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THE POSSIBILITY

 『さっきも言った通り、デモニアとの戦闘は状況を冷静に判断して、武器を適切に扱うことが大切よ』

 「わかっていますよ。それより、被害の状況を教えてください」


 南条のその言葉を聞いて、渡辺はため息を隠しながら説明する。


 『今回出現しているのは、人間にシルエットが酷似しているクワガタ型とでも言うのかしらね?今までの傾向から見て、こういった虫型のデモニアにはなにか特別な能力と言ったものは確認されていないわ。でも、だからと言って弱いわけじゃないわよ』

 「わかっています。だけど、ちゃんと見ていてくださいね。この私のほうが伊集院さんなんかよりよっぽど優秀だということを見せてあげます」


 そう言うと、スーツを纏った南条は混乱の渦中に飛び込んでいった。


 現場では先に到着していた警官たちが応戦していた。そこに南条が現れたということで、現場の空気も一段階程度安堵の兆しが見えた。


 彼は警察の中では優秀と言われている。そんな彼が来れば、現場の解決が少しでも早まるものだと安心してしまうのは当たり前ともいえる。


 「皆さん、下がってください」


 彼がそう言ってほかの警察を後ろに下げると、躊躇なく専用の武器を発砲した。

 火花を散らせて飛んでいった弾は寸分の狂いもなく相手の頭部を捉える。


 「グガァッ!?」

 「ふんっ……!」


 目の前のデモニアにも効いているのか、おもむろに相手がのけぞる。

 それを見ていけると確信した南条は畳みかける。


 それから何度も発砲し、相手の体力を削りながら距離を取り続ける。


 今回の敵は明らかに接近戦が得意なように見える。

 そうなれば、距離を取りながら安全圏から撃つのは合理的ともいえる。


 しかし、それだけでデモニアを倒せるのであれば苦労はしない。


 デモニア用に作られているとはいえ、銃では火力が足りないのだ。

 だが、それを理解している南条はすぐに出動用のバイクから剣を取り出す。


 『申請を受理。対特殊生命体生体装甲貫通剣、セキュリティロック解除―――なによ、この武器……』

 「名前の通り、デモニアのサンプルから装甲を超えるだけの威力を持った剣ですよ」

 『ネーミングどうにかならないのかしら?あなたが配属されて追加された武器、全部頭を抱えたくなる名前をしてるわ』

 「それは、上の方に言ってください。私は名付け親ではないので」

 『もうちょっと面白い回答はないのかしら?』

 「……?渡辺さんはそういうのを考える方なのですか?」

 『はあ……いいわ。目の前からくるわよ』


 渡辺の言葉に、南条の意識も目の前に向く。すると、先ほどの射撃を受けて後退していたデモニアがこちらに向かってきていた。

 しかし、彼が焦ることはなく、冷静に敵の拳をよけながらすれ違いざまに刃を入れた。


 それだけでは相手の装甲を超えることはできないが、柄の部分についているトリガーを押した瞬間刃が高速振動を始め、ズバァッとデモニアの腹を斬った。威力は十分。確実なダメージが入っている。両断はできていないものの、人間は作ったものにしては上出来だった。


 「渡辺さん、解除お願いします」

 『えーっと、スーツのエネルギーを剣の刃のほうに集中させるのよね?エネルギー装填開始―――って、3分!?』

 「たしかに、高出力のもの―――とは聞いていましたからね。3分耐えればいいんですね?」

 『そういうことになるわ……ったく、私ならそんな時間すら作らないのに……』

 「ん……?なんですか?」

 『なんでもないわ。じゃあ、これから最後の3分頑張りなさい』


 南条はそう言われて、デモニアに向き直る。見れば、相手の消耗は激しい。腹を斬られ、頭部を何度も撃たれて。それだけの攻撃を受けてなお立っているから化け物なのだ、だが、それも今倒せそうだ。


 「残り3分―――いや、2分30秒程度ですか。この私なら、なんの問題もありませんね」


 そう言うと、剣を地面に刺して銃を取り出した。


 なんども発砲し、なんども着弾する。

 地面に刺さった剣を触り続けながら、敵との距離を取りつつ射撃する。


 スーツに内蔵されたエネルギーから剣に移動させるのでどこかしら触れていなければならないし、待機時間を安全に切り抜けなければならない。そうなると、これが合理的なやり方だ。


 『3……2……1……装填終了。行っていいわよ』

 「了解しました」


 渡辺の声を聞いて、南条は相手の腹部に刃を入れた。すると、刃はなんの抵抗もなく肉の中に沈んでいき、相手の胴を真っ二つにし、爆散させた。


 初めてのDBT単独の勝利だった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 「勝ったな……」

 「そうだな。中身の人間が違うみたいだったけどな」

 「あれは真司の警戒していた行き過ぎた技術というものではないのか?」

 「まあ、そうだな。あんなものが人間相手に使われたらっていいたいが、結局あれは一撃で数人が殺せるか程度の代物だ。俺が危惧しているのは、核と同等、またはそれ以上の兵器が登場することだ。あんな武器、まだ可愛い方だ。それより、おかしくねえか?」

 「なにがだ?」


 南条の戦いを真司は警察たちの目の届かない場所から見ていた。

 南条がピンチになるのであれば、彼も出るつもりだったが、必要ないようだった。


 しかし、その戦闘で気になることがあった。


 「下級の魔物とはいえ、門が開かなかった」

 「―――そう言えばそうだな」

 「今までの戦闘で、直近の魔物は魔界の門が開くか崩壊するか。なにかしらがあった。なのに、今回はなかった。これはただの偶然とみるべきか?」

 「いや、もしかしたらその予感は正しいかもしれんな」


 青龍と真司の会話に突然玄武も入ってくる。


 「やっぱり偶然じゃないのか?」

 「そうとは言い切れないが、魔物がピンチになったというのに、奥の手を使わない理由がない。しかもそれが戦力を増強する最新技術ならなおさらだ。無論、あの魔物が門を開きたがらなかっただけかもしれないが」

 「もしかしたら、あるのかもしれないな」

 「ああ、そうだな」


 彼らの思う一つの可能性。それは―――

 真司たちは強い。だからこそ、エルダー級とも渡り合える。しかし、人間たちは弱い。セクト級すらも脅威とみなす。

 その弱者と強者の違いが、結果に影響が出た可能性も考えられる。


 ―――人間が撃破した魔物は門を開くことができないかもしれない。

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