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第69話:昔の自分と今の自分

 ほどなくしてフェルメールさんの仲間がやってきた。

 クラーケン討伐後、みんなで談笑しながら魔石を拾っていると水面から人魚が顔を出した。

 その人魚は慌てた様子でフェルメールさんに告げる。


「大変ですお姉様。ウンディーネ様より緊急の連絡が入りました」

「緊急の連絡? なにかあったのですか?」


 フェルメールさんは怪訝な表情を浮かべた。


「リヴァイテーゼの封印が今にでも解けそうなんです!」

「え、えええええ!? リヴァイテーゼが!?」


 彼女は激しく動揺している。マルス達も大変驚いており、二人はそれぞれ反応した。


「リヴァイテーゼか。ここでその名前を聞くとは思わなかったな」


 二人のやり取りを横から聞いていたマルスが急にそう呟いた。


「知ってるのマルス君?」

「知り合いの商人から聞いた話だ。海底都市アルマダには巨大海竜が封印されてるらしい。全長100メートルもの巨体に紫色の鱗。その鱗には魔法を反射する紫結晶アメジストと同じ効果があるそうだ」

「つまり魔法が効かないって事?」

「そうだ。伝説の生き物だと思っていたが、まさか実在していたとは思わなかった」


 マルスは冷や汗を出しながらリヴァイテーゼの概要をレラに説明した。


「なるほど、奴の復活を止めるためにロイド様の力が必要なんですね」


 人魚の話を聞いていたフェルメールさんは、突然そう言って納得し始めた。

 え……俺?

 いきなり名指しで指名されたので俺は驚愕してしまう。


「す、すごいロイドさん!」

「流石です先生。ついに海の種族にも先生の偉大さが伝わりましたね。グローバルティーチャーロイドとは先生の事を指す言葉でしょう」


 マルスはわけのわからない事を言っている。


「みんなちょっと待ってくれ! いきなりすぎて何がなんだかさっぱりだ。もしかして俺はこれから彼らについて行かなければいけない流れなのか?」

「「「「はい」」」」


 全員が同意して頷く。


 うそぉ~!?

 やだやだ、絶対に面倒くさい奴じゃん。なんで俺なんかに依頼するんだよ。

 依頼する相手を絶対に間違ってるだろ。


「ロイド様……無茶なのは承知の上ですが、私と一緒にアルマダまでついて来て下さらないでしょうか? 万が一にでもリヴァイテーゼが復活したらアトランタ王国は滅びてしまいます」


 フェルメールさんは上目づかいで俺に懇願した。

 そんな目で俺を見ないでくれ。なんだか断りづらくなるじゃないか。


「フェルメールさんが俺を信頼してくれる気持ちは嬉しいけど、俺はやっぱり……」

「ロイドさんの馬鹿!」


 その時。

 レラがいきなり俺の顔を杖でぶん殴った。

 今の一撃で、俺は錐揉み上に空中を回転して頭から地面に落下した。

 全身が痛いし、奥歯が折れて血がダラダラと口から流れている。


「お、おい。レラ。いくらなんでも杖で先生を殴るのはヤバイって……」


 マルスはやや引き気味でレラに注意する。

 しかし、レラは言葉を続ける。


「今のロイドさんはなんだか魅力がありません! 昔は誰かが困ってたら見返りなく助けてたじゃないですか!」

「……でも相手は伝説のリヴァイテーゼだぞ。魔法も効かないし、相性も最悪だ」

「ロイドさんなら余裕で倒せますよ。初めて私と会った時も巨大サンドワームを倒してくれたじゃないですか」

「リヴァイテーゼと巨大サンドワームだとワケが違うだろ」

「うー! うー! どうしてそんな変に理屈的に考えるんですか! 昔のロイドさんなら二つ返事で頷いてくれたじゃないですか!」


 彼女の言葉に俺の言葉が止まる。


「……!」

「ところ構わずエクスプロージョンを連打してやばい奴認定されてた頃のロイドさんはもっと輝いてました!」


 そんな負のところ輝かない方がいいでしょ。

 彼女の言ってる事はめちゃくちゃだったが、彼女が何を言わんとしてるのかはわかった。

 半年前と比べると、俺は間違っていない選択を取れるようになった。

 でも、半年前と比べるとエクスプロージョンを撃つ回数は明らかに激減したと思う。


 不思議なもんだな。

 あれほど常識を身に着けてくれとレラに言われていたのに、今は真逆の答えを望まれているなんて。


 かつて俺は過去に一度、御者を助けた事でレラに怒られた事があった。

 あの時は『大切な人』を守るためにそのお金を使えというものだった。


 努力の甲斐もあって、この半年間で、俺の中で大切な人に該当する人物は何人か現れた。


 じゃあフェルメールさんはどうだろうか。

 彼女は俺にとって大切な人と言えるのだろうか。

 申し訳ないけど……多分違うと思う。

 仲の良い友人であるが、命を懸けて護るほど価値のある相手であるかは、まだわからない。


 でも、『半年前の俺』ならそんな事すら考えずに二つ返事で彼女を助けていたと思う。

 たしかにレラが言ってるように、『つまらない人間』になったと思う。


 レラはあの時、俺を厳しく叱った。

 が、同時に、「私には決して真似できないすごい方」と俺を認めてくれた。

 いま思えば、あれはどちらも彼女の本音だったのではないだろうか。


 損得関係なく、自身の善悪を信じて行動する。

 今の俺には一番難しい考え方だ。

 正しく行動してきたつもりだったが、俺は知らないうちに昔の俺よりも消極的になっていたのかもしれない。


「レラ」

「なんですか?」

「昔の俺も認めてくれていたんだな。今の言葉を聞いてちょっと嬉しかったよ」

「えへへ、今のロイドさんも好きですよ。でも、昔のロイドさんの方がもっと大好きなだけです。ロイドさんは考えてから行動するよりも、行動してから思いっきり悩む事の方がロイドさんらしいと思います」


 レラはそう言って俺に治癒魔法のヒーリングをかけた。

 頬の痛みが引いていき、奥歯も完全に再生した。


 俺とレラのやり取りを見ていたフェルメールさんが、すごく話しかけづらそうに、おずおずと言葉を発する。


「えっと……。結局、リヴァイテーゼの件はどうなったのでしょうか?」

「いいですよ。今からアルマダまで行きましょうか。巨大海底竜だかなんだか知りませんが、リヴァイテーゼなんて俺が拳でぶっ倒しますよ」


 俺は笑顔でそう答えた。


「ほ、本当ですか!? ロイド様、本当にありがとうございますっ!」

「流石ですロイドさん!」


 俺の協力を知ってフェルメールさんとレラはとても喜んだ。


「あのー、リヴァイテーゼと戦う前提で話が進んでますけど、リヴァイテーゼが復活しないようにこれから行くんじゃないんでしょうか?」


 マルスは困惑しながらそう答えた。

 だが、俺達は彼の言葉を誰も聞いていなかった。


 話がまとまったので、フェルメールさんが移動用のキングタートルを用意してくれた。

 そして、マルスとレラも一緒に、俺達は海底都市アルマダへと向かった。



皆さまからの応援は執筆の励みになります!

次回の更新は2023/01/05の12:00となります!


来年もよろしくお願い致します!

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