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THE MURDER OF THE MISTAKE OF THE BEGINNING

 (いた……!)


 水中に飛び込んで、子供の方を見たら彼はすぐに見つけた。

 水中から子供の足を引っ張り引きずり込もうとしているなにかが。魔物にも見えたが、異変ともとれる謎の気配が警鐘を鳴らしていた。


 警戒はするべき。だが、目の前で犠牲になりそうな子供を前に止まれるはずなどなかった。


 水中であろうともコルバルトの超高速は使える。それを使用して、目にもとまらぬ速さで敵の懐に飛び込んでいく。

 パンチでもなんでもない。ただ、肘を前に出して無理やり突進するような形で飛び込み、水中で勢いがすぐに死ぬとはいえ、5メートルでも話せたのは大きいだろう。


 魔物が子供から離れたのを確認した瞬間、真司はそのまま浮上し、その勢いを使って海岸まで飛んだ。


 ズサアッと体全体を使って、子供の下敷きになるように着地する。


 間髪入れずに真司は立ち上がり、メイズに体を変化させると、近くに立ててあったパラソルを手に取り―――


 「あ、おいっ!」


 バキッ!!


 千切れない程度にへし折る。

 いい感じに曲がったパラソルを持ち替えて、自身の武器―――銃の形に変化させる。


 変化させた後、海に向けて銃を向け、先ほど魔物がいた位置に照準を向けた。

 次の瞬間、数発射出し、完璧に魔物を海面からはじき出してしまった。


 「ギシャアアア!」

 「きゃあああああああ!?」


 魔物が姿を現した瞬間、一人の女性の悲鳴を皮切りに現場がパニックに包まれた。

 その混乱の中に、彼はアリスと自身の母を見つける。


 「ここで負けられない。あっちに行くのはもってのほかだな」

 「ああ―――だが、警戒はしろ。何かがおかしい」

 「そうだな。あからさまに魔力が微弱……というより、魔力が最低限量しかない。あれじゃあ、人間って言われた方が納得がいくレベルだ」


 真司の言う通り、魔物の魔力はかなり微弱だった。

 大きな存在である青龍の陰に隠れてしまうほどに。青龍も相当注意しなければ、真司に言われなければ見逃していただろう。


 それほど特異な存在だ。こんなものは青龍の知る限り、魔界には存在しない。

 だが、魔力を持つことによって行使可能な力は使えているようだった。


 「青龍……行くぞ」

 「あ、ああ……」


 真司はアリスたちを巻き込みたくないがために、速射で対応する。

 普段では出さないような球数を使い、相手を圧倒したようにも見える。


 しかし、想定外の画が目の前に広げられた。


 それは、射撃によって起きた砂煙が晴れたときに露わになった。


 「グオオオオ!!」

 「なっ!?―――ばっか……お前イカれてんのか!」


 さすがの真司も冷静さを欠いた。

 伊集院たちが対応している魔物のように念力で止めていたのか?―――いや、そうならどれほどよかっただろう。


 それもある。念力で止められていたのなら、それで終わっていた。真司もそれほど驚かない。魔物ならやりかねないから。

 だが、弾丸の止まっている位置がおかしかった。


 念力によって止められていた銃弾は、魔物の手前ではなく―――先ほど助けた子供の顔の目の前で止まっていた。

 間違えて子供がいるのに撃ったのか?それはない。なら、どうして?


 それを想いながら先ほど子供の名前を叫んでいた母親の方を見る。

 すると、なにかを驚いたような顔をしながら腰が砕けてその場に座り込んでいた。


 その驚きの映像に付近にいた人は全員足を止めて、食い入るように見ていた。

 見世物ではないというのに……


 「どういうつもりだ」

 「……」


 真司が問いかけるも、子供はふるふると首を振るだけで、なにも答えない。

 その状況に違和感を覚えながらも、真司はもう一度銃を構える。すると、子どもは大きく手を広げて、魔物を庇うように、立ち塞がる。


 そのふざけた子供の立ち姿にいら立ちを押さえきれないのか、真司もついに動いた。


 「もういい。子供に当てなければ問題ない」

 「ああ、おそらく洗脳の類だろうな」


 ズガァン!


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 「グルル……」


 病院に段々と近づいていくデモニアに向かって伊集院は飛び込んだ。

 ゆっくりとゾンビのように前進する存在に、それをするのは容易なことだった。


 逃がさないとばかりに、腕だけでなく、足も相手の腰に回し、重心を後ろ側に向けて倒す。


 「逃がしませんよ!」

 『いいわあ、伊集院君!やっぱりあなたを装着者に選んだのは間違いじゃなかったわ!』


 奮闘する伊集院と推しが来てくれたの如く興奮する渡辺。

 DBTは絶好調ともいえる空気感だった。


 倒れこんだところに、伊集院は携行銃器を発射し、超至近距離から直撃させてダメージを与える。これなら報告の通りの念力の影響で弾が当たらないことはないだろう。


 その読み通り、的確にダメージを与えることに成功したが、やはり念力という力は未知な部分が多く、体を見えない力で持ち上げられて、地面に叩きつけられてしまう。


 「かはっ!?」

 『伊集院君!?―――なーんて、まだ動けるわよね』

 「はい!まだまだやれます!」

 『いいわね!ゴミのようなスーツでも、まだまだ耐久値はある。多少の無理ならきくわよ!』

 「わかりました!少し無理やり動いてみます!」


 そう言って伊集院は左手に銃を持ち、右手に剣を持って動き始める。正直、スーツを着用して中々に重いが、渡辺の言う無理とはそういうこと。―――この戦闘でスーツを破壊しても問題ない、ということだ。


 伊集院は、銃を乱射しながら前に突進していく。

 念力を使って魔物は弾を止めていくが、どんどんと伊集院が近くに行く。


 ここは伊集院の読み勝ち。

 念力の発動中に、2個目の念力を発動できない。銃に対してキャパを使わせれば、彼にこの理不尽な力が当たらないということだ。


 「うおお!おらあっ!!」


 雄たけびとともに念で止められた銃弾ごと斬り伏せる。完璧な致命の一撃となったのか、魔物は音もなくその場に倒れ伏せる。


 「はぁ……はぁ……思ったよりきついですね……」

 『よくやったわ伊集院君。やっぱり装着者はあなたでないと』

 「……ありがとうございます」


 「う、うぅ……」

 「……っ!?」

 『どうしたの?』

 「渡辺さん……このデモニア―――いや……」


 伊集院は信じられないものを見ているかのように後ずさりしながら渡辺に伝える。

 その事実は余りにも、残酷すぎるものだった。


 「今倒したのは……人間です」

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