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第65話:ノワールとの再会

 それからほどなくして、ティルルさんがアイリスに声をかけた。収穫祭の打ち合わせの時間が迫ってきたと告げている。

 時計塔を確認すると正午近くになっていた。もうそんな時間か。


「時にティルル。ルミナス牧場まで結構距離があります。ロイド様とセフィリアの負担を考えると、魔王様の監視役があと一人必要と思いませんか?」

「思いません」


 ティルルさんは間髪入れずにそう答えた。

 適当な理由で今日の予定をサボろうとしているアイリスの魂胆は見え見えのようだ。

 アイリスはわざとらしくため息を吐いた。


「愚かな……。ティルル、貴女は小さな物事にこだわりすぎです。予定表という小さな枠組みではなく世界という枠組みで物事を捉えなさい。私には『秩序神エメロードの代行者』として世界の秩序を守る責務があるんですよ」


 アイリスの上から目線の発言にはティルルさんもムカッとしたようで、少し強めの口調でアイリスを諌める。


「目の前の約束すら守れないお子ちゃまに世界の秩序なんて守れるわけありませんよ」

「ぐっ……! 大体、収穫祭なんて一日や二日遅れた所で何の影響もないじゃないですか」

「いや、大問題だよ。それに合わせてスケジュールを組んでる人だって大勢いるんだから。アイリス一人のワガママで全員の予定を変える事なんて筋が通らないよ」


 俺もアイリスにそう言った。


「ロイド様までそんな! ロイド様ならきっと私の味方であり続けると信じてたのに……」

「俺は正しい側の味方であり続けたい」

「ええい、こうなったらやけです! 最後の一人になっても徹底抗戦です!」


 アイリスはいったい何と戦っているのだろうか。


「あんまり聞き分けが悪いと、本日の夕食をピーマン料理のフルコースにしますよ」

「むぅ……それは困ります。夕食を人質に取るなんてズルいですよ……」


 ティルルさんにもピーマンという切り札があったようだ。

 今回の勝負はティルルさんに軍配が上がり、アイリスは負けを認めて大人しくなった。


 そして、アイリスはティルルさんと共に神殿へと歩いて行った。

 二人と入れ違いになる形でイゾルテさんが冒険者ギルドから戻ってきた。


「おや、アイリス様はもう行ったのか」

「はい、ついさっき。イゾルテさんの方こそ何か問題でもありましたか?」

「大した内容じゃないんだが、ルミナス牧場に行くのなら私もついて行こうかと思ってな。明日は休日だから、夕方までに仕事を終わらせれば私も参加できそうだと気づいたんだ」


 目線を逸らして、モジモジとしながら若干照れくさそうにそう言った。

 アイリスといい、みんなルミナス牧場が好きだなぁ。

 どうやらイゾルテさんもついて行きたいようだ。別に許可なんて必要ないのに。それともこっちから誘って欲しいのかな。

 

「イゾルテさんが参加して下さるなら俺も心強いです」

「本当か!? よしよし、それなら出発時刻は今日の夕方だ。屋敷の方で馬車を出すから、夕方の4時くらいに私の屋敷まで来てくれないか?」

「わかりました。夕方の4時ですね」


 イゾルテさんと約束をして、俺とセフィリアさんと魔王は4時まで市街地で時間を潰した。

 その後、時間になったのでイゾルテさんの屋敷立ち寄った。

 屋敷の前にはすでに馬車が二台用意されており、従者らしき人物が三人、そして白色のパラソルを握っている優雅な淑女が馬車の側に立っていた。

 ゆったりとした白色のドレスを着ており、見るからに高貴な女性って感じだ。

 いったい誰だろう。

 挨拶をしようと声をかけると彼女は振り返った。

 イゾルテさんだった。


「わっ、びっくりしました。イゾルテさんだったのですね。こうして見ると本当のお嬢様みたいです」

「どういう意味だ。失礼だぞ貴様。不敬罪として牢屋送り」

「勘弁してくださいよ。すぐに謝りますって」


 彼女も本気で言っているわけではなく半分冗談って感じだ。

 騎士姿の印象が強いので、彼女が貴族のお嬢様である事を完全に忘れていた。

 こうして見ると本物のお嬢様って感じがするな。高貴オーラがすごい。完全に別人。とても綺麗だ。

 普段キリっとしてる人がお淑やかな姿になってると驚いてしまう現象に近いと思う。


 彼女の荷物は従者の執事が持っており、四人いるので二人ずつに分けて俺達は馬車に乗った。

 俺とイゾルテさん。セフィリアさんと魔王。

 この組み合わせは魔王がセフィリアさんに一番懐いてるからだ。セフィリアさんに再教育されたばかりだけど、なんだかんだでセフィリアさんが一番っぽい。普段は一番優しいからね。


 そして、俺達は馬車を使ってルミナス牧場に向かった。



 翌日。

 大体、朝の10時くらい。

 俺達は無事ルミナス牧場に到着した。昨夜は馬車の中で一泊した。

 ルミナス牧場は完全に復興している。

 隕石で吹き飛んだ建物も完璧に元通りで観光客が楽しそうに動物と触れ合っている。


 四人一緒での観光は大体2時間くらい。

 馬車の疲れも残っていたので、現在はイゾルテさんと一緒にベンチで一休みしてる。


 セフィリアさんは魔王と一緒に他の名所を観光している。

 二人とも元気だなぁ……。

 こうやって遠くから二人を見てると本当の姉妹か親子みたいだ。


「イゾルテさんから見たルミナス牧場はどうですか?」

「いい感じに復興してると思うぞ。それもこれもロイドが手伝ってくれたおかげだ」

「いえいえ、俺は大したことしてませんよ」

「そんな事ない。ドワーフを連れて来てくれたり、ドワーフと冒険者の仲を取り持ってくれたのはロイドだからこそできた事なんだ」


 そうなのかな?

 あんまり実感はないけど、イゾルテさんの役に立てたのならそれでいいとするか。


「それにしても……これだけ敷地が広いと馬を思いっきり走らせたくなるよな」

「あそこで乗馬ができるので一緒に馬を走らせますか? ただ走らせるだけでは面白くないので、今日のお昼ご飯をかけて競争とかどうです?」

「面白い。言っておくが私は元騎士だから馬を走らせるのもかなり慣れてるぞ。ロイドに勝てるのか?」とイゾルテさんが笑いながら挑発してくる。

「ははは、俺も専属魔導士時代にかなり馬を走らせてましたので負けませんよ」


 そのまま俺達は一時間ほど楽しく馬を走らせる。

 勝敗はあやふやな感じになった。

 乗馬体験終了後、馬から降りたタイミングで俺とイゾルテさんは意外な人物と再会した。


「あら、イゾルテとロイドじゃないの。久しぶりー。どうしてこんな所にいるの?」


 ルミナスの錬金術師であるノワールだ。

 最後に会ったのは、アイリスと海水浴の打ち合わせをした日なので、大体10日ぶりだ。

 今回はこれまでと違って、ゴーレムにも乗ってないしサングラスもつけてない。

 普通のノワールだ。てか、普通のノワールってなんやねん。


「今日はロイドと旅行で来たんだよ」

「へー、意外。アナタ達ってそういう仲だったのね」

「ち、ちがう。私達はそういう関係じゃない。他にも連れがいる」


 ノワールが何気ない表情で答えると、イゾルテさんは慌てながら表情を赤らめて否定した。


「くすっ、冗談よ。私は別にアナタ達の関係なんて興味ないわ」

「ところで、ノワールはどうしてここにいるんだ?」


 イゾルテは腕を組んで首を傾げて尋ねる。


 たしかに気になるな。

 ノワールは錬金術師だけでなく、ルミナスのギルド長も兼任してるらしいが、今回の復興の件では外れてるそうだ。

 

 ノワールはニヤリと笑みを浮かべる。

 俺達二人に見せつけるようにチラシを突きだした。


「今日は釣り大会の勧誘で来たのよ。ここはミネルバからの観光客も多いから、ここでどんどん参加者を増やそうと思ってるの♪」

「ノワールは本当に釣りが好きだなぁ……」


 イゾルテさんは呆れながら答えた。


「べ、別にいいでしょう! イゾルテだって釣りが趣味でしょ!」

「あっ、そうなんだ」


 唐突に判明するイゾルテさんの趣味。

 それなら今度釣りに誘ってみようかな。


「ロイド。それはやめておいた方がいいわよ」


 ノワールが俺の表情を読んで笑いながら言った。


「どういう意味ですか?」

「イゾルテは釣りに関しては結構うるさいのよ。釣りの最中に一言二言多いから一緒に釣りをしてもあんまり楽しくないと思うわよ」

「おい、ノワール。本人の前でよくもそんな失礼な事を言えるな」

「だって事実でしょう?」

「うむむ、否定はできないが、ロイドの前で私の欠点を言うのはやめて頂きたい」

「あっ、ごめんなさい。失礼したわね」


 ちゃんと謝れるのはすごく偉いね。

 こういう小さな部分でその人の性格が現れてくるものだ。

 若干素直でない所もあるけど、元来の性格は優しいのだろう。


「ところでイゾルテさんは、ノワールの釣り大会に参加するんですか?」

「参加できるなら私も参加したいが、その日は忙しいだろうからなぁ……。ノワールだって忙しくて大会には参加できないだろうし、悩ましいなぁ……」

「え? ノワールが忙しいってどういうことですか?」


 ノワールも参加者と一緒に釣りをして楽しむんじゃないのか?

 俺はイゾルテさんに尋ねた。


「うん? 大会の主催者だから忙しいに決まっているだろう? 参加者の案内や、途中でトラブルが起きた時の対応とかしなきゃいけないわけだし、釣りをする暇なんてほとんどないと思うぞ。ノワールだって昨年は忙しくてほとんど釣りができなかったって言ってたしな」


 あれ? ノワールが前に言った内容と全然違うんだけど……。

 たしか参加者は0人だって……。

 ノワールの方に視線を戻す。


 ノワールは笑顔のまま大量の冷や汗をかいている。

 あー、これは完全に見栄を張ってましたね。

 きっとイゾルテさんには誇張して答えていたのだろう。これはバレると恥ずかしい事になる。


「ところでノワール。昨年は何人くらい参加したんだ?」


 これまでの話の流れからイゾルテさんは当然の反応をした。


「あら、いけない。もうこんな時間。アトリエで依頼人が私を待ってるわ!」


 ノワールは芝居がかった口調でそう述べて回れ右をする。


「え? あっ、おい。ノワール!」

「それじゃあロイド。今度は釣り大会でお会いしましょう。ばいばーい!」


 ノワールは猛ダッシュして牧場から消えていった。

 彼女も彼女で忙しい人だ。



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[気になる点] ノワールは錬金術師だし、転移ポータルの素材とかセフィリア用のアルテミスとかいう連勤馬作ってもらえないのかな
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