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THE PREPAREDNESS TO FIRE

 「うおおおおおお!」


 カメレオンの魔人と言えばいいのだろうか。無論、真司は相手の正体―――加藤が変身した姿であることは知らない。


 しかし、相手が人間であることをわかっている真司は、本気で戦うことができないでいた。


 反して、打倒オリジンを掲げる加藤は、容赦なく真司に殴り掛かっていく。

 オリジンが何なのかであるかは、加藤自身もよくわかっていないのだが、ただ彼らには戦争の火種とだけ伝えられている。


 「お前が!お前がいるから戦いが!」

 「なにを言っている。戦いを仕掛けてきたのは魔界側のはずだ」

 「なにも知らないなんて言い訳を使うつもりか!」

 「なんの……話だよ!」


 真司は相手から振るわれた拳を避けて、その腕を掴んで引き込むようにして、勢いのまま肘鉄をぶち込む。


 それよって、加藤の態勢は大きく崩れ、後ろに尻もちをつく。それを確認した真司は、すぐにゾンビの対処に向かおうとするが、やはりそれを止められてしまう。


 「邪魔すんな!人が死ぬんだぞ!」

 「それは進化の前触れだ!それの邪魔を―――」

 「じゃあ、お前は進化した人間をその目で見たのか!俺は自分で見たもの以外は信じない。ましてや人間の進化なんざ―――あっちゃいけねえんだよ!」

 「どうしてだ!魔界と人界の二つが一つにならなければ、両方の世界が消滅するんだぞ!」


 お互いに言葉の投げかけ合いと殴り合い。

 投げかけ合いというよりも投げつけ合い―――キャッチボールならお互いに打撲痕がつくくらいのものだ。


 それくらい強い言葉の中で放たれた、消滅という言葉。その言葉を真司は青龍に確かめた。


 「今の話は?」

 「そんな事実はない。むしろ魔界と一つになれば、人界は隷属化に置かれ、不要な土地は消滅する」

 「やっぱそうだよな。利用されてるのか―――まあ、正義に燃える者ほど操りやすいことはないってわけか」


 真司の聞いていた通り、たくさんの人が消滅する恐れがある。

 そんなものを許すわけにはいかない。


 ゆえにこそ、彼が折れるわけにはいかないのだが、相手にもその気はないようだった。


 だが、加藤の相手だけをしているわけにもいかない。ほかにもゾンビだっているし、後ろにはそれに対しての戦闘力が著しく低い人間たちがいる。

 いくら武装して、彼を敵視しているとはいえ、守らないわけにもいかない。

 

 「おい、そこのお前!」

 「え、は……ぼ、僕ですか?」

 「そうだ。今、俺はゾンビを相手にできない。だったら、決定打になるのはお前のその銃しかない。なんとかしろ!」

 「わ、わかりました!」


 真司の言葉に伊集院は特殊部隊委員に協力を申し出て、数人に協力してもらえるように取り合った。

 もはや体調が不在となり、未知の敵と相対することにより、統制が効かなくなっていたため、何人かは動けなくなってしまっていたので、フルメンツとはいかなかった。


 だが、それでも特殊装備をもってゾンビの動きを止めつつ、伊集院が狙いを定めるという動きは問題なくできた。


 真司もその姿を見て、大丈夫だと考え、目の前の相手に集中した。

 だが、その油断がいけなかった。


 途中まではうまくいった。そう、ゾンビの吹っ飛ばされた先に、別の部隊員さえいなければ。


 「攻撃中止!早く!早く逃げて!」

 「う、あ……」


 訓練された隊員が動けなくなっていた。

 そこで、伊集院と真司は気付いたのだ。ゾンビに見つめられたものは、微細を恐怖を増幅させることに。増幅にされた恐怖に支配されたものは、逃げるか動けなくなるかの二者択一。今目の前にいる人は、まさに後者。逃げられなくなっていた


 早く逃げるように伊集院も叫ぶ。真司もどうにかそちらに駆け付けられないか加藤を引きはがそうとするも、食い下がってきて、どうにもできない。


 「ガアアアアアア!」

 「ひ、ひいいいい!」


 そして、誰も助けに来ないまま隊員はゾンビに噛まれてしまった。

 その瞬間、隊員は痙攣をおこしながらその場に倒れ伏せ、防弾チョッキなどを破りながらなにかが飛び出してくる。


 「そんな……防弾装備が―――なにが起こって……」

 「まずい!お前ら、早く逃げろ!」


 真司のその声空しく、噛まれた隊員の痙攣が収まり、次の瞬間―――


 「ぐわあああああ!?」


 目にもとまらぬ速さで別の隊員に嚙みついた。

 真司の想像通りの出来事だった。ここはもう、退行戦闘能力のない非戦闘要員は下がってもらうしかない。だが、それよりもゾンビの感染速度が速い。


 だが、伊集院の方も判断は早かった。

 真司―――0号の言葉にいち早く反応し、できるだけ隊員の退避を優先して行っていた。おかげで、新たにゾンビになったのは二人。合計で、相手のゾンビは4人。


 「クソ、やるしかないか!」

 「なにを言って……っ!?」


 真司は大きく後退し、先ほど弾かれた銃を拾い上げる。

 殺す手前まで持っていくことは避けたかったが、仕方がない。


 「あの光景がお前の望む世界なら、俺はお前を討つ。お前と同じ力を持つ者として、な」

 「倒すのは俺だあああ!」


 そう叫びながら突っ込んでくる加藤を見ながら冷静にクリスタルを押し込んだ。そうして突っ込んできた加藤に対して、極至近距離に近づいてきたところで腹部に銃口をあてた。


 「なに!?」

 「冷静さを欠いたな。だから負けるんだよ」


 トリガーを引き、零距離からの射撃。その威力はすさまじく、相手は家屋を貫通しながら吹き飛んでいった。こうなれば、相手が戻ろうとしてこようが関係ない。戻るには時間がかかり過ぎるということだ。


 姿が見えなくなるまでを確認した真司は、すぐに伊集院のもとに向かった。


 「悪かったな。残段数はいくつだ?」

 「4発です……」

 「そうか……試したことがある。とどめはお前に任せる。だが、絶対に頭を狙え」

 「それで倒せるんですか?」

 「確信はない。だが、考えてみればそうだ。奴らは死んでいても動くには神経に命令信号を伝達をしなけらばならない。そうなれば、その発信元を破壊すればいい」

 「つまり脳を―――というわけですね」


 すべて言わずとも察してくれる伊集院に、真司はストレスフリーさを覚えるが、そんな悠長に構えている暇はない。


 「今度こそ一緒に戦いましょう」

 「ああ、今は目の前の敵に集中だ」

 「あ、そうだ。僕は伊集院です。名前を聞いても?」

 「0号でいいだろ。つか、気にする暇あるのか、今」

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