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WILL NOT BE SIDETRACKED IN MY ACTIONS AND DECISIONS

 「0号は……まだ来てないみたいですね」

 『いつまでも彼に頼ってばっかりじゃ駄目よ。急ピッチで用意したから、特殊弾倉もあなたの6発分しかないってこと忘れないでね』

 「はい……でも、まさかリボルバー渡されるとは思ってませんでしたよ」

 『仕方ないじゃない。マガジンにすると、暴発の危険があったから。最低限のリスクが低い方に変えるしかないのよ』


 そう通信しながら伊集院は特殊部隊の行く末を後方でパトカーを陰にしながら見守る。


 ただ、真司と同じように彼も大した期待はしていなかった。

 確かに警察の特殊部隊は強い。単純な戦闘能力だけで言うなら特戦群を除けば、筆頭に出てくるレベルに強いだろう。


 だが、装備は対人間用―――それに、元は警察であるがゆえに武装解除や逮捕を優先とする組織形態のため、どうしても対応しきれないところも考えられる。

 だからと言って、特撰群を出すわけにもいかない。国が、相手の勢力をなんらかの侵略勢力と認めれば話しは変わってくるかもしれないが。


 しかし、それでも装備が合わなければ意味がない。


 今までの戦闘で通常兵器が効果を示した例は少ない。

 消耗状態の敵に通じただけで、それ以上のことがなかったのだ。その時に活躍したのが、彼の上司に当たる渡辺が開発した貫通弾だ。


 量産体制が整っておらず、急ピッチなので、性能も不完全らしいのだが、持たないよりはマシと言われて彼が持っている。


 「―――って、言われても、あっちの部隊が僕の力はいらないって言っちゃってるしなあ。確かにあっちの装備を考えると、突っ込んでも死ぬだけかもしれないけど」


 そう思っていると、あちら側に動きがあった。

 盾を構え、万が一ゾンビに突撃されても大丈夫なように前を固めて、持っていた銃を迷いなく撃った。


 連射されながら弾を受け続けるゾンビは衝撃に合わせて、1歩また1歩と後ろへと後退していく。

 しかし、一向に倒れる様子を見せず、永遠立ち続けるさまには不気味さすら感じる。しかし、それに怯むほど精神の弱い者たちで編成されていることはない。少なくとも、命に危機にあることは覚悟している者たちばかり。


 そのあたりの躊躇のなさと、肝の据わり方は見張るものがあるだろう。

 しかし、もしゾンビが魔物の影響を受けているのだとしたら―――


 「グオオオオオオオオ!!」


 ―――通常兵器はもしかしたら機能しないのかもしれない。

 だが、倒せないながらも退け続ける特殊部隊の作戦は、完璧に遂行できているように思えるのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 誘導に従って、避難場所へと走っていた真司は足を止める。

 わずかずつ避難経路が外れていき、今の彼の周りには人はいない。


 それに応じて、アリスも動きを止めた。


 「行くの……?」

 「ああ、警察だけじゃ対応しきれないだろうからな」

 「あの重装備の人たちに撃たれるかもしれないのよ」

 「わかってる。でも、それでもやらないと。母さんとアリスの明日を守れない」

 「真司の明日は?」


 そう言われて、彼は言い淀んだ。

 確かに、考えたこともなかった。―――いや、考えるのも無駄だと切り捨てていた。


 「わかってる。わかってるけどね。やっぱり私は、あなたと笑って過ごせる―――愛し合える明日がいい」

 「……生きて帰ってくる。明日、デートしよう。映画でもなんでも好きなところに付き合ってやる」

 「っ……!うん、約束だからね!」


 彼女が笑顔になったのを確認して、真司がゾンビが暴れている場所までいこうとする。


 「お、おい!十神!そっちは危ない!早く避難場所に!」


 そう声をかけてきたのは、水泳部の元顧問の長谷川だった。そんな恩師が真司に避難するように言ってくる。さすがに彼も止まらざるを得なかった。


 「ここはもう行くところだっただろ……」

 「長谷川先生……真司の恩師の……」

 「なにしてるんだ、十神―――そっちは危険なやつが暴れてるんだろ!」


 そう言って長谷川は真司の腕を掴んだ。大人として、教え子の安否をちゃんと確保しようとしているのだろう。だが、それは真司にとって邪魔なことでしかない。

 戦いに行くというのに、うまくいかないものだ。


 「放してください。自分で歩けますから」

 「ダメだ。またなにか無理しようとしているんだろ。お前、もうネットで有名人だぞ」

 「は?」


 そう言って長谷川が見せたのは自身のスマホの画面だった。

 そこに写っていたのは、SNSのある投稿。その投稿に添付されていた動画には先ほどの彼の姿が映っていた。


 ゾンビ相手に果敢に立ち向かう様が動画にされており、すでにその呟きは万バズをかましていた。


 「また向かうのか?もう警察が対処に当たってる」

 「だけど、どうせそれもすぐに持たなくなる。もう報道の通り、通常兵器の通用する相手じゃないんだよ」

 「だったら!お前がどうなるんだよ。自分の教え子をむざむざ殺すような真似ができるか!」


 真司の言葉に我慢できなかったのか、長谷川は激高し声を荒げる。

 その気持ちがわからないわけではない。アリスだって危険なことはしてほしくない。できることなら全部忘れて逃げ出して、世界の果てで愛し合いたいとすら思っている。


 だが、長谷川とアリスの決定的な違いは、彼の正体を―――いや、彼の第二の姿を知っているか否か。


 だからこそアリスは真司の腕を掴む長谷川の腕に手を置いた。


 「君は……十神の彼女の―――」

 「アリスです。言いたいことはわかります。でも、真司の目を声を見て聞いてあげてください。あなたは今までの彼は見切り発車をするようなことをする人だったんですか?」

 「それは……」

 「行かせてあげてください。真司はもう、自分でものを決められます」


 そう言われて長谷川は手を放すしかなかった。真司はというと、アリスの気持ちが少し現れたような気がして、本当に少しだけ口角が上がっていた。


 「ありがとうなアリス。それと、先生―――心配しなくても大丈夫ですよ。あ、あと、このこと誰にも言わないでくださいね」

 「誰にも言わない……?もう動画はSNSで拡散されてて」


 長谷川が言い終わる前に真司は走り出し、クリスタルを押し込む。

 その瞬間、彼の姿はテレビでよく見る姿に変化した。


 「は……?」


 真司が0号に変身した。その驚きの事実に長谷川は、現実を受け入れきれず唖然とした。

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