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第2話:絶縁

「もう終わりにしよう」


 無意識に口から出た言葉は俺の本心だった。


 ルビーのワガママにこれまで付き合ってきたがもう限界だ。

 世間からのバッシング、幼馴染のパワハラ。これ以上は俺の身が持たない。どこにでもいい、この地獄から早く逃げ出したかった。


「なにを終わりにしたいの?」

「俺たちの関係だ。俺はもうお前の専属魔導士は疲れた。彼氏も今日限りで解消する」

「はいはい、夕方までには帰ってきてね。今日の晩御飯はカレーでお願いね」


 二人の会話にはかなり温度差がある。ルビーは自分が捨てられるとは夢にも思っていないようで、人を小馬鹿にしたような表情で笑っている。


「理解してないみたいだが俺はちゃんと伝えたからな。俺はアトリエを出ていく。お前との関係も今日でさよならだ」

「だーかーらー。どっか行くならさっさと行きなよ! ロイドのそういう細かい所すごくウザい。絶縁するのに手続きなんていちいち踏まなくていいよ、携帯の解約か」


 ルビーの許可も取ったので俺は寝室に戻り荷物をまとめる。


「《アイテムボックス》」


 魔法で《アイテムボックス》を出現させる。

 アイテムボックスはコンテナの形をしており、全長は1メートル程度とコンパクト。しかし、この中には素材や装備といったアイテムを1000個まで積めることができる

 現在は200個のアイテムが入ってるので新たに服や日用品などを追加していった。


 アイテムボックスの容量

 250/1000


 最終的にこのようになった。

 いつの間にかルビーが俺の隣に立っており、コンテナの中を覗き込んでいる。


「結構本格的じゃん。無能魔導士のロイドが私なしで生きていけるなんてちょっと考えられないなぁ。外で私のような優しい錬金術師が見つかるといいね」


 冗談じゃない。お前のようなクズはまっぴらごめんだ。

 ルビーをキッと睨む。

 ルビーは素知らぬ顔をしており、一枚の紙をアイテムボックスに投入した。


 アイテムボックスの容量

 251/1000



「お前いま何を入れたんだ?」

「帰りにアールグレイを買ってきてっていう手紙だよ」


 こ、このクソ女。この期に及んで俺をパシリにするつもりか。

 もはや会話は不用。コイツの顔はもう二度と見たくない。


 俺は行き先を告げることなくアトリエを飛び出した。


「さてこれからどこに行こうか。故郷に帰るのは気まずいから、できれば俺のことを誰も知らない新天地がいいな」


 まだ目的地は定まっていない。

 できれば一からやり直したいので俺の悪評が広まっていない辺境の領地がいいだろう。


 王都の公園にある噴水近くのベンチに座って今後の予定を考える。

 感情だけで飛び出してきたので、思えば完全にノープランだ。我ながら子供だな。だが、今さらあのアトリエに戻ろうとは絶対に思わない。


 一時間ほど考えて、最終的に目的地はミネルバへと決めた。


 ミネルバを選んだ理由は二つある。

 一つ、馬車で三週間ほどかかる辺境の町で王都からも随分と距離が離れている。この地域は俺やルビーの知り合いがいないから俺がロイドだとバレる心配はない。

 一つ、ミネルバにはアトリエが存在しないのでルビーの事を思い出さなくて済む。



 目的地も決まったことだし善は急げだ。うかうかしてると突然気が変わったルビーからアトリエに連れ戻されかねない。


 俺は知り合いに見つからないように細心の注意を払いながら馬車を見つけてそれに乗った。


 行き先はもちろんミネルバ。

 俺のセカンドライフはこれから始まる。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] この手の幼馴染少女のざまぁ系で気になるのは、 主人公に絶縁されて落ちぶれた相手が気の毒な描写で描かれ始め、 反省し後悔し復縁を迫り、最終的にそれを主人公が受け入れるか、 それともあくま…
[気になる点] 携帯電話この世界にあるんですか…?
[一言] 紙、取り出さないんだぁ。
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