第81話:ロイドの評判
シリアス要素はできるだけ作らないように心がけます。
翌朝、次のクエストを掲示板から選んでいると、見覚えのある名前を発見した。
「へー、今度はその場所で大会を開催するんですね」
「わあ!?」
突然、すぐ真横にレラが現れたので俺は驚いて叫んでしまった。
完全に意識外だった。
周囲の冒険者たちも俺の声に驚いて一斉に視線を向けた。
「び、びっくりした。驚かせるなよ、レラ」
俺は顔を赤らめながら咳払いをする。
レラの隣にはやはりマルスもいた。
彼らはいつも一緒にいるのでセットメニューのような存在だ。
「あはは、ごめんなさいロイドさん。そんなに驚くとは思わなかったもので」
「ところで先生。そのクエストってノワールさんが依頼人でしたよね」
「ああ、どうやらそうみたいだ。警備員を募集してるらしい」
マルスに依頼書を手渡すと、レラもそれをのぞき込むような形で仲良く読んでいる。
「へー、テトラ島ですか。懐かしい響きですね。あの時は私も若くて失敗ばかりでした」
「今も失敗が多いだろ」
「黙れ」
レラは相変わらずのようだ。
マルスが依頼書を俺に返したので、俺は続きを読み進める。
出現リスクのあるモンスター欄を確認すると、メタルスラッシャーやフライングゼリーなどが挙がっていた。
メタルスラッシャーは大型のカニ。
強靭なハサミで攻撃を仕掛けてくるカニのモンスター。
秋ごろから繁殖期に突入するため、砂場付近でよく出現するようになる。
次に、フライングゼリーとは中空をフワフワと飛行している電気クラゲ。獲物を見つけると頭上から覆いかぶさって感電させようとする危険な性質を持つ。
メタルスラッシャー同様に、こいつも秋になると多く出現するようになる。
釣り大会の開催日は今週の日曜日。
俺達の作業曜日は土曜日と日曜日の二日間。
依頼書を読む限り、土曜日にモンスターをあらかた一掃して、翌日は大会の警備という流れになるようだ。
モンスターを討伐するだけでなく、参加者の警護もしなければならないため、やる事が多くて割と大変そうだ。
今のところ、CからAランクにかけての冒険者を20人ほどを募集しているらしく、順当に増えれば俺達を含めるとあと17人くらい集まる予定。
ちなみに、参加者が20人を超えた場合は抽選になるみたいだ。
抽選型のクエストはランクが高い人ほど優先されるので、こういう面でもランクを上げてると恩恵がある。
「ところで先生はこのクエストに参加しますか?」
「取り急ぎ、他に依頼がないなら参加しようかなと思ってるよ。二人はどうする?」
「ロイドさんの魔法を勉強したいので参加したいです」
レラがそう言った。
「レラよ。今回は水着とかないぞ」
「いやいや、今回は真面目な至極真っ当な理由ですよ。というか、いま理由を言ったばかりじゃないですか。ロイドさんのエッチ」
レラは眉根を寄せて俺を睨んだ。
「レラが参加するなら俺も参加するか」
とマルスもクエスト参加の意思を告げた。
「さっそく三人集まりましたね。20人くらい必要っぽいので、追加で補充しますか?」
「ルミナスのギルド長らしいし、これとは別に募集かけているんじゃないか? 知らんけど」
「地味にロイドさん、知らんけどという謎ワード好きですよね」
「ミネルバで成長したおかげで、それだけ俺が無責任になれたという事だな」
「いや、別に褒め言葉じゃないですからね。なんで前向きに捉えているんですか」
「先生が天然なのは相変わらずですね~」
二人は和やかなムードで笑った。
その後、俺達は受付にクエスト受注の申請をして冒険者ギルドを後にした。
◆ ◆ ◆
クエスト当日。
現地に到着すると俺達以外にも参加者が15人程度いた。
予定された20人には満たなかったが、辺境の町という点も考えると結構揃った方だと思う。
それに、今ここにいないだけで、時間差で追加メンバーがやってくるかもしれない。
「おっ、マルスじゃないか!」
「レラちゃんもいるー。二人も今回のクエスト参加してたんだねー」
すると、マルス達と同年代の男女6名がぞろぞろとやってきた。ミネルバの冒険者ギルドでは見た記憶のない顔ぶれ。
ルミナスの冒険者なのかな?
「ウェーイ!」
「レラちゃん相変わらずかわいいね。お持ち帰りしたいよー」
「顔合わせるたびにいつも言ってますね」
「だってかわいいんだもん」
「マルスからこの前貰ったあのナイフ。すごく切れ味よくて最高でした。ジョンも欲しいって言ってたから追加で発注してもらっていいっすか?」
「別に俺、商人じゃないんだけどなぁ……。まあ今度の水曜日までには注文しとくよ」
「あざーす!」
彼らは顔を合わせるや、それぞれ会話を始めている。
仲間内でのみわかる内容って感じで、初対面音俺は完全に蚊帳の外だ。
陽キャになってたつもりだったんだけど、急に会話がスタートすると馴染めないな。
ボーと突っ立ってると少年の一人が俺に気づく。
「なっ、マルス。その人知り合い?」
「あ、すいません先生。彼らの紹介が先でしたね」
「いやいや、全然気にしてないよ。彼らはルミナスの冒険者?」
「はい、そうですね。ルミナスの冒険者です。ルミナス周辺でクエストをする時は時々手伝って貰ってるんですよ」
「仲良くなった時もその時ですね」とレラが補足した。
「ということは、全員Bランクってコトか?」
「いえいえ、Bランクは俺とレラだけです。彼らは全員Cランクですね」
「さらっと自慢すんなよマルス。合格できたのはレラちゃんのおかげだろ」
「ちげーよ。俺もめちゃくちゃ頑張ったわ!」
少年の一人がマルスをからかう。すると、マルスは年相応のくだけた口調で言い返した。
「私達も来年はBランクになりたいよねー」
「だよなー」「うん」「でもサイクロプス強すぎんだわ」「わかる」
話を聞く限りだと何回か昇格試験は受けてるご様子。
サイクロプスが強いという部分は、俺にとっていささか疑問だが、わざわざ指摘するとイヤな奴みたいに思われるのでスルーする。
「初めまして。冒険者のロイドです。今日はよろしくお願いします」
俺はぺこりと挨拶をする。
すると、目の前にいた若者達が全員驚愕する。
「え!? もしかしてあのロイドさん!?」
「メルゼリア王国が誇る伝説級の大魔導士様でしたか! こ、これは失礼しました!」
「きゃあああ! 噂よりイケメンなんですね」
「結構若くてびっくりした。もっと年上の方だと思ってた。俺達と全然変わらないじゃん」
俺の顔を見たのは初めてだが、俺の存在は知っているようだ。
というか、伝説級の大魔導士ってなんだよ。いつの間にそんな飛躍したんだ。
絶対にイゾルテさんが原因じゃん。適当な事みんなに言い過ぎだって。
俺は苦笑いを浮かべる。
「ロイドさん……じゃなくてロイド様とお会いできてすごく光栄です! サインください!」
「あ、ずるいぞネビル! 俺だってサイン欲しいのに!」
「まさか大魔導士様と一緒にクエストができるなんて夢みたいです! 私もサイン貰っていいですか?」
すると、他の冒険者達も騒ぎに気付いて、
「なんだなんだ? やけに盛り上がってるな」
「あのロイド様がいるんだよ!」
「「「え!? マジ!?」」」
わああああああ!という破竹の勢いで冒険者のみならず、港を歩いていた一般人も大量に集まってきたのだった。
朝っぱらから騒がしすぎる!
次回の更新は6月5日のお昼12:00となります。
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