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FORCED TO

 真司の無理をする、という発言に不安を覚えたものの、彼の体は彼が動かすもの。一応青龍は警告までは出すことができ、それを伝えておく。


 「なにをする気かわからないが、無理をするという発言をそう簡単に見逃すわけにもいかないのだが?」

 「いいだろ、別に。ここは撤退だけでもいい。ダメージを与えることが先決だ。怨霊の塊となって本来のアピスとは若干の差異がある奴は、なぜかわからないが撤退のタイミング早い。そうなんだとしたら強力な一撃で相手は下がってくれるはずだ」


 そう言いながら彼はゾンビたちを引きはがしてどうにか視界を確保する。

 今鞭を受ければなんの減速もしないままの攻撃を受けることになる。しかし、彼の思惑はそこまでを利用しないと成立しないものだ。


 と、その時真司の視界の外にいたゾンビに妙な気配を感じた。

 それを察知した真司はすぐにそのゾンビを、自分の遠くに行くように思いっきりぶん投げる。


 すると、その妙な気配を放ったゾンビは投げられた後の空中で爆発し、黒煙を上げる。


 先ほどは察知できなかったが、一度前例を見てしまえばそれを理解できるようになる。文字通り、彼にその技は通用しなくなった。―――ように思われた。


 「それで見切ったと思えるなよ!」

 「だからって全部を爆発させるのは浅慮だな―――」思いつかないと思ったか?」

 「抜かせ!」


 真司の言葉に激昂しながらも、アピスは冷静に術式を発動させて真司の周りにいたゾンビのすべてを同時に爆発させた。先ほどは連鎖によるいくつかの爆発だったが、今回は数にして10のゾンビを同時に起爆させた。


 大きく、一つの爆発となり、真司を爆炎で包んでいく。しかし、煙の晴れたところにいたのは、綺麗にマントで体を覆い隠す真司の姿があった。


 「こっちの想定内でしか動いていないんだから、勝てるわけがないだろう?」

 「黙れ―――黙れ黙れ黙れ!さっさと死ねええええ!」


 短慮にもほどがある。真司はそう言いたかった。

 ちょっと煽っただけでレオ異性差を失い、今自分がどうすれば優位な立場にい続けることができるのかすらわかっていない。


 鞭を振り回し、爆破によってがらんどうとなった真司へと叩き込む。

 しかし、彼はそれを掴んだ。


 馬鹿じゃないのか。誰もがそう考える。だが、彼は術式の完了によって左腕の血が亡くなる前に思いっきり引っ張った。

 すると、アピスは鞭を放さず、真司の方へと思いっきり引っ張られる。


 その瞬間真司の左腕は機能を失い、だらんと垂れてしまう。

 しかし、慣性の法則からアピスが止まることはなく、相手が突っ込んでくる。


 それを確認した真司はだらんと垂れさがった腕についているクリスタルを押し込んでエネルギーを右の拳に集中させる。


 剣はないが、その圧倒的なパワーをぶつけることは可能。


 (これで決める!)


 彼の拳は炎を纏い、必殺の一撃をお見舞いしようとしかけてくる。


 「どおおらあああああああ!」

 「クッソがああああ!」


 完成のままに動くアピスは彼の動きから逃れることはできない。

 必殺の一撃はアピスの頬を完ぺきにとらえ、その勢いのまま地面に叩きつけた。


 その勢いが地面に衝突した瞬間に、彼を中心に地面に大きなくぼみができ、周りにいたゾンビの残りも一気に殲滅した。


 「こ、こんな程度のことで……」

 「そうだ。お前はこんな程度で死ぬんだよ。いや、さっさと地獄に戻れ。これ以上、この地を侵食するな」


 そう言うと真司はもう一度拳に力を込めて爆散させた。


 「青龍、終わったか?」

 「ああ、反応の消失を確認した。撤退ではなく、消滅だ」

 「よかった……これで間に合う。ちょっとギリギリな気もするけど」


 体が痛い。左腕に力が入らない、

 そんな体に鞭打って、彼は駅の方へと向かっていく。不自然に人がいないその町は、“今日も”死体で溢れてる。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 「渡辺さん、現場に到着しました」

 『通報者の住民に連絡が取れないわ。最悪、死んでる可能性があるわ』


 V4を装着した伊集院が現場に到着するも、そこには何もいなかった。


 それもそのはずで、その場所はつい数分前に真司がアピスを倒し、あとを去った場所だからだ。


 そこには誰もいない。魔物やゾンビは降ろいか、人の気配すらない。

 それを異変と感じ取った伊集院は、周りを警戒する。


 その静けさに騙されて武器のロックを解除するが、それが現れるようにはどうしても見えなかった。


 『もう、0号が戦った後かしら?』

 「かもしれませんね。ですけど、なんだか嫌な予感が―――あっ」

 『どうしたの?』

 「いえ、少し気になるものが―――渡辺さん、あれって戦闘痕じゃないですかね?」


 そう言うと、伊集院は渡辺にも気づけやすいように近寄って視線カメラに映す。


 映像に出力されたのは、半径が5メートルほどにもなりそうな大きなクレーターだった。

 それを見て、渡辺はすぐにそれを解析し、結論を出した。


 『真ん中から放射線状に力が逃げていったように見えるわね。すごい綺麗な円だわ―――いや、球体の下部分と行った方がいいのかしら?』

 「でも、これだけ大きな力が放たれたとなると……」

 『デモニアはもう倒されている可能性はあるわね。とりあえず伊集院君も現場の状況を一通り見て回ったら帰ってきなさい。報告書をまとめるわよ』


 そう判断し、伊集院も従って帰還しようとする。

 その瞬間―――V4システムのアラートが鳴った。


 『!?―――伊集院君、警戒を!』

 「わかっています!―――っ!?」


 伊集院が警戒する。そう言った瞬間に、彼の意思とは別に体が動き始めた。


 「なっ!?」


 言葉にするよりも早く意思に反して動き、なにかに対して防御反応を繰り返す。なにが起きているのかわからない伊集院は渡辺に聞いた。


 「どうなってるんですか?」

 『伊集院君、そのままAIのアシストに任せて!なにか人の目じゃ応答しきれない速度の攻撃を受けてるわ』

 「だから、勝手に……」


 伊集院は不必要な力を抜き、動きをアシストに任せる。ここで彼の実力でやると言われても、まあ無理だろう。


 だが、この状況で0号がやってこない。

 新しいシステムの運転に夢中になって、その異変に気付けないことを二人は後悔することになる。

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