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救世のディアフトライ  作者: 波多見錘


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転校生が願う

 今日は学校を休むことにした。

 理由はそれと言って大したものはない。


 昨日の戦闘で、かなりの体力を消耗した。その上に、学校に登校なんてしたものだから、体が悲鳴をあげた。


 シンプルに疲れたから休む。母親に嘘をつくわけにもいかず、そっくりそのまま伝えると、意外にも了承してくれた。

 本当のところは無理してでも行けと言われると思ったが、母さんいわく―――


 「あんたに無理なんてさせられない」


 と、言われた。こういわれると、自分が戦っていることを盾に使っているみたいでいやな気分になる。

 別に戦っているから無理してほしくないなんて同情はほしくない。むしろ、いつも通りに接してくれるのが俺にとっての幸せだ。


 かといって、やっぱ行くわとは言えない。


 と言うわけで、その旨をアリスに伝えて学校を休んだ。

 彼女からのメールの返信は、「無理しないでね」とのこと。やはり、アリスはいいやつだ。


 戦ってなかったら、付き合いたかったよ。


 「でも、それはアリスにとっては迷惑かな?こんな1年生きられるかわからない屍みたいな人間……」


 真司はいつしか―――首にかけて、肌身離さずにつけているペンダントをもらった時から、自分でも否定できないくらいには、アリスに好意を寄せていた。


 好意に気付いてしまった彼は、その思いにブレーキをかけるようになった。

 彼女が助けてくれるのは、自分が彼女を助けたから。その見返り―――恩返しとして接してくれている。


 そう思わなければならなかった。


 もちろん、女の子がただの異性に貴金属をプレゼントしたりするはずがない。彼はわかっている。だからこそ、さらにブレーキを掛けなくちゃならない。

 たとえ、一時のために幸せになれても、その後に待ち受ける結末は絶望。彼には、それを踏み越える勇気がなかった。


 「もっと、大雑把に生きれればなあ……」


 そう思いながら、ふと時計を見ると、時刻は12時。この時間帯なら、4時限目くらいだろう。

 やることのない彼は、アリスが今どうしてるかを考えつつテレビをつける。


 ―――すると、番組の放送で中継の文字とともに、ある学校が映し出されていた。


 「……?うちの学校……」


 映し出されていたのは、真司のかよう高校。だが、それは普段の映像と注釈が入っており、今繋がっているカメラに視点が戻ると、仰天物の映像がテレビに写された。


 学校付近の住宅などの景色は一緒なのだが、肝心の学校は黒い幕のようなものに覆われていて、その上の空には、目のような紋様が現れていた。


 『エルダーの結界!!』

 「な、なんだ!?エルダーの結界?」


 映像を見た瞬間、脳内で青龍が叫ぶ。そのあまりの勢いに真司は驚くが、青龍が反応するからには、魔物がらみだとすぐに感じ、すぐに質問する。


 『あれは、エルダー級の魔物にしか扱えない結界だ』

 「うーん、まずエルダー級とか、階級があるのを説明してほしいんだけど……強さに格があるみたいだけど、そもそも種としての違いなの?」

 『そうとも言えるし、そうでないとも言える』

 「どういうこと?」

 『いくつかの種の強さを総称して、セクト級やエルダー級などの階級が存在するんだ』

 「ふーん……」

 『階級などは、属するロードの眷属の中での力量で決まる。簡単に言うのなら、今回の結界を張ったエルダー級の魔物は、この世界で言う、悪の組織の準幹部クラスだ』

 「やべえじゃん」

 『そうだ。ヤバいのだ。だから早くいくぞ。このままでは、あの学校の生徒が全滅する』


 その言葉を聞くと、真司はすぐさま家の戸締りを済ませて学校を飛び出した。

 彼の表情は焦りとか不安とかで、ぐちゃぐちゃになっている。


 まずは、生徒の無事を確認したいところだが、青龍によるとあの結界は繁殖が目的の結界であるらしく、出入りが不可能な結界で、通信手段もないそうだ。


 「じゃあ、アリスや美穂は!」

 「まだわからない。だが、我にも気づけないほどに慎重に展開されたものである可能性がある。そうであるなら、まだ展開されて時間は経っていないはず。だが、いつから人が食われるか……」

 「ちっ!くそったれが!」


 そのまま真司は、コルバルトに変わり、現場に直行する。


 学校が視界に入る距離にまで到達すると、その異様さがまた目に見えてくる。


 「真司、そのままクリスタルを押して突破するんだ」

 「言われなくても!」


 彼は青龍に言われるまでもないと、腕についていた武器を移動させて足につける。そのまま彼が学校の周りに張り巡らされた結界を突き破って侵入していった。


 その時に、わずかではあるがカメラに押さえられたのは言うまでもないだろう。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 一方そのころ、アリスは一人で真司が来るのを待っていた。


 登校して、1時限目が始まって間もなく異変に気付いた。

 突然、あたりが暗くなったのだ。当たり前だろう。


 しかし、それだけじゃなかった。

 どこからともなく二足歩行の犬が現れたのだ。


 クラスの人たちは何事かとひそひそと話始め、警戒心は言うほどなかっただろう。―――クラスメイトの一人が殺されるまで。


 あまりにも騒がしくするものだから、見せしめとばかりにクラスで一番目立つ男が胸を貫かれた。

 その男は、決して評判のいい男ではなかったが、場をパニックにするには十分な出来事でもあった。


 そして、目の前の化け物たちはこう言った。


 「この卵に手を出したら、この学校の誰かが死ぬと思え」

 「我らが、直々に裁きを下す」


 そう言うと、化け物たちは地面を突出させて、その上に卵を置く。

 その異様な光景、死んだ生徒。あまりにも常軌を逸したカオスな空間。


 クラスの人たちはどうにか逃げようと考えたが、その恐怖ゆえに身動き一つとれなくなってしまっていた。


 そんな状況の中、アリスは目の前の相手の正体に気付いている。

 この場の誰よりも知っている。これが、こいつらが―――


 「魔物……」


 幸か不幸か、彼女の言葉は目の前の魔物たちに聞かれることはなく、なんとか助かったが、耳に入っていたら彼女はどうなっていたか、想像するだけで恐ろしい。


 そんなことに思考が回らない彼女は、ただひたすらに自分の好きな人のことを思い浮かべていた。


 (お願い……助けて―――真司……)

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