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THE BULLET TO BULLET

 残弾数は2。猶予はない。なんせ相手は3体もいる。

 貫通弾の威力を駆使して2体を真っすぐに配置し、同時にぶち抜くという神技に等しい行為をこなせば問題ない。


 まあ、文面だけならそう難しいことでもないように見えるが、真司の正確な誘導と、伊集院の完璧ともいえる射撃が必要となる。

 もはや、人の領分ではない。


 それでもやらなくてはならない。あるいは―――いや、これは彼自身の覚悟を見るしかない。


 「0号、ここは博打になってもまとめて……」

 「いや、それはあまりにも愚策だ。焦らず1体ずつ―――最悪、俺がやる」

 「……わかりました。では、援護をお願いします」


 0号の言葉を聞き、伊集院はすぐに銃を構える。

 真司は、コルバルトのまま高速状態に入る。


 目にもとまらぬ速さで加速し、ゾンビたちを切りつけていく。

 足の腱を切り、歩行機能を失わせて、伊集院にも簡単に照準を合わせられるようにする。ただ、斬速が音の速さを超えているので、ゾンビが倒れるまでにラグが生じる。


 真司が通過したことにより、ゾンビの足元がブレたように見えても、ゾンビの腱が切れる音のするまではわずかに数テンポ遅れてしまう。


 そこから倒れるなど、真司からすれば途方もない時間がかかる。

 その間に、ほかのゾンビも同じように腱を切り、その場に倒れ伏せさせ、伊集院に落ち着いて銃を構えさせる。


 ここまですれば、ゾンビも抵抗することできないまま倒すことができるだろう。

 そう思って、コルバルトからブラックに変わる。


 だが―――


 「ガ……ガ……」


 弾を1発消費し、ゾンビを1体仕留めたところで、次に倒れこませたゾンビが起き上がり始めた。

 それにいち早く反応した真司は、伊集院に向かって叫んだ。


 「起き上がりかけじゃないほうを撃て!確実に殺せるほうを!」


 その言葉に伊集院も反射で応える。

 照準を一瞬で、死んだゾンビからまだ倒れているだけのゾンビへと向け、1秒にも満たないまで発砲する。


 弾は見事に頭を貫通し、もう1体のゾンビを仕留めた。

 残りは、起き上がり始めたゾンビだけ。


 「時間経過で治るのか―――にしても早すぎるだろ」

 「また、黄色に……そうだ。もう弾は残ってません。あとは、通常装備のほうしか」

 「十分だ。今までのゾンビの強度を考えれば、最初こそ行けるだろうと思っていたが、俺の銃でも貫けるか怪しいと見た。情報の修正の結果そう出た」

 「では、どうしますか?」

 「お前が発砲して、頭に一瞬だけその通常火器の弾丸を乗せる。威力が残った状態の弾に、俺の一撃を入れる」

 「それは……言葉だけならですが、実行するには―――」

 「わかってる。だが、精密射撃は任せろ。それに失敗したらもう一度やるだけだ。トライアンドエラーでやり続けるのみ。まあ、一発で決めて見せるけどな」


 真司の立てた仮説は一つ。

 ゾンビの再生速度は、破壊された速度に比例するということ。


 高速で破壊すれば、それだけ再生が早くなり、遅ければ再生も遅れが生じる。

 おそらくその判定は、魔術的な何かが絡んでいると思われ、原理の解明そのものは不可能。だが、一瞬の破壊は、再生うんぬんよりも早く、崩壊が始まるようだった。


 もう、彼も避けるばかりではいけない。

 彼自身の手で、人を殺す覚悟を決めなくてはならない。それでも、自身の手で直接触れながら殺すのはまだ覚悟が決まらない。


 だから、まだ射撃で殺す感覚を味合わないようにしようとする。


 だが、その甘えがいけなかった。


 「グガアアアアアア!」

 「なっ……!?」

 「0号!」


 相手の攻撃に真司が対応しきれなかった。

 先ほどの速度とは明らかに違い、圧倒的に早かった。


 無論、コルバルトより速いことはないが、普通の人間の速さを超越したものだった。


 そこで真司は先ほどの自分の判断ミスに気付いた。


 (そうか……!腱を切るのはダメだったか。いや、倒すためになら問題なかった。そこで殺し切れるのならなんの問題もない)

 「0号、大丈夫ですか!」

 「筋肉を鍛えるとき、破壊してから再生するときに強靭になるように……足が先ほどより強化されたか―――まあ、動きがとらえられてないわけじゃない」


 確かに相手の動きは早い。

 普通の人間なら捉えられないレベルだ。四方八方から攻撃が来て、真司はそれを成されるがままにする。


 伊集院はどうにか援護に入ろうとするが、さすがに生身では戦うことができない。


 「問題ない。お前は撃つ準備だけしておけ」

 「は、はい……わかりました」


 真司の言葉を聞き、伊集院は銃を構える。先ほどから警察だというのに言いなりだが、そこは仕方ない。魔物を戦ってきた経験数も力の差も何もかもが劣っているのだから。


 当の真司は攻撃を受けながら相手の出方を読み続ける。そして―――


 「そこっ!」


 そう言いながら真司は真後ろを振り返り射撃する。撃たれたゾンビは、腹部や胸部を連続で撃たれて、後退する。


 「あれが後ろを向くたびに後ろから攻撃するのは少しひねりがなさすぎるな。強くなってもおつむは弱いままか」


 言いながら真司がゾンビにつかみかかる。射撃によって一瞬だけ動きを止めた相手の隙を見逃さずに攻撃を繰り返す。

 もう彼を止めることはできない。


 首を掴み、地面に叩きつけて、そのまま走り出す。

 相手の背中と地面を削りながら前へと走っていき、後方の壁に叩きつけた。


 間髪入れずに、その場に落ちていた鉄筋を使ってゾンビの体を串刺しにする。


 「やっぱりな!強くなったのは、骨であって肉自体はそこまでだな!」

 「ギヤアアアアアアア!?」


 腹部に鉄筋が刺さったことでゾンビが悲鳴を上げるが、それが体を貫通し、地面まで深く突き刺さっていて動くことができない。

 これなら先ほどのように破壊からの再生で強くなることはない。いや、次からは刺すことも難しくなるだろう。ここで仕留めなければ道はない。


 「伊集院!」

 「はい!」


 真司の合図で伊集院が発砲する。

 特殊スーツの装着者に選ばれるだけはあって、完璧な射撃をする。


 弾丸は真っすぐとゾンビの頭を捉えて進み、そのまま直撃する。だが、弾丸は頭に着弾するも頭蓋の中に侵入はできなかった。


 そこに追撃とばかりに、伊集院のところまで後退した真司が持っていた銃をライフルモードに替え、狙いを定めてから発砲した。


 ライフルモードにより一撃の威力が上がった弾丸が進んでいき、まだ勢いの死に切っていない弾丸の上にぶつかった。

 すると、ビリヤードのように伊集院の弾が再度撃ちだされて、ゾンビの頭を貫通した。


 その一撃を最後に、一体のゾンビは殲滅された。

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