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THE SWORD

 気分は上々。力も全身から漲ってくる。

 彼は新しい力に身を沈ませ、目の前のアピスに集中する。


 「体は持つか?」

 「まあなんとかって感じだ。クリムゾンの強みは、力と防御力だろう?そんな小さなこと気にするものじゃないさ」

 「そうか」


 突然毅然とした余裕の雰囲気になった真司を見て、相手のアピスは少々気圧される。

 だが、エルダー級の魔物が人間ごときに気圧されたとあっては話にならないとばかりに、攻撃を放ってきた。


 ドン!ドン!ドン!


 と、大きな音を連続で放ちながら真司の胸元に命中し、あたり一面を黒煙に染め上げる。

 煙に包まれた真司は一切見えなくなり、それを目の前で見ていた青龍は息を呑んだ。さすがに今までの真司では耐えることができなかった攻撃。今回のそれで彼が死んでしまうかもしれないとも考えた。


 だが―――


 「なんだ、こんなものか……」


 ザッザッと静かに砂を踏みしめる音があたりに響く。


 「なっ!?馬鹿な!数個で町を半壊させるほどの威力だぞ!?」

 「だからなんだ。俺には通じなかった―――ほら、次の手を考えろよ。俺の手がお前を捕まえちまうぞ」


 煙の中から出てきた真司は無傷だった。

 そして、彼の言う通り、こうなった以上、アピスのタイムリミットは真司につかまるまで。つかまった瞬間に、彼に殺される。


 そのことは真司が宣告し、されなくともアピスも頭で理解している。


 「クソッ!なんなのだ!青龍は外にいる。なら、お前は誰なんだ!」

 「その質問答える必要あるか?」

 「そうか……ほかの裏切者か!人間に与するなど……貴様らそれでも魔物か!あの雪辱を―――侵攻大戦を生き抜いた魔物なのか!」

 「聞かれてるぞ、玄武」

 「ああ……我らは確かにあの大戦を生き延び、今まで生きてきた魔王を除いた唯一の4個体と言ってもいいだろう。だが、我らの心は今の魔王にはない。ましてや、人界に侵攻するなど、愚かなり」

 「貴様あああああ!」


 玄武の言葉が逆鱗に触れたのか、アピスはもう真司であろうがなかろうがお構いなしに攻撃を始める。


 「ああああああああ!」


 四方八方に飛び散ったその爆撃は周りの建物を破壊していく。だが、全方位に爆弾を投げれば投げるほど、真司たちへ当たる可能性は限りなく落ちる。


 ただアピスに対してまっすぐ進むだけの真司であるが、爆撃の合間を縫うように歩くような形になる。そして、敵の爆撃を受けることがなくなり、圧倒的に早く動けるようになってしまう。


 そして、ついに彼の手がアピスに届く。


 ガッと相手の首を掴むと、彼はアピスを宙につるした。


 「ぐっ……」

 「言い残すことは?」

 「貴様らに殺される恥など、受け入れられぬ」

 「そうか……」


 相手の言葉を聞いた真司は己の手を閉じていく。

 ミシミシと音を立てながら、アピスの首の骨が軋み始める。


 だが、それでもアピスは諦めなかった。


 「この距離なら!貴様らもただでは済むまい!死ねええええ!」

 「なんだ、急に?」


 そう真司が疑問に思った瞬間、アピスの体が爆発した。

 突然の出来事に誰も理解が追い付かないが、真司たちの戦いを遠距離から見ていた軍は、突然上がった大きなきのこ雲に度肝を抜かれていた。


 「なかなかの威力だったな―――玄武、なんか放射性物質とか出てないよな?」

 「いいや、ただの爆発のようだ。核分裂相当の威力に思えたが、そこは幻覚だ。せいぜい家屋を10から20ほど吹き飛ばす程度だ」

 「大した威力じゃないの?」

 「そんなことはない。現に我らは耐えている。放射能を無視するなら、今の真司は核兵器すら無傷で耐えられるはずだ」

 「それはすごいな」

 「だが、毒に対して耐性があるわけではない。気を付けよ」


 突然の爆発に気を取られていると、煙が晴れた瞬間に彼も気が付いた。


 「ん……?あいつがいない」

 「爆発の際、一回体を灰化させてから逃げたのだろうな」

 「クソッ……今ので死なないか」

 「幻覚じゃ死なねえよ」

 「違う。たいていは爆発で死なずとも、その幻覚でショック死する。二段構えの術なのだ。それを耐えたものは今の今までいなかったのだぞ!」

 「じゃあ、今日は記念日だ。お前を攻撃を耐えた初めての相手だ」

 「クソッ、へらへらと!」


 そう言うと、アピスはまたも真司に自身の角を浴びさせ、彼の体で爆発させる。

 しかし、それは真司に通じるものではない。


 「何度も繰り返すなよ。それはもう通じないんだって」

 「うるさいうるさいうるさい!貴様がいなければ!貴様さえいなければ!人界侵攻はすでに終わり、無駄に魔物が死ぬことはなかった!」

 「なら、こっちだって生活投げ出す必要なかったよ。でも、お前たちのせいで明日を笑って過ごせないなら、俺は何度でも剣を振るさ」


 そう言うと、真司はガッとアピスの角を掴み、強制的に顔を持ち上げる。


 「ぐっ……」

 「ふんっ!」


 真司の拳は見事に相手の頬を捉えて、振りぬかれる。本来なら地面に叩きつけられながら倒れこむところだが、真司がそんなことを許すはずもなく、頭を掴んでいる手を引き上げた瞬間、回し蹴りをアピスの腹に打ち込んで吹き飛ばす。


 「かっ!?」

 「決めるぞ、玄武」

 「ああ……」


 そう言うと、真司はクリスタルを押し込む。


 すると、晴れていた空が雲に覆われ始める。


 「くっ……なにをする気だ……?」

 「天を割り、大地を裂く。そんな剣がお前にとどめを刺す」


 彼が手を振り上げると、その真上の雲が割れ、その間から巨大な剣が顔を見せる。


 空気を切り裂き、雲を割り、剣の周りの空気が旋風を巻くようにし、それがアピスの頭上に落ちてくる。


 「クソ!クソッたれがああああ!」

 「終わりだ」


 その瞬間、真司はあげていた腕を一気に振り下ろした。

 それと同時に、剣も一気に落ちてくる。そうして、なんの変哲のなかったはずの町に剣が刺さり、相手の魔物を頭頂部から真っ二つにする。


 「魔力消失。勝ったぞ」

 「そうか……なら帰ろう」


 そう言うと、真司の姿。そして、近くで治療を行っていた青龍の姿は忽然と町から姿を消すことになった。

 当然、町中に振ってきた、巨大な大剣も―――だ。


 その後、伊集院が自身の足が治っている妹を発見し、一息つくものの、すぐに軍部の人間に発見され、拘束されるのはまた別の話。

 そして、またも真司の活躍で魔界の重要戦力のエルダー級が一人死ぬのだった。

File3 「0号 Burst crimson」

パンチ力 78t

キック力 140t

ジャンプ力 ひと跳び10メートル

備考

アサルトクリムゾンの強化形態。ついに自我を取り戻し、彼は魔物へとなり果てる。

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