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IF THERE IS NO DIFFERENCE, THERE IS NO NEED TO CHANGE IT

 まあ、結果から言うとどうにもならなかった。

 暴走した自分を抑え込めないから。真司は現実で自我を失ったのだから、ある意味当然の結果ともいえるだろう。


 そこからどころか、それ以前の記憶すらも若干なくなっている。

 彼の唯一残った記憶といえば、鍵という発言だけだった。力の鍵―――それが意味するものを知らないが、結局ろくなものではないということだけはわかっていた。


 「クソ……結局、だめなのか―――クリムゾンみたいに時間の経過で俺の体が適応するのを待つしかないか……」


 そんなつぶやきを最後に真司の意識はそこで途絶えた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 「うっ……」

 「あ、し、真司!―――真司!」


 目を覚ますと、とてつもない倦怠感と筋肉痛にも似た痛みが全身に走った。

 しかし、それよりもアリスの声が聞こえた真司は、なんとか体を起こす。


 アリスの補助を受け、上半身だけを起き上がらせた彼は、彼女の確認をしたのち、周りを見渡した。


 周りには高級そうな様相に、ドリンクバーや食べ物が置かれたカウンターがあり、広々とした空間のほとんどは、客席であろうたくさんのテーブルや椅子に覆われていた。


 「ここは……?」

 「ダイヤモンドラウンジよ。倒れたあなたを運ぶってなって、どこに運んだらいいのか考えたのよ」

 「それでここか……」

 「ここはそこそこ高い位置にあるし、飲み物もある。裏に回ればパンとか色々あるわ」


 アリスの説明を聞いて、真司は納得した。

 確かに、その説明が正しいのなら、飲料水、食べ物、に困ることはない。それに高いということが本当なら、来るまでにある程度多くの階段を通るわけで……


 ゾンビの進行が遅れる可能性を期待できる。


 「説明が本当なら、ラウンジに入ってるのは賢い選択だったかもな」


 彼は、そういってアリスをほめた。

 だが、彼はそんあ作戦がアリス一人で思いつくとは思っていない。


 「もしかするけど、俺のこと見られたか?」

 「いや、その……見られたっていうか……」


 彼の質問に彼女は言いよどんだ。

 その行動に彼は疑問を持ちながらも、近づいてくる人の気配に警戒を始める。しかし、それはすぐに説かれることになる。


 「おや?起きましたか」

 「あんたは?」

 「警戒しないでください。一応警察ですが、今のあなたに私は敵対する意思はありません―――おっと、私が誰なのかを聞かれていましたね。私は、捜査一課所属南篠徹です。あなたの正体を見た者として、行動を共にさせてもらいます」

 「警察……」

 「真司、この人は大丈夫だと思う。変なところあるけど、自分にまっすぐなタイプだわ」

 「大丈夫なのか?」


 この場に警察がいることに一瞬だけ不安感を覚えたが、彼女が大丈夫だというので一旦信じることにする。


 とりあえず、体力回復のために真司はパンをほおばった。

 隣にはアリス、正面には南篠が座った。静かに食事をしていた空気の中、それを鑑みずに質問を投げかけてくるものがいた。


 「十神真司さん、あなたはなぜ戦うのですか?」

 「急に不躾なことを言うな……それを知ってどうする。お前は俺に協力してくれるのか?」

 「私は興味があるんですよ。SNSなどに転がる情報からかんがみるに、デモニアは2年ほど前から確認されています。都市伝説レベルの話ではありましたが、0号の目撃も確認されています。つまり、あなたは2年も前から戦っていることになります。警察がその動きを察知できなかったのか、もみ消されていたのか―――それは一警察である私にはわかりませんが、なぜあなたが一人でそこまで戦えたのか知りたいのですよ」


 失礼とまでは思わないが、わざわざ聞くことでもないと彼は考えた。

 それはアリスも同じで、あまり行き過ぎたことは聞くなと言おうとしたが、真司はそれを制止してしゃべり始めた。


 「きっかけなんて大したことじゃない。ただ、周りの世界が壊れるのが嫌だっただけだ」

 「周りの世界?あなたはそこまでの正義のヒーローなのですか?」

 「誰が……ただ母親と幼馴染が俺の前で無残に死んでいく姿を想像したら吐きそうになるほど嫌だっただけだ」


 単純に家族を、それに近しいものを守ろうとしただけ。

 最初なんて、それこそ周りの人間なんてどうでもよかった。ただ、守ることの延長線上でやっていただけ。正直、今もそれは変わっていない節がある。


 だが、元来より彼は優しい。

 口ではそう言っていても、子供が泣いているときに絶対に手を差し伸べてしまう。


 おそらくそんな彼だから、あの時の決断も早かったし、今も戦えているのだろう。


 彼の祖答えに納得したのか、南篠は」少しだけ頬を緩めて言う。


 「あなたが戦っている理由がなんとなくわかりました。やはりあなたは、私の思い描いた0号の性格と遠からずという感じのようです。これから警察側がどう出るのかはわかりませんが、今は協力しましょう」

 「……お前はなにができるんだ。警察―――武装はあるだろうが、それでも俺からすれば一般人だぞ」

 「外部との情報はどうしますか?この空港もわずかにしか電気は生きてませんし、家との連絡ができても、それ以上の情報は手に入りませんよ」

 「確かにそうかもな……情報はあるに越したことはないか―――まあ、警察に渡されている情報じゃ機体はできないけど」

 「あと、私の持っているこの銃を戦闘中にお貸ししましょう」

 「なぜだ?」


 真司がそう質問すると、南篠は鼻高々に答えた。


 「私はあなたを追うためにできるだけ多くの資料を見ました。そこで気づいたのです。あなた、何でも武器にすることはできますが、細かい出力は変形もとに依存していますね?とはいえ、棒切れでもデモニアを倒すことはできますが、本物の銃などを使った場合は大きく能力が上昇するのではないですか?」

 「……驚いた。そんなことによく気づけたな。まあ、そうではあるが多少の誤差程度だ。お前に銃を借りるより、お前をアリスの守りに置いたほうがこっちとしても戦いやすい。あまり気にするな」


 そういって真司は南篠の申し出を断った。

 本当にそこまでの違いはない。確かに銃や刀剣を使って変形すればそれだけ出力は上がる。


 だが、付与されている特殊機構については変化がない。だからこそ気にする理由がない。

 彼にとって魔物が倒せれば、それ以外に武器に対して大した興味などないのだ。

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