第59話:精霊少女との対話
精霊。
大自然のエネルギーが結晶化した存在で、姿かたちはそれぞれ異なるとされている。
妖精の姿をしてる精霊もいれば、獣や鳥や魚の姿をしている精霊もいる。
人の姿をしてる個体も多くいて、人間とも関わりが深い。
また、理由はわからんが、人の姿をしてる個体は他よりも能力値が高い傾向にある。
そのため、目の前で泣いてる精霊少女も外見に反して能力値は高めだと推測できる。
《心象具現》によって水を巨大な岩に変えているのも、彼女の能力値が高いと推察できる根拠の一つだ。
《心象具現》とは、感情のような形を持たないものを、物体として実体化させる力の事である。
原初の魔法とされており、俺達が普段使用してる魔法も、この心象具現を応用したものである。
感情が高ぶると魔法の威力が上がったり、精神的に弱っていると魔法の威力が下がったりするのは、この心象具現が大きく関係している。
また、精霊の話をする上で一番忘れてはならない事は、彼らは『領域の呪い』の影響を受けやすい点だ。
大地との関係性が強いので、エリアゼロでのパワーアップ具合が他のモンスターの比じゃない。
幸いな事に、精霊の大半は大人しく、人間に対しても友好的だ。だからあまり問題にならない。
もし種族全体の気性が荒ければ、ウンディーネのような厄介な存在が量産される事になっただろう。
本人の性格的な意味でも、ウンディーネは特異な存在なのだ。
精霊に関する内容は、学者達の間でもそれぞれ意見が分かれているので、素人の俺から言える事はこれくらいだろうか。
また、もう一つ、精霊に関する内容として忘れちゃいけないのが『精霊と人は結婚して子を成す事ができる』という部分だ。
一言で言えば赤ちゃんを作る事ができるのだ。
これはレラによって教えられて、何回も繰り返し話されたので、脳に刷り込まされた。
風の大精霊シルフィーネ(超絶美少女)と人の皇太子(超絶イケメン)が結婚して、超絶美少女シルフィーネ似の女児、超絶イケメン皇太子似の男児が生まれて幸せになりました。
この話を半年間に100回以上も聞かされた。
レラは恋愛の話になると豹変するので、彼女の前で恋愛の話は一種のタブーと化している。
たしかに参考になる話はしてくれるが、どちらかと言えば過激派だからなぁ……。
話がだいぶ逸れてしまったが、本題を精霊少女に戻そう。
現在、目の前では精霊少女が号泣しており、同性のアイリスが主に対応してる。
精霊少女を抱きしめながら頭を撫でて優しく宥めている。
現状では、俺に役目はないので、転がる岩の対応に当たる事にした。
マルスやレラが興味本位で階段を上って来たら危ないので、屋上から地上を見下ろして、灯台には近づくなと《文字魔法》でサインを送った。
文字魔法とは魔力を媒体として大気中に文字を描く魔法だ。《日常魔法》なので基本的に誰でも扱えるが、この魔法も《心象具現》の一種とされている。
文字魔法に気づいたティルルさんがOKのサインを出した。
これで一安心だな。精霊少女の側へと戻った。
ひとまず、彼女が泣き止むまで話に付き合ってあげるか。
およそ30分後。
号泣してた精霊少女もだいぶ落ち着きを取り戻した。涙を流すのをやめて、俺とアイリスの二人にお礼を言った。
「先程は大変ありがとうございました。お二人が私の話を聞いて下さったおかげで、だいぶ気持ちがすっきりしました」
「お元気になられて私達も安心しました。自己紹介がまだでしたね、私は聖女アイリスです」
その自己紹介久しぶりに聞いた気がする。正確には元聖女なんだけど、サウスライト地方の監査してるから聖女と名乗ってもギリギリ問題ないのかな?
自分の紹介が終わり、アイリスは合わせて俺の方にも手を動かした。
「こちらは大魔導士のロイドさんです」
社交辞令とはいえ、大魔導士と敬称で呼ばれるのはちょっと照れるな。
「現在は冒険者をしてるロイドです。大魔導士というほどではありませんが……」
俺は丁寧にお辞儀をした。
すると、精霊少女は柔和な笑みを浮かべた。
こちらに対して友好的な感情を抱いてくれてるのは雰囲気から伝わってきた。
「アイリス様とロイド様ですね。お二人には本当にお世話になりました。せっかくなので何かお礼をしたいのですが……」
「いえいえ、お礼なんて必要ありませんよ。神の使徒として当然の事をしたまでです。そうですよね、ロイド様?」
「うん、俺もアイリスと同じ気持ちかな」
俺はアイリスに同意した。
「もし、どうしてもお礼がしたいのでしたら、今後困っている人を見かけたら、その方を私達だと思って手を差し伸べてあげてください。困っている人が一人でも多く救われることが、私達にとって一番のお礼となります」
流石アイリスだな。
この言葉がさらりと出てくるところに聖職者の魂を感じる。
行動一つひとつに見返りを求めないのはアイリスの魅力とも言えるだろう。あらためてアイリスに魅力を覚えた。
「わかりました。今度困っている方を見かけたら、お二人だと思って全力で助けましょう」
「こちらの提案を受け入れて下さって、お心遣いありがとうございます。秩序神エメロードもアナタの善意に感謝しておられるでしょう」
真面目な顔で、アイリスは手を合わせたままお辞儀した。
久しぶりとなるエメロード様発言。
この言葉が出てくるという事は、聖女スイッチが完全にONになってる証拠だな。
今日は色々なアイリスの表情を見ることができて幸せだな。
その後、一段落ついた俺達は、精霊少女に別れを告げて精霊少女に見送られながら灯台の頂上をあとにした。
精霊少女はもうしばらくの間、塔の頂上で風を感じたいらしい。
灯台から降りると、さっそくレラとマルスが駆け寄ってきて事情を尋ねてきた。
事情を説明すると案の定レラはテンションが上がっていた。
ただ、他人の失恋話なので、マルスがすぐにレラを窘めた。
「ところで、謎の美少女の名前ってなんだったんですか?」
レラが俺に尋ねてくる。
「あー……。うっかり聞きそびれたみたいだ」
「ええー!? そういう所ですよロイドさん! 連絡先がわからないなら恋愛の相談に行けないじゃないですか」
知らないエルフが突然家に押しかけてくるとか怖すぎる。
トラウマになるからやめてさしあげろ。
「無茶言うなよ。俺が女の子の連絡先をほいほい聞けるわけないだろ」
「ふふふっ、あの方の連絡先は、来年テトラ島に来たときに再会できたら、その時に聞いてみましょう」
さりげなく来年もまたテトラ島に来る的な発言をするアイリス。
旅行を楽しんでくれたようで何よりだ。一番に誘った甲斐があったよ。
アイリスの笑顔を見てなおさらそう思った。
街へと続く遊歩道を歩きながら、塔の方を振り返ると、精霊少女からこちらに手を振っているのが見えた。
その日の正午、テトラ島の港でアイリス達を見送った。俺は明日のウンディーネに備えてテトラ島で情報収集を始めたのだった。
ブックマークと星5お願いします!
皆様からの応援は執筆の励みになります!
本作の発売日が決定しました!
2022年12月28日となります!
また、より詳しい情報が分かり次第、活動報告の方にも記載して参ります!




