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救世のディアフトライ  作者: 波多見錘


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電撃迸る

 「かはっ!?」


 突風に吹き飛ばされ壁にたたきつけられる変身真司。

 あれだけ威勢のいいことを言ったのはいいが、今は彼が敵に攻め入られているという状況に変わりはない。


 だが、彼自身は諦めた様子はない。今の今まで諦めたような姿勢が嘘のような変化だ。


 「くっ……はぁ……」

 「もう限界だろう?その龍の呪縛から解き放ってやろう」


 そう言って相手は、真司に向かって槍を向けて突進してくる。

 だが、まだ終わらない。


 ガシッ!


 精一杯力を込めて槍をつかむ真司。

 そうやって彼は、致命傷ギリギリの攻撃はなんとかかわし続けている。しかし、相手もそれを何度も許すほど弱くはない。


 「グヌヌ……」

 「まだだ……」


 少しずつ刃先が真司の胸元に近づいていくが、それをなんとか食い止める。

 そこで相手はわずかな変化を感じ取る。


 (なんだ?こいつ、さっきまでここまでの力があったのか?――――いや、勘違いでなければ私の槍を受け止めるなんて程の力は……)


 そう思うと、自然に彼との距離を取るように動く。


 「どうした?とどめを刺さないのか?」

 「うるさい!お前、なにをした」

 「なんのことだ?」

 「しらばっくれるな!明らかに最初より強くなってるじゃないか!」

 「強くなってる―――か」


 その言葉で真司も気づいた。

 自分があの槍を最初のほうでは確実に受けきれるはずがなかったことを。だが、今の自分はそれをやってのけている。

 それが意味するものとは


 「俺にも勝ち筋があるってことじゃねえか」

 「そんなことはない!断じて!人間に勝利はない!」

 「そう言ってられんのも、今のうちだ」


 そう言いながら立ち上がる真司。

 ブラックの能力はすべての状態の中でも、かなりの標準クラス。特筆するべき能力も、出せる武器もない。だが、進化という強みがある。


 戦えば戦うほど、彼は強くなる。だが―――


 「真司、あまり時間をかけすぎるな」

 「なんでだよ、ようやくノッてきたのに」

 「わかってないな。お前は長時間変身したことないから知らないだけだ」

 「あん?」

 「長時間変身していると、我でもどうなるかわからん。ただ、もうすぐお前の体が悲鳴を上げるぞ」

 「そんなバカなこと……」

 「当り前だ。どのスタイルでも負担は伴う。なにせ、体を無理やり進化させるのだからな。体と言う器が耐えれても、魂までそうとは言えん」


 青龍の発現は嘘ではない。そう考えるのは簡単。ここで逃げるのも、青龍の力を使えばそう難しくはない。だが、彼には引けない理由がある。


 「どうせ死ぬんだ。大事なもん守って死ぬなら、それでいいだろ」

 「馬鹿……そういうところだ」


 その言葉を聞かずに真司は飛び出す。目的は、相手の体に一撃見舞うこと。


 「うおおおおおおお!!」

 「させるかあ!」


 相手は叫びとともに突風を吹きあらし、真司を飛ばそうとする。

 だが、そう思い通りになることはなく、ついに彼はその突風で吹き飛ばされなくなった。


 「馬鹿な!?」

 「これが―――俺の……力だよ!」


 そう叫びながら放たれる真司の拳。それは相手の腹部を捉えて、確実なダメージを与える一撃になる。

 その拳からは電撃が走り、もう一度ダメージを与えた。しかし、それは青龍と真司の二人にとって想定していない攻撃だった。


 「なんだ今のは?」

 「わからん。だが、今のが効いたみたいだ」

 「ぐはっ!?……ごほっ……クソっ、絶対に―――ぶっ殺してやる!」

 「はっ、エルダー級が笑えるな。四神獣がいなくなって、魔界もずいぶん変わったのだな―――むろん野蛮な方に」

 「貴様!絶対に殺す!陛下が裏切り者を許すはずがない!」


 そう言って馬鹿の一つ覚えみたいに槍を掲げてくる相手。

 それは簡単によけれるはずだが―――


 「真司、動けるか?」

 「ふぅ……無理だ。隙は稼ぐ、あとはどうにかしてくれ」


 そう言って真司は少し体を横に向けて脇で槍を挟んで相手の動きを制限させる。

 そうして相手側に向けた左肩には―――青龍の頭がある。


 「ぶっ飛ばせ!」

 「ああ―――グガアアアアアアアア!」


 次の瞬間、相手を巻き込み、後方のすべてを吹き飛ばした。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ドゴ―ン!


 校舎内に響き渡る轟音に、アリスのクラスメイト達は限界とばかりに小さい悲鳴を繰り返していた。

 しかし、アリス本人はその音の正体をわかっているようだった。


 (真司、こんな激しい戦闘を……なら、私も怖がってるだけじゃ駄目よね)


 そう思って、何度か魔物のほうに目を向けたが、あの時に襲われた感覚がフラッシュバックしてどうにも動き出せない。

 しかし、なにもできないというのも真司の理解者としてどうかと葛藤することもある。


 自分で首を突っ込んだこと。後悔することになっても、自分は真司を傍で支えてあげたい。ただの自己満足でも、好きになった人には笑ってほしい。


 「おい……」

 「へ?わ、私……?」


 魔物に話しかけられて素っ頓狂な声をあげるアリス。

 だが、その視線のせいで、すぐにその姿勢は恐怖に変わる。


 「お前、なぜ私を何度も見る?」

 「い、いや……その……」

 「まさか、私を倒そうとでも?」

 「そ、そんなわけ……」


 ―――ない。


 そう言おうとすると、彼女は魔物に首をつかまれて宙づりにされる。


 「ぐっ……」

 「嘘をつくな。なら、なにをしようとしていたというのだ?」

 「みんなを逃がそうと……でも、私じゃ何もできないから―――何度も諦めてたのよ」

 「ふむ……そういう人間がこれからは邪魔になる。ここに、この女をかばうという人間はいないのか?いないのなら殺すが?」


 そう言うと、クラスの人はほぼ全員が目をそらした。

 人が死ぬ様を二度も見たくない。それもあるだろうが、彼女ら、彼らにアリスを助けようとする気はさほどないからだ。


 嫌われ者の肩を持つ女。それだけで、彼女の好感度は容姿と転校生と言う肩書に見合わないものとなってしまった。ゆえに、彼女を助けてほしいというものはいない。


 「ふむ、薄情なものだな。ふぅ……ならば、この場にいる全員を殺すか」

 「だ、ダメよ!」

 「なぜだ?」

 「ダメ……理由は―――言えないけど、嫌いだからって人を助けないのはあり得ない……」


 真司の生きざま。それを傍で見ていたアリスが言う。

 どんなに嫌われていても、嫌っていても罪のない人をたすけないわけにはいかない。口にせずともわかる。彼女には、彼がどうしようもない善人だということを。だから、彼が来るまでむやみに死なせるわけにはいかない。


 「この女はお前たちを殺さないでほしいと言っているのに、お前たちはこの女を助けたくないのか?」

 「「「……」」」

 「非情だな」

 「いいのよ。それで……嫌われてても、大事なことさえわかっていれば、私はかまわない!」

 「なにを言って―――」


 ズガアァァン!


 突然の轟音。

 あまりの音の大きさに、魔物はアリスを放して音のする方―――上を見上げる。


 すると、今まであったはずの教室の天井がなくなりどす黒い結界が中から見えるようになっていた。

 そして、その景色の中に―――


 「セト!?」


 ボロボロになったもう一人のエルダー級の魔物が飛んでいた。

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