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第23話:クエスト完了


 ヴィッド大森林のキャンプ場からミネルバまでの道中は特にトラブルもなく平和そのものだった。

 アイリスとはたくさんお喋りできたし、従者さんとも仲良くなれた。


 ミネルバに到着後、簀巻きにされている刺客の説明を、町の門番に求められた。


「少々複雑なので、ギルド長と直接お話をしたい。今からギルド長まで取り次いでくれませんか?」


 俺は冒険者カードを提示しながら、門番にそう伝えた。


「アイリスという言葉を使えばすぐに伝わると思います」


 アイリスも言葉を追加する。


 それから10分後、ギルド長がやってきた。

 目つきは鋭く、やや怖い印象が見受けられるが、大人の魅力が感じられるとても綺麗な女性だ。


 白色の上着には、花びらのような赤い胸飾り。黒色のコルセットで固定しており、体のラインがしっかりとわかるデザインになっている。聖騎士だった頃の名残からか、剣士にしては珍しく鎧を装備しており、白色の手甲と足甲を身につけている。


「むっ、腰回りがえっちだ……!」

「それを言うためだけに来たのなら面会を取りやめてもいいのだぞ」

「ごめんなさいー! つい口が滑っただけなんです!」


 と、俺は慌てて謝罪する。

 イゾルテさんはため息を吐いた。

 端正な顔立ちだが、目つきは鋭く、やや怖い印象が見受けられる。


 前回はアイリスに驚いて情けない姿を晒していたが、今回は威厳のある態度で俺たちと再会している。


 ギルド長に説明を行い、刺客の身柄を引き渡した。複数の拘束具を手足につけられ、屈強な騎士たちに運ばれていった。


「あの拘束具には囚人の魔力を吸収する能力があります。剣士であろうと、魔力を使う事には変わりないので、これで奴は無力化されたも同然です」

「助かりました。これで私も安心してミネルバに滞在できます」

「『ミネルフォート家』として当然の事をしたまでです」

「ミネルフォート?」と俺が反応すると、

「私の父はこのミネルバの領主をしている。だから私の本名はイゾルテ・フォン・ミネルフォートなんだ」


 と、ギルド長(イゾルテ)は他人事のようにサラッと答えた。

 領主の娘ってマジかよ……。

 おいおい、そういう大事な事は最初に教えてくれ。

 

 町の領主という事は伯爵以上なのは間違いなく、彼女はその娘なので貴族令嬢ということになるのかな。もし結婚していたらちょっと違うけど。


 貴族かぁ……あんまりいい思い出ないなぁ。貴族って変な依頼持ってくる事多いもん。

 専属魔導士時代に嫌というほど貴族の依頼を引き受けてきたから、貴族に対して少し苦手意識がある。


「アイリス様、刺客の事などお気になさらず、これからもミネルバでお寛ぎ下さい。ミネルバは辺境の町ですがとても良い町ですよ」

「ありがとうございます。その言葉を聞いてすごく安心しました」


 アイリスはすごく嬉しそうだ。

 よかったよかった。女の子は笑顔が一番だ。


「どうかしたかロイド?」


 と、イゾルテさんが俺の顔を見た。


「いや、なんでもないです。ありがとうございますギルド長」

「うむ、ロイドもがんばれよ。

 アイリス様の近衛魔導士として、アイリス様をお守りできるほど、素晴らしい事はないぞ」


 いやだから、別にアイリスの近衛魔導士ってわけじゃないんだけど……。

 イゾルテさんは俺が冒険者だとすでに知っているが、冒険者はあくまで副業で、アイリスの近衛魔導士が本業と捉えている節がある。

 新人研修中に何度かイゾルテさんと出会ったが、そのたびにアイリスの事を尋ねられた。

 そのたびに「近衛魔導士じゃないですよ」と伝えているが、「はっはっは、そう謙遜するな」と話が通じてない。


「あの、ギルド長。何度も言ってますが、俺は近衛魔導士じゃなくて普通の冒険者です」

「はっはっは、さらばだ諸君!」

「おい聞けよ」


 イゾルテさんはその場から立ち去った。

 彼女はあんまり他人の話を聞かない人なのかもしれない。


 その後、依頼完了の手続きがまだ済んでいない事を思い出した俺は、冒険者ギルドに向かう事になった。

 アイリスは従者たちを先に宿屋に帰し、冒険者ギルドまでついて来ると言った。

 普段俺がどんな感じで冒険者として活動しているのか、個人的に気になるそうだ。


 初クエストだから普段もクソもないんだが、断る理由も特にないのでギルドへの同行を許可した。



 一週間ぶりに冒険者ギルドに戻った俺。

 昼間なのでロビーは人で賑わっていたが、アイリスが入ってくると自然と道ができた。


「な、なんだ! あの美しい女性は!?」

「あっ、アイリス様だ」

「パーティに誘ったらオーケーしてもらえるかな?」


 普段のアイリスが天然なのでつい忘れがちであるが、アイリスはすごく美形で、年齢相応の色気があって、すごく聖女なんだ(意味不明)。

 その美貌ゆえに、特に男性冒険者達の注目を浴びた。女性冒険者もアイリスの美しさに感嘆の声をあげる。


 アイリスの横顔をチラリと確認してみると、のほほんとした顔をしていた。

 これは完全に聖女スイッチがオフだ。たぶん何も考えてない。


 ロイドくん? マジで空気だよ。

 びっくりするほど誰も俺の存在に気づいていない。

 アウトオブ眼中ってやつだ。


 その後、中央の受付で依頼完了の手続きを行った。

 ゴブリン討伐のクエストが完了した。

 報酬銀貨50枚とボーナスの金貨1枚を追加で手に入れた。


 専属魔導士の頃と比べると決して多いとは言えない金額だが冒険者として初めての報酬だ。

 自分でクエストを選んで、自分ですべてをやって、自分の力だけで達成した。


 冒険者としての第一歩は無事踏み出せた。

 この調子でドンドン依頼をこなしていきたい。


 俺の依頼が達成した直後、マルスとレラがやってきた。


「流石です先生」

「おめでとうございます。無事に依頼が達成できたんですね」


 タイミング的に俺が終わるのを待っていたような感じ。

 レラはアイリスの顔をチラリと見たが、特に反応する様子もなく、簡単にお辞儀をして会話を続ける。


 マルスもアイリスにはあまり反応していない。

 二人の反応を見るかぎり、アイリスの存在に気づいてはいるが、あえて深く反応しないような感じ。

 アイリスに遠慮しているのだろうか?


「わざわざ来てくれたのか」

「たまたま近くにいただけですよ。それじゃあ私たちは次の依頼があるので」


 レラはそう伝えるとあっさりと立ち去っていく。


「少しそっけないですが、先生が依頼達成したらまず一番に声をかけようと言ってたのはレラなんですよ」


 とマルスが小声で教えてくれた。


 言葉には出さないが気にかけてくれていたのか。


「マルスくん。行きますよ」


 と、レラがマルスを呼んだ。


「呼ばれてますね。それでは俺も失礼します。冒険者生活頑張ってください。応援してます」

「おう、マルスの方こそ頑張れよ」


 あっという間に、二人はその場からいなくなった。


「あの二人はロイド様のお友達ですか?」

「ああ、なんだか今日は忙しいみたいだ。今度時間がある時にアイリスにも紹介するよ」

「楽しみにしています」



 冒険者ギルドをあとにして、フロルストリートの宿屋までの道を歩いていると、途中にソフトクリーム屋があったので、二つ買ってそのうちの一つをアイリスに手渡す。


「ありがとうございます」

「そこのベンチで一緒に食べようか」

「はい」


 ベンチに座って、アイリスと肩を並べながら仲良くソフトクリームを食べた。

 その時間はとても貴重で、とても平穏で、とても幸せだった。


 初クエストでアイリスと再会した時はとても驚いたが、終わってみれば楽しい時間だったな。

 刺客はしっかりと処理できたし、クエストも完了したし、ひとまず一件落着だ。

 明日からまたクエスト頑張るか。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] ギルド訪問が1週間ぶりというのは往復3日ずつ+ゴブリン討伐1日で計算されてる気がしますけど 馬車で3日の距離なら馬に直に乗ればその半分、魔導人形はさらにその半分の時間で到達できるので、…
[気になる点] >アウトオブ眼中ってやつだ。 『眼中にない』『論外』を表す俗語。 80年代に生まれ、90年代に最も流行った言葉 こういうところで作者の年齢を感じさせられる(笑 40代~50代ってとこ…
[良い点] アイリスとの絆も深まり、ロイドの価値も少しは広まっているようで安心しました。 [気になる点] やっぱりルビー×ロイド推しなので、2人の再会が待ち遠しいです。 [一言] 更新ありがとうござい…
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