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TOO EARLY TO DECIDE

 「では皆さん、ここで現場の検証を行ってから―――」

 『南条君……?どうしたの?』

 「いえ、なにか景色がぐらついたような……?―――気のせいです。私もすぐにそちらに戻ります」


 ズガァッ!


 南条がなにかの異変を察知したものの、大したことないと考え、現場を立ち去ろうとした瞬間、突然後ろから殴られたような感覚に襲われる。


 「ガハッ!?」

 『南条君!?状況を教えて!』

 「わかりません。突然、背後から攻撃されたのですが、後ろには誰も……」

 『見えない敵……新手のデモニア?見えなくても、そいつが生物ならサーモカメラに引っかかるはずよ!』

 「わかりました」


 渡辺の冷静な判断に応答して、南条は自身の視覚カメラをサーモカメラに切り替え―――られなかった。


 ガシャン!


 なにかを顔を殴打された感覚。その瞬間、左目を担当していたカメラが破損する。

 サーモカメラの変更機構は左側についている。相手が狙ったのか、たまたまなのかはわからないが、厄介なことにサーモカメラに切り替えられない。


 「渡辺さん、右側機構にサーモカメラは?」

 『ないわ。相手はこのことに気付いたの……?いや、今はそんなことどうでもいい。南条君、前は見えてる?』

 「ええ、かろうじて右側は生きているので視野が半分ほどになってしまっていますが、まなんとかなってます」


 彼はそう言うと立ち上がる。

 損傷率はそこまでじゃない。ただ、先ほどの一撃目の攻撃で、背中に搭載されていたバッテリーに異常が生じたらしく、少々調子が悪いようだった。


 『バッテリー駆動時間、残り30分と言ったところかしら』

 「問題ありません。優秀な私が来ているんです。ここにいる人たちは誰も死なせません」


 そう強気に出ては見るものの、南条にとって見えないことは脅威だ。

 唯一の見る手段も奪われた。


 そんな彼がなにをできるわけでもなく―――


 ゴン!


 金属をえぐるような鈍い音がまた響く。装着者に衝撃は行くが、ダメージは来ない。だが、そこに問題があった。


 「はぁはぁ……」

 『南条君……?緊張状態に入ってからそんなに時間は経ってないわよ?』

 「はぁはぁ……」

 『南条君!前を見なさい!敵はいつ来るのか―――っ!?』


 そこで渡辺の声は止まる。まるで来ないと思っていた人物が来たかのように。それとも、来てほしいと思ったときに来てくれた安堵の驚きか。いずれかはわからないが、彼女は目を見開いて目の前のモニターに映し出される映像を見る。


 そしてそれは南条の目にも映っていた。

 そう、ここ最近いつもテレビに映って話題をかっさらい、今や知らない人はいない渦中の人物。


 その人物が見えないなにかと組み手を取るようにしている姿が目の前にあった。


 「あなたは……0号!?」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 真司は魔物が撃破されたのを確認してから、帰る気満々だった。しかし、そうも言ってられない状況になってしまう。


 突然装着者が攻撃を受け始めた。それだけならもう少し様子を見たが、問題は敵の姿が見えなかったこと。明らかに様子がおかしいうえに、装着者の方が次々と傷ついていくので、彼も黙って見ているのはやめ、敵と警察の間、かはわからないが、そこに立った。


 「あなたは、0号!?」

 「下がれ。そこまで損傷していたら、戦いにならない」

 「わ、わかりました……」


 真司の静かな気迫に気圧され、装着者―――南条は後ろに下がる。


 そうすると、標的が彼に移ったのか見えないところからの打撃が彼に集中する。


 「ぐっ……!?」

 「大丈夫か?」

 「問題ない。そこまで重くない―――というより、軽すぎるな」

 「そうか……なら心配する必要はなさそうだな」


 真司に加えられた打撃は非常に軽かった。ダメージは通るのだろうが、質が違う。格闘と暴力に天と地ほどの差があるように、真司の加える攻撃と今受けた見えない攻撃は似て非なる物。


 「見えねえけどいるんだろ?よく聞けよ。次はねえぞ」


 返事はない。だが、真司はすぐに体を後ろに向け―――


 ガッ!


 ―――受け身の姿勢で空気を巻き込むように抱え込むと、彼はなにかを掴んだ。

 その腕を持ったまま自身の体を回転させながら、見えない体を巻き込み、手前側に引き寄せる。


 どうやら消えていても、実体―――相手の肉体が消えているわけではないようで、つかむことは容易にできた。ただ、一つ問題がある。


 ここまで密着していたら、打撃も用意に撃てないうえに目標物までの射程も極端に短く、速度の乗り切らない拳ではダメージは期待できない。


 それを瞬時に把握した彼はすぐさま体をねじり、見えない相手を大外刈りに持ち込む。

 遠心力で振り上げた瞬間、つかんでいた肉は一気に軽くなり、そのまま地面に叩きつけられ、見えなかったそれが姿を現す。


 そいつは緑色の肌に緑色の鎧をまとっていた。そう、その姿は真司の変身した姿に酷似していた。


 その事実に真司は一瞬だけ驚いたが、すぐに冷静になるためにいったん距離を置いた。


 「青龍……」

 「ああ、奴は契約者―――人間だ」

 「マジか……変身者のことはわかるか?」

 「そこまではわからん。叩きのめして変身解除させたいが……」

 「ここじゃマズい。俺たちみたいなのが、人間だといううわさはあれど、それは事実として認められてはいない。なのに、ここで人が変身するという事実がバレたら、俺たちもどう探られるかがわからない」

 「わかった。ここは、一旦退けさせるだけにする」

 「理解が早くて助かるよ」


 意見が固まった二人はすぐに態勢を立て直す。

 そして目の前の相手は苦しみながらも立ち上がり、真司に質問をする。


 「なんで、わかった……見えなかったはずじゃ?」

 「見えねえからって負けるのか?敗者はいつだって決めつけるのが早すぎるんだ」

 「だけど、あの状況でなぜ冷静に俺を投げられた!」

 「見えてたよ。目には見えなくても、そこになにかがいるということはわかるもの。ただ、少し焦ったかな。なぜか今は聞こえる呼吸音が聞こえなかったからな。でも、そこに実体があるのなら地面を踏みしめるだろう?拳を振るとき、空気を切るだろう?俺から見えなくなろうなんざ、甘すぎる」


 「……!?クソ、聞いてたより化け物じゃないか」

 『それが四神の力を持った契約者だ。気を抜くなよ』

 「わかってる!」

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