間章3:天才錬金術師の小さな勘違い
ロイドがアトリエを飛び出して三週間が経過した。
アトリエに帰ってくるような気配は今のところ微塵も見られない。
ロイドがいなくなった理由は定かではないが、いまの私はロイドに対して完全に興味を失っていた。
ロイドは専属魔導士としては三流で、特に素材採取率の低さは、いくら寛大な私であっても見過ごす事ができない。
およそ60%の確率で素材の採取を失敗すると言えば伝わるだろうか。
この不安定さは専属魔導士として致命的で、私はロイドの尻拭いを何度も強いられていた。
ここ最近の私は常にイライラ気味でロイドに辛く当たる事も多くなっていた。
また、今回のロイドの出奔は私にとっても都合がよかった。
私はもっとレベルの高い専属魔導士と仕事をしたかった。
私にとってロイドは足枷でしかなく真のパートナーとは言えない。
彼の事はきっぱりと忘れて新しい専属魔導士を探すのも悪くないだろう。
むしろそれが一番だ。そうに違いない。
ロイドにこだわる必要性はどこにもない。
仕事も満足にできず、責任感もなく、ワガママだけは多い。
どうして今まであんな無責任な奴と恋人だったんだろう?
話は変わるが、彼がいなくなったことで新しい問題が露見した。
山積みとなった依頼に視線を向けて、私は大きなため息を吐く。
「この依頼の山、そろそろなんとかしないとヤバイかも……」
現在の私の状況であるが上手くいっているとはあまり言いがたい。
どちらかと言えば『困っている』という現状だ。
具体的に何に困ってるかというと錬金術師としての仕事ができない。
錬金術は専属魔導士が採取してきた素材を錬金術師が調合する形で行われるタッグ制だから、片方が機能しなくなると機能不全になる。
今回は専属魔導士がいなくなったから、素材の入手ができず、素材の調合が滞っている状況だ。
私は他のアトリエのように複数の専属魔導士を雇っていない。
だからロイドがいなくなれば素材を集める術がなくなってしまう。
現在、私のアトリエには専属魔導士はいない。
錬金術師は、なんらかの理由で依頼を行う事ができない場合、拒否もしくは譲渡ができる。
どちらも減点される事には変わりないが、譲渡に成功した場合は最小限のダメージで済む。
他のアトリエにいくつか立ち寄って依頼の譲渡を行ったけれど、すべてやんわりと断られてしまった。
要求する素材の難易度が高すぎるようで専属魔導士が全員首を横に振ったらしい。
あのロイドですら採取できる依頼を断るなんて信じられなかった。
それと同時に彼らに対して怒りの感情も湧いた。
彼らはきっと優秀な私が苦しんでいるのを見て影で笑っているのだろう。
一部の依頼の提出期限が過ぎた事でアトリエの評価がAランクからBランクへと降格した。
1ランク上げるのにおよそ1年かかるので精神的ダメージも大きい。
このまますべての依頼を放っておけば半年後にはEランクにまで降格するだろう。
早く新しい専属魔導士を探さねば。
……ああもう! こんなにたくさんの依頼を引き受けるんじゃなかった!
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