の部下だった青龍たちは確かに魔界ではかなり強力な存在だった。


 なんせ、概念存在である魔王には劣るが、それでも神獣とは支配者だった。


 その中でも天空を支配する青龍は、頭がよく力も強かった。そんな存在が、たった一人の人間だけでアヌビスを撃破できる力を出せるはずがない。そんなことをすれば、青龍の力に人間が耐えられるはずがないからだ。


 「なにかそんなにも特別な人間だというのか?」

 「陛下……これから私はどうすれば?」

 「ふむ……卵を破壊した件を許すわけではないが、より有益な情報が手に入った。まずは自分の傷を治し、戦いに復帰するがいい」

 「は!陛下の仰せのままに!」


 そう言うと、アヌビスは玉座の間から姿を消した。

 しかし、それでも魔王は考えることをやめなかった。青龍に力を貸した人間―――真司のことを想いながら……


 「おい!」

 「は、なんでしょうか」

 「たしかどこからでも人を撃ち抜ける魔物がいたであろう」

 「―――テッポウウオですか?」

 「そうだ。そいつを送れ」

 「ですが、ここであの精鋭の魔物を切るのですか?もう少し、あの狙撃魔物は今後も使える存在になると思いますが……」

 「良いから、部隊全員をおくれと言っているのではない。一人だけ遅れ。我は、そやつらの実力も見てみたい」

 「―――わかりました」


 魔王に命令されて、突然現れた魔物は、これまた突然消滅していき、直後に魔界と人界を繋ぐ扉が開いた。


 「さて……どれだけ抵抗しても無駄なのだから、さっさと首を差し出すんだな、四神獣ども」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 真司が現場に到着すると、大量のバッタ型の魔物が暴れていた。


 それを見た瞬間に真司はブラックに変身し、民間人を助けていった。


 「早く逃げろ!」

 「は、はい……!」


 一匹一匹殺していくが、あまりの数の多さに処理しかねる。それに、今回もいつまでも逃げずに撮影に命を懸ける存在がいる。真司は、本当にそういった輩を邪魔に思っている。

 ただ邪魔なだけではない。けがをしないように、常にそちらに気を配らなければならないために、非常に厄介なのだ。


 そして、そういう奴に限って、自由を訴えて避難しようとしない。


 警察や自衛隊も到着し、その撮影している人たちに避難を促すと、ほとんどの人は言うことを聞くのだが、たまの数人くらいは、一切話を聞かない。


 「早く避難して!」

 「警察が俺たちの行動を制限してもいいのか!」

 「そうだ!ここに残るのは俺たちの自由だ!」

 「危険ですから!」

 「あ、いたっ!この警官が力で押してきました!」

 「動画も撮らないで!早く移動して!」


 見ていられないいたちごっこも起こる。―――なあ、今の俺に悩みの種を増やさないでくれよ……


 俺はメイズに姿を変えて、作り出した銃で迷惑男のスマホを貫いた。


 「は?」

 「早く立ち去れ、次は頭だぞ」

 「ひっ!?」


 そう言うと、男は一目散に逃げ始めようとする。

 それで集中ができたからか、特に被弾することもなく大量のバッタたちを殺すことができた。


 あのバカがいなければ、なんの危なさもなく終わっていたのだがな。


 そう思って、男のほうを見ると―――


 「へ?あ……?」


 ―――彼の胸に風穴があいていた。

 風穴があいてしまった男は、それ以上言葉を発することなく膝から崩れ落ちていった。


 「別の敵か?それとも、魔界の門による強化……」

 「前者だ。西方向700メートルに、デミセクトだ」

 「ややこしいな。セクトより強い感じか?」

 「ああ……少なくとも、遠距離からの狙撃ができるくらいにはな」

 「ちっ、メイズでいくぞ」

 「ああ……」


 クリスタルを回転させて、真司は遠距離にいる敵の姿を捉える。目の前のバッタたちは、とりあえず警察に丸投げする。


 武器をライフルモードに切り替えて、彼は相手と同じ条件で撃ち抜こうとしていた。

 しかし、真司がとらえた魔物は、確実にいつものそれではなかった。


 「なあ、魔物ってあんな露骨に魚みたいなやつがいるのか?」

 「我にもわからん。お前も、この世界に存在するすべての虫を見て知っているわけではないだろう?それと同じで、我の知識にも限界があるのだぞ」

 「じゃあ、なんか攻撃しようとしてきてるのは―――避けたほうがいい感じだな」


 そう言いながら、彼は横にローリングして敵の口から放たれた水の弾を避けた。


 「早いな……人の体を貫くだけのことはある」

 「言ってる場合じゃないぞ」

 「わかってる!」


 青龍の言葉に呼応するように、真司は武器にクリスタルを当てて技の待機状態に入る。その瞬間、あいてもなにかを察したのか、魔物の口にも先ほどのように水がたまってきている。


 「どおおおらああああ!」


 真司の踏み込んだ足が、大きく地面に沈み込むほどの威力。

 それを放った真司は、大きくノックバックするがすぐに態勢を立て直した。


 発射された弾は真っすぐ魔物に向かっていくが、相手も真司の弾が近づいてきたことによって放たれた。


 互いの弾は、お互いに正面から衝突した。しかし、拮抗などするわけもなく、より圧縮されて一点に力が集中していた真司の弾が魔物の水弾を貫いた。

 だが、貫いたからと言って相手の弾の威力が死んだわけじゃない。


 中心を貫かれたことによって、空中で分離していった水は、勢いのまま突っ込んでくることによって、散弾のように広がっていき、いたるところの地面をえぐった。それでも、近くにいた警官もその場を離れていたので、けが人は出なかった。


 真司のはなった弾はというと、魔物の弾に少しだけ軌道をずらされてしまい、本来狙ったところではなかったが、相手の右の肩から下をえぐり取った。


 だが、しぶとい魔物だ。これで死ぬことはあり得ない。


 「頭狙ったんだけどな」

 「仕方がない。こうなるのも多少は織り込み済みだったはずだろ?」

 「まあな。今の俺は少々機嫌が悪い。というか、普通に調子が悪い。なんだか、自分以外の誰かになっているような感覚だな」

 「……?どういうことだ」

 「こっちの話だ」


 そんな会話をしていると、魔物のいるであろう場所の上空が光った。


 「魔界の門か?」

 「ああ、久しぶりだが、間違いない」


 その光を確認した真司たちは、さらなる攻撃に備えた。

 ―――つもりだった。


 ドゴオオオン!


 「……は?」


 彼とは関係のない場所が消し飛んだ。なにを言ってるのか意味が分からないかもしれないが、文字通り消滅した。

 先ほどの水弾が魔界の光によって強化されたのだろう。先ほどとは大きさも威力も速さも―――すべてが段違いなものが、放たれたのだ。


 彼らはそれに反応すらできずに、建物が水流に押し流されて轟音を立てるさまを見ているしかなかった。


 「グオオオオオオアアアアアア!」


 咆哮が聞こえた瞬間、真司はとっさにクリムゾンに変わり、防御の姿勢を作った。

 一瞬だけ浮き上がる体。それを、どうにか踏ん張って、真司は吹き飛ばされないようにする。ただよければいいのだろうが、そういうわけにはいかない理由がある。


 「真司、まずいぞ。この威力なら、この町を蹂躙しながらお前の住む場所に―――」

 「わかってる!だから止めてんだろうが!」


 普通の人にはわからない。だが、真司たちにはわかる。射線上に真司の通う学校がある。

 ただ校舎が粉砕するだけなら、また青龍が直せばいい。だが、今の時間は多くの生徒が部活に明け暮れている。


 「うわああああああああああ!」


 美穂や、自身のライバルであった加藤を守るために、真司はここを引くわけにはいかないのだ。


 絶叫しながら、弾を受け止める真司は段々と体の内から沸き上がる力に身を任せ始める。


 「なにがなんだかわかんねえけど……今はこれしかねえ!」

 「な、なんだこの力は!?待て!この力は、使うんじゃない!」

 「うるせえ!得体が知れなくても、守るには―――もうこれしかねえだろ!」


 バチバチバチ!


 力を込めた真司に電流が迸る。


 ―――その瞬間、彼の目の前に甲羅のような盾が出現して、相手の魔物の攻撃を防いでしまった。だが、この選択肢が真司にとって最大の過ちになるのは、青龍の警告を無視した時点で決まっていたのだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ