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THE CONTROL

 朝食を済ませて、チェックアウトの時間を迎える。

 時刻はもう10時ほどを回っているが、このままでも全然間に合う。だからと言って真司の恩師である長谷川が発着ギリギリに来るはずがない。


 まあ、基本的に空港には大概1時間前には人が揃っていたりするので、長谷川もその時間に入るだろう。

 今から行けばだいたい出発の時間から大幅に早い時間委は着ける。聞くところによれば、少ない時間でも世話になった水泳部員は飛行機の出発までたちあうとのことだった。


 生徒の自主的なものだったのだが、それが少し邪魔だった。


 水泳部が来るということは真司を知る同級生が来るということ。

 そして、彼がなまじ有名なばかりに、真司にあこがれて水泳を始めた者やあこがれて部活に入った者たちが後輩に多い。


 話は聞いたことあるだけで、ただの一人も後輩の顔は知らないのだが、あちら側が認知しているためどうやっても逃げられない。


 そう言った要素で、行くこと自体はためらったが、結局は恩師のため。

 見送りは立ち会うことにした。


 「いいのか?払わせちゃって」

 「払えって言って、あまたは払えるのかしら?」

 「それわかってて言ってる当たり、強かな性格してるよな」

 「ふふ、私の罠にはまった真司が悪いのよ。それに、私はあなたにお金に変えられないような大きなものをもらってるんだから―――気にしなくていいのよ。あなたのためなら、私の持てるお金のすべてをあげるから」

 「そんなことしなくても……」

 「大丈夫よp。今のところ、そんなことをする気はないし、あなた、そのお金で今度は私のことを養うでしょう?信頼関係がなければ、私はさ覆布をちらつかせたりしないわ」


 そんな自分の身を使った信頼の証明。

 彼女が真司を完全に信頼していることはよくわかった。警戒心が強い彼女を篭絡した真司は文字通りいい男というものなのだろう。


 まあ、水泳部のエースに、見過ごせない優しい性格。本来なら異性にモテてハーレム状態でもおかしいことではなかった。


 そんな彼に幸多からんことを。そう思うことに何の罪があるのか。

 彼の望まない結末はもうすぐそこまで来ている。だが、それを乗り越えるためのきっかけはくしくもアリスではなかった。


 誰よりも己を真司、誰よりも真実へ早くたどり着く。

 そんな男が彼の心に灯をともすこととなる。


 「―――っ」

 「真司?」

 「アリス、悪い。魔物だ……先生に言っておいてくれ。出発の時間までにはそっちに行く!」


 そう言うと真司アh気配の下方向に向かっていく・


 「この気配―――アピスのものだ!」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 「よし、これで調整も完了したわ」

 「V4、完成したんですか?」

 「完成はとっくにしてたわよ。ただ、調整ができてなかっただけ。これであなたは敵を葬れる最強の存在になれるわ」

 「ですけど、魔物を倒せる出力というは簡単に出せるんですか?」


 そんな伊集院の質問に、渡辺はふふんと鼻を鳴らしながら高々と答える。


 「下は火を殺すのに十分な出力、上は核―――とまではいかないけど、それでも例えようがないくらいの強力な出力を出せる。装甲だって、燃料気化爆弾までなら十分に耐えられるレベルよ。まあ、核も耐えられるには耐えられるけど、高濃度の放射能を浴び続けることに問題がないとは言い切れないわ。まあ、つまり核の威力でも命の保証はできる。だけど、装甲もそれを耐えるので精一杯。事実上、戦闘不能になるから、気を付けて」

 「さすがにそこまでの火力は考えられませんね。今のところはそんな相手に遭遇したことありませんし」

 「それは前例を考えたうえでの予測でしょう?いつ相手が強力になってもおかしくないでしょう?」


 その言葉に彼はなにも言い返せない。

 確かに今まで通りのペースで敵が来るというのは楽観的でしかない。いやここでいう楽観的な考えとは、これから何らかの原因でデモニア弱くなることだろう。


 しかし、そんなことは誰も思っていないのは唯一の救いだ。

 伊集院もきつけが効いた。これからも、一縷の好きすら許さないようになれるだろう。だが、そん彼にも疑問ができる。


 「そんな振れ幅の大きい力をどう制御するんですか?」

 「そこら辺は抜かりないわよ。私のセキュリティロック以外に、V4システムの中には高精度AIが搭載されてるわ。これを使って、基礎の力の調整ができるわ。任意の場合とあなたへの命の危険が迫ったときの緊急時の場合の二通りの状況で、動作アシストが入ることもあるわ」

 「すごいですね―――これなら、むしろ僕じゃなくても動作アシストだけで叩けてしまえそうですが……」

 「そんなに簡単じゃないわよ」


 彼の言葉に彼女は否定の言葉を投げかける。

 そして、それが伊集院にしかこのシステムを操れないこと―――固執するだけの所以があることを。


 「このシステムは他人には扱えないのよ。まず、スーツの規格を完全にあなたの身体情報に合わせてる。それをもとに、AIの動作情報の限界も計算させてる。あなた以外の人間が使えば、このV4システムが動く棺桶になるか、警察の殺人破壊兵器となるかのどっちかよ」

 「そんな危険なもの……」

 「って、思うでしょ?計算上、あなたならなんら問題ないはずよ」

 「わかりました。僕は伊集院さんのことを信じてますから」

 「そう言ってくれると嬉しいわね。どう?この戦いがひと段落済んだら、同棲してみない?私とあなた、相性いいと思うのだけど?」

 「いっ!?―――どこまでが本気なんですか?」


 面白い反応が見れたと渡辺はふっと笑い、彼を見る。

 すかしているほどではないが、丁寧口調で誰からも距離を置く彼の顔を赤面させた焦りの姿というのは面白いものだと思う。


 半分本気ではあるが、今の彼女に誰かと一緒になろうという考えはない。


 「そうね―――相性はいいかもしれないけど、結婚とかそう言うのは面倒だからいいわ。私は研究できればなんでもいいもの」


 その言葉に真司は安堵か何かわからない感情に襲われる。

 その感情が彼にとってどういった変化をもたらすのか見ものだ。だが、それがどう影響するのかわからないのがよくない。


 いい方向なのか悪い方向なのか。それがわからない。

 もし、事のすべてが悪い方向に向かったとき、彼らは自分を許せるのだろうか?

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