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THE AFTER DAY

 事後処理は早く済んだ。

 今までは青龍が一人―――いや、一匹で済ませていた作業を、今回からは玄武と青龍の二匹での作業になったからだ。


 あれから数週間、真司たちの生活は夏休みに突入した。


 現在アリスは出張からとんぼ返りしてきた父とともに、家族団欒を謳歌している。


 そのおかげで真司は暇なのだが、彼の部屋を見てみると、どうにもそうは言えないようで……


 「それで、やっぱ四神ししんていうからには、あと二匹……?二体?いるわけだな?」

 『ああ、我と青龍の二人以外に―――』

 「たぶんだけど、白虎と朱雀だろう?」

 『その通りだ。そして、我はこの時間―――魔界の人界侵攻が始まる時間軸の過去へと行き、真司、お前に過去へと立ち戻り、最初の想いを今一度噛みしめさせた』

 「それのなんの意味が?」

 『単純に我らの力は論理や言葉で説明がつくものではない。ただ、それがなくても構わないというわけではないが、トリガーはやはり、感情も大きくかかわってくる』

 「だからこそ、俺の感情を揺さぶることを?」

 『ああ。しかし、まさかエルダー級を一瞬で屠るほどの力を解き放つとは思っていなかった。やはり、青龍の声に応じた器なだけはあるというのか』

 「器……?」

 『魔物の等級が高くなればなるほど、契約できる人間は絞られる。我ら四神は、魔王の次に強き存在。当然、契約できる人間もそう多くは現れない。そんな中のお前だ。よほど強力な素質を持っているのかもな』


 そんな言葉に、真司は期待してしまう。無論、それは戦士真司ではなく、ただの男子としてのロマンがだ。自分に特別な何かがあると言われれば、少なからずドキッとするだろう。


 しかし、ならばと彼には聞きたいことができた。


 「青龍と玄武はよくわかった。でも、ほかの四神は?どこにいるんだ?」

 『それはわからない。我ら四体は血盟の存在。記憶も力も四人が揃って、初めて全開になる。現に青龍が我らの記憶を持っていなかったのがその証拠だ―――いや、自分以外に仲間がいることは覚えていたから、本当に我らの名前から、それに寄与する記憶がなかったのだろうな』

 「つまり、どこにいるかわからないやつを、あと二体仲間にすれば、魔界の侵攻に真正面から叩ける力が手に入るんだな?」

 『ああ―――おそらくだがな』


 それを聞いて、真司の気持ちが軽くなる。

 別に今まで全く戦えなかったわけではないが、最近は魔界側の不確定要素が増えてきた。


 エルダー級を筆頭に、魔界の門の出現。そして崩壊。

 魔物が強くなる事象が多発している。そのせいで、真司の対応も遅れていたし、さらなる強化が見込めるならかなりありがたい。


 だが、そこで忘れてはいけないのは真司の体。


 『で、あれからの経過はどうだ?』

 「ようやく、魔力の存在を掴めるようにはなった。今までは感覚的なものだったけど、これでより確実に魔物の気配に気づける」


 真司の魔物化。バーストの発動で玄武の力を最大限まで引き出す代わりに、真司の体に魔力が漲るようになる。その弊害で、バーストに変身中、その時間内だけでだが、真司の体は魔力に適応した体。つまり、魔物の体に変わっていく。


 ただの一度では大した問題ではないが、これから現れるであろう敵や幹部クラスの強敵。未知との遭遇。それらを考えたら、おそらく真司の体の半分は魔物化するのはほぼ確実だろう。


 そしておその影響か、魔物化が進行していないはずの今の真司の体は魔力を帯びていた。青龍たちが魔術を行使するように扱うには、彼の才能が致命的に足りないが、超能力でいう「サイコキネシス」程度の芸当はできるようになっている。


 「もう大丈夫。今更化け物になるくらい。だって、社会に適合できないように見えている俺は、健常者にとって化け物だろうが」

 『お前が気にしていないのなら、我から言うことはない。あ、あと一つ。お前にいいことを伝えておいてやろう』

 「いいこと?」

 『お前の体は魔物化が進んでいるが、お前の魂や遺伝子の根本に魔物の因子が侵入するだけで、お前のそれが人間のものという事実は変わらない』

 「なにがいいたい?」

 『つまり、今のお前の恋人と子をなすことは可能だぞ』

 「バカ……そういうのじゃねえよ」


 そう言って真司は玄武の言葉を否定する。

 確かにアリスとそういう空気になったことも、アリスから求められたことがないと言えば嘘になる。


 しかし、彼の心の奥底にあるのは彼女の将来の幸せを願う心だ。

 そのためなら、自身が童貞で死ぬことなど怖くはない。


 『人間とは愛し合う者同士で子を成すのではないのか?』

 「それはそうだけど、人間って言うのはそういうところに厄介さを持ち込むもんなんだよ」

 『やはり、今も昔も面倒なものだな、人間というものは』

 「それで、どんくらい前の世界にいたんだ?」

 『うむ……時代の区分がわからんから何とも言えんが、頭頂部ハゲが刀を持っているばかりの世の中だったな』

 「戦国じゃん……」

 『その時代にも、我の存在に気付く変なやつがいたものだがな』

 「へー、じゃあもしかしたら歴史の教科書に載っていたのかもしんないのか」

 『なにがだ?』

 「人界と魔界の戦いが」


 そう冗談を真司は言う。

 そのことは玄武でもわかったのか、ハハハと笑う。


 『それは人界が勝った未来じゃないとな!』

 「ああ、だから俺も未来の教科書に載るつもりだ」

 『そうだな。そんな未来がみれると良いな』


 なんだかんだ真司と玄武の気はあった。

 まあ、ともに世界を守る中だ。志も同じとなれば、これくらいのことは造作もないというわけだ。だが、彼の中に玄武がいるということはそれはそれで問題があるわけで……


 『ふわ……なんだ?なにを話していたのだ?』

 『青龍、今起きたのか?人間には「早起きは三文の徳」という言葉がある。早起きはするものだぞ』

 『我は少女の手当てをした上に、町の修復―――果てにはお前のせいでボロボロだった真司を治したのだぞ!少しは休ませんか!』

 『なにを!我だって、後ろの二つはやっていたし!真司とともにアピスを倒した!』

 『だからなんだ!その前には我が―――!』

 「だーっ、もうっ!」


 二人の意識が真司の中で漫才を始める。しかも厄介なことに、どちらも一人称が「我」。彼は頭がおかしくなってしまいそうだった。


 そんな中、彼の部屋を訪ねる者もいる。


 バァン!


 「やあやあ!私がやってきたわよ!ほら、ぎゅっとしなさい!」

 「お前たち黙れってんだよ!―――あっ……」


 運悪く、タイミング悪く。真司が突然やってきたアリスに罵声を浴びせているように見えてしまう。

 この場の空気が凍り付いたのは言うまでもない。

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