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転校生がプレゼントをくれたぞ!

 「悪いわね、ちょっと取り乱しちゃったわ」

 「別にかまわない」


 真司に抱き着いていたアリスは、しばらくするとその場から離れる。


 「でも、本当に助けてくれてありがとうね」

 「別にお前じゃなくても助けてたよ」

 「ふふ、不愛想なだけで優しいのね」

 「……うるせえよ」


 真司のことをおちょくった彼女は満足したのか、彼の制服の裾をつかんで歩き出そうとする。急な出来事に、真司も困惑するがだからと言って流されるわけでもない。


 引っ張られる感覚に対して彼も対抗するように反対側に引っ張る。


 「……帰るのよ?なんで抵抗するのかしら?」

 「いや、なんでお前と帰らなきゃいけねえんだよ」

 「あら?いいじゃない。唯一あなたの秘密を知っている存在。あなたの隣にいて寂しい思いなんてさせないわよ?」

 「うるせえ。俺は一人で十分だ」

 「―――はい、嘘」


 そう彼女は真司の言葉を両断して見せた。

 彼女の言葉には言ってんの疑いもない、確信の言葉―――それゆえに真司は怪訝な顔をするしかなかった。


 だが、その言葉は青龍にとって思うところがあるのか、特に口にはしてこない。


 「嘘ってなんだ?ついてるつもりはないぞ?」

 「うん、その本音を全てうそで隠そうとするのをやめた方がいいわね―――私にはわかるのよ。嘘の色が」

 「色?」

 「私は昔から音の色がわかる。―――もちろん、あなたの声が黄色とか言いたいわけじゃない。あくまで感覚の話。だからね、あなたの今の言葉、嘘の色がする」

 「……」


 ―――面倒くさい


 直感的にそう感じた真司。

 嘘のつけない相手。さすがにこれは人生で初めてのことだ。


 「私ね、絶対音感だーって言われてきたから、たぶんそれだと思うんだけど」


 (青龍……)

 『なんだ?』

 (こいつと契約している魔物はいるか?)


 アリスの言葉を聞いた真司は、すぐさま青龍に質問する。

 彼女の言葉から、彼は絶対音感の類ではなく魔物との契約による能力の発現だと踏んだからだ。しかし、彼女は契約していない。ゆえに青龍もその意見には同意できるわけもなく。


 『魔物とは契約していない。その少女は、我らとは違い、天性の才能―――つまり自分の力だけでお前の力を見破ったのだ』

 (だとするなら厄介だな)

 『なんだ、消すのか?』

 (馬鹿か)


 「どうしたの?」

 「いいや」

 「ふーん……ほら、一緒に帰りましょ。恩人の話―――もっと聞きたいわ」

 「別に話すほどの思い出を作ってないぞ?」

 「いいのよ。私がそうしたいだけなの」


 そう言うと彼女は今度こそ真司の手を引いて歩き出す。

 アリスは、それからも手を放すことなく―――手を繋いだまま学校を出ていくのだった。


 「え、真司……?」


 たまたま資材を取りに来ていた水泳部のマネージャーがいるとも知らずに。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 「ふわあ……!真司!あそこによるわよ!」

 「いいけど、その前に手を放してくれないか?」

 「いやよ、どうせ逃げる気でしょ?」

 「逃げないから……」

 「ふーん……やだ」

 「なんでだよ……」

 「いいじゃない。あなたもこんな美人な私と手を繋げてラッキーでしょ?」

 「……」


 そう言われて真司は黙り込んだ。

 手を繋いで嬉しい。―――そう言われて、幼馴染の美穂の顔が浮かんでしまったからだ。今はアリスが手を取ってくれている。

 それなのに……


 申し訳なさからくるもので、彼は黙ってしまう。

 そんな空気も見て見ぬふりをしてアリスは貴金属店に入っていった。


 高そうな商品が並ぶ中、彼女は高そうなペアのペンダントを手に取る。


 「店員さん、これを頂戴」

 「わかりました」

 「ちょっと待て―――俺につけろとか言わないよな?」

 「はあ?ここにきてそれ言う?当たり前でしょ?」

 「いや、当たり前じゃねえだろ。こんな高価なもん」

 「いいのよ。私が出すんだから」

 「両親の金だろ?」

 「許可はもらってるわ。それに貴金属は一生もの。これから先大事にしていればいいのよ」

 「いや、そもそもなんで俺がつけなきゃいけねえのか……」


 そう言いかけたが、彼女はすでに支払いを済ませて、商品を受け取ってしまっている。

 仕方がないが、ここは真司が折れるしかないだろう。


 しかし、そう簡単にうけいれるわけにもいかない。


 「はい、首からかけて」

 「なんでだよ。そういうのは恋人同士でつけろよ」

 「いいのよ。イッツアメリカンシップ!」

 「聞いたことねえよ」

 「早くつけなさい。異性へのプレゼントは恥ずかしいのよ」

 「急に乙女になるなよ……ったく、調子狂うな」


 悪態をつきながらもペンダントを彼は受け取った。人の好意を無下にできない。それが彼にとっての良いところだが、今回はそれが裏目に出たのかもしれない。


 プレゼントしたペンダントを付けたのを見た彼女は、満足し、自身もそれを首にかける。


 「こんな高価なもの……返せる保証なんてないぞ」

 「いいのよ。あなたは私に奪われるはずだった命を救ってくれた。なにものも自分の命には代えられないのよ」

 「ふん、名言みたいに……」

 「あら?そう言ったつもりよ?」

 「ほんと、お前と出会って間もないけど、すぐに調子が崩れるってことだけはわかったわ」

 「誉め言葉として受け取っておくわ」

 「お前、すげえよ」


 そうしてモールを出た二人だが、突然アリスが手を放して前に走り出す。

 何事かと思った真司は、一応彼女を追いかける。


 そうしてついたのは、帰り道にある小さい公園。

 そこの滑り台に乗って、アリスは真司に話しかける。


 「あなた、本当は一人でいるのが嫌でしょ!」

 「なにを知った風な!」

 「でも、あなたは一人でいようとする―――誰も巻き込みたくないから!違う?」

 「……そうだよ!」

 「なら、それを知ってる私がいてあげるわ!これからは、あなたは一人じゃない!その証明が、私たちのおそろいのネックレス!私がいなくなっても、二本一対のこれがある限り、私たちのきずなが途切れることはないわ!」

 「だったら、もうちょっと安いの買え!さすがに高すぎてつけずらいわ!」


 叫ぶほどではないが、人がいないことをいいことに少しだけ大きな声で話す。

 まあ、人に見られても、状況的になにかの芝居の練習に見られるだろうから問題はないのだが。


 ちなみに、アリスのプレゼントしたペンダント―――2ケタ万円を超えている。


 「値段なんていいじゃない!大事なのは心よ!」

 「それは安いのあげたときにいうやつだ!」

 「真司、今日から私たちは友達以上恋人未満の関係よ!」

 「なんだその意味わかんねえ関係は!―――本当、バカだよ……」

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― 新着の感想 ―
[一言] う〜ん、これはヒロインだわ
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