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三頭犬と魔物使い~幼なじみにテイムされてました~  作者: 花車
第16章 人間と創造神

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259 攻守モード2~化け物鎧~

[前回までのあらすじ]エレドゥームの坑道を調査していたミラナたちは、ドーワーフたちのトロッコを襲うデスグローリーに遭遇した。魔物の背中に剣を突き立てたオルフェルだったが……?



 場所:エレドゥーム

 語り:オルフェル・セルティンガー

 *************



――いけね。ちょっとミラナから離れすぎたか?



 と思ったそのとき、背後からミラナの声と笛の音が響いてきた。



「調教魔法、行動範囲制限!」

――ピ~ヒョロロ~!――



 これはミラナが攻守モードの補助魔法として新しく習得した魔法だ。使役された俺たちはもちろん、攻撃対象になっている魔物の行動範囲も制限される。


 範囲は大体ミラナの周囲五十メートル、というところか。


 前方に俺たちの行動範囲を示す魔法障壁が立ちあがり、坑道が防がれた。


 魔物以外には見えず、ほかの人は普通に出入りもできるけど、俺たちにとっては宇宙一かたい壁だ。



「カーーーーー!?」


「はっはー。ミラナからは離れらんねーよ。俺もおまえもな!」



 デスグローリーはその威圧的な障壁の出現に焦り、バサっと方向を変えて旋回する。俺はその上でバランスをとりながら、あらためてその魔物の鎧に目を向けた。



――思いっきり燃やせばいけんじゃねーかと思ったけど、厳しいか。



 鎧に付加された魔法効果で、俺の体に黒い影がまとわりつく。


 明るさを覆い隠し、その力を無効化してしまう強力な影の魔法だ。通常闇は光に弱い属性だけど、この影は明るさを侵食するほど強い。


 それは炎や雷の放つ光に対しても通じるようだ。


 だけどこれは、上級魔法……いや最上級魔法だった気がする。



――くっそ。魔法無効化に痛み消しにステータスアップって。この鎧化けものか?



 魔法効果が付与された魔導装備は、効果がひとつ付いているだけでも高級品だ。


 三つもの魔法が付与された鎧なんて、俺はいままで聞いたこともない。しかもそれが、こんな強力な魔法だなんて。


 難解な魔法陣が複雑に刻まれた魔導鎧が、まるで意思でも持っているかのように、的確に俺の炎を抑え込む。


 この鎧がある限り、炎や雷の攻撃では、デスグローリーにダメージは与えられないだろう。



――こんなすげー鎧を、たかがカラスの魔物が装備しているなんて、ありえねーだろ?


――そうか、これってもしかして……。



 俺はそのとき、この鎧に隠された秘密をある種の直感で理解した。


 これまでの攻撃モードや攻守モードで、さんざん体験した『呪いの反動』。この鎧は、その効果を引き出している。


 要するにこの鎧には、見た目からはわからない弱点があるのだ。


 鋼鉄のような輝きと重厚感があり、俺の炎の斬撃で傷ひとつつかなかったこの鎧。しかしこいつは、通常の打撃に弱い。


 これは完全なる俺の勘だけど、魔力を込めなければ叩き割れる。



「砕け散れ! ポメルストライク!」



 俺はトリガーブレードの柄頭を、思い切り魔導鎧に振り下ろした。


 かたいはずの魔物鎧が粉々にかち割れ、魔物の断末魔のような音が鳴り響く。



「カーーーーーーーー!」



 鎧に付与されていた痛み消しの効果が切れたのだろう。デスグローリーも悶えながら落下しはじめた。


 トリガーブレードに炎が戻る。俺はそれをデスグローリーに振り下ろした。鎧さえ砕けば魔法攻撃も効くはずだ。



「カカーーーーーーーー!」


「よし。今度はしっかり手応えありだな」



 デスグローリーは燃えあがり、そのまま力無く動きを止める。



「はっはー! 倒したぜ! 俺天才!」



 俺は地面に着地しながら、ミラナの無事を確認しようと振り返る。その瞬間、ミラナの焦る声が聞こえてきた。



「オルフェル! こっちに戻ってきて!」



 デスグローリーが幻術を使ったらしく、急激に数が増えている。五十匹くらいいるように見えるけど、本体ははじめからいた数匹だけだろう。



「シェインさん、あいつ、呪いの反動で支援がかかってます。魔力は込めずに鎧を破壊してください」


「なるほど、そうか!」


「すごいね、オルフェ。あんな振り回されながら魔物の弱点を見抜くなんて」


「あぁ、これが俺の第六感、犬の勘だ!」


「みんな、あらためて攻守モードいくよ!」

――ピッピピーーーー!――



「「「了解!」」」



 ミラナの笛の音とともに、みなの闘志が湧き立って、俺たちはそれぞれに武器をかまえた。


 ドワーフたちは行動範囲制限の外に避難し、ここは俺たちと魔物だけだ。



「調教魔法、攻撃魔法威力制限!」

――フィリリ♪ フィリリ♪――


「調教魔法、使用魔法等級制限!」

――ピ~ヨ~! ピ~ヨ~!――



 さらに追加された調教魔法により、魔物の発動できる魔法の威力と等級が制限された。


 これは俺たちの強すぎる攻撃魔法で、坑道が崩壊するのを防ぐためらしい。使用できる魔法が上級魔法までに制限され、高度すぎる魔法も使えない。



――ってミラナ、毎度ながら制限多いなっ。警戒心たけー!


――攻守モードで俺たち、自由に戦えるんじゃなかったの!?


――これじゃ、『待て』するまでもねーよ。



 ちょっと不満ではあるけど、攻撃中に防御魔法が使えるのはやっぱりありがたい。



「よぉぉっし! 調子乗ってきたぜ!」



 俺は気を取りなおして、デスグローリーのピッケル攻撃を、トリガーブレードで受け止めた。


 その瞬間、全身にひどい痛みが走る。さっき魔物に振り回されたとき、岩壁に激突したせいだ。



「ぐはぁっ! いってぇ」


「オルフェル!」



 俺が呻いて膝をつくと、俺を襲っていたデスグローリーを、シェインさんの槍が貫いた。


 魔力を込めていないにもかかわらず、鎧どころか本体まで貫いている。ライオン獣人の筋力恐るべしだ。



「オルフェ、どこかケガしてるの?」


「そういやさっきボキッてなった」


「えぇっ? どこらへん?」



 地面に這いつくばったままの俺に、シンソニーがヒールをかけはじめた。肋骨が何本か折れてそうだ。


 その間にもシェインさんが、次々と魔物に槍を突き立てていく。ネースさんも巨大な尻尾を振り回して攻撃している。あの尻尾は強力だ。


 だけど相手はほとんどが幻影で、仲間たちの渾身の物理攻撃も空振りするばかりだった。



「「「カカーー!」」」



「えい! って、あれ? また幻影もら」


「やぁーー! たぁっ! うーむ。これも違うな。本体はどれだ!?」



 シェインさんもネースさんも、攻撃を空振りしすぎて、だんだん息があがってきた。



「はぁ、はぁ。なんか増えていってる気がするもらよ!?」


「倒し方がわかったのに、なかなか当たらないね」


「こんな幻影、おにぃさまの手を煩わせるまでもありませんわ。一気に片付けますわよ。ネース!」「え? あ、了解」


「「フロストレイン!」」



 困っているシェインさんを見かねたのか、ベランカさんがネースさんに声をかけた。


 二人が声を揃えて呪文を唱えると、雨のように降ってきた水の礫が一瞬で凍りつく。それが大量の氷の槍となって、デスグローリーたちに降り注いだ。



「「「カーーーーー!?」」」


「わ! ネースさんとベランカさんの連携魔法!?」



 デスグローリーの幻影が次々に消え去り、氷の槍が突き刺さった本体だけが取り残されている。



「おぉーー! かっけー! 二人ってほんと仲良いですよね」


「だまりなさい」


「す、すません」



 フロストレインのあまりの威力に、俺が感心して声をあげると、ちっちゃなベランカさんに睨まれてしまった。


 逃げだしたデスグローリーが、俺とシンソニーの頭上を通過しようとしている。


 俺を治療していたシンソニーが、いきなりウィングワンドを振りあげた。魔物の鎧が俺の頭上で砕け散る。



「僕の上を素通りできると思ってるの?」



 シンソニーは間髪入れず、エアスラッシュを撃ち放った。風の斬撃がデスグローリーを切り裂き吹き飛ばす。


 どう見ても即死級の一撃だ。飛び散った鎧の破片も一緒になって飛ばされていく。



「かっけ……。やっぱり鳥にはエアスラッシュだな」


「攻守モードって最高だね」



 騒がしかった坑道が静かになると、ドワーフたちが戻ってきて、俺たちは大きな歓声に包まれた。



「おぉぉ! すごいのぉ! 本当にあのデスグローリーをやっつけたわい!」


「やるなぁ、おまえたち! トロッコも奪われずに済んで助かったぞい」


「おぉう! やったぜ!」



 喜ぶドワーフたちに取り囲まれて、俺はしばし気分よく調子に乗った。後半はぶっ倒れてただけだけど、みんなが俺の『犬の勘』を褒めてくれたからだ。


 倒し方さえわかれば、ドワーフたちもあいつらに、ある程度対抗できるだろう。


 俺たちはそのあとも坑道を歩き回り、いくつかのデスグローリーの集団を討伐して周った。


 そしてその夜は、エレドゥームの中央にある王城で、休ませてもらうことになったのだった。



 いつもお読みいただき、ありがとうございます!


 はじめての攻守モードでの戦い、いかがだったでしょうか? これでやっと、防御と攻撃が同時にできるようになりました(*´∇`*)


 でも魔物たちの力が強すぎるので、逆に制限魔法をかけられてしまうという。


 次回からはネースの語りで過去編になります! イザゲル討伐のため、転移魔法とクルーエルファントへの対策を任されたネースさんのお話です。


 そのあとにデスグローリー討伐後半戦があります。


 第二百六十話 討伐準備1~魔物の成り立ち~をお楽しみに!


挿絵(By みてみん)

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ターク様が心配です!~不死身の大剣士は寝不足でした~



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― 新着の感想 ―
むむむっ、この魔物たち明らかに普通じゃないですよね。 アジール博士も実は封印されていて、それが解けた、とか?? 闇属性の魔導具とか、あやしいっっ!! ミラナ達がどう考えるのかも気になります!
弱点は属性のない物理攻撃だったんですね!? あまりにも強すぎる鎧だと思いましたが分かってみれば脆い。 犬の勘、お見事でした笑 制限魔法、これはまたクセ強な……。 この世界のテイマーは相変わらずテクニ…
意外とカラスさんたちは呆気なかったですね。所詮はカラスだったということでしょうか。皆して特定属性の魔法攻撃する集団にだけ無類の強さを発揮するカラスだったということですね。苦し紛れに叩くだけでもバレそう…
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