第17話:冒険者ギルド(中編) 領域レベル
今回は長いので三つに分けました。
中編は説明が中心となります。
全部話すと長くなるので要点だけ。
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○冒険者ギルドの規模
冒険者ギルドという組織は西方大陸にある13の国家すべてが加盟している連合組織。
冒険者ギルドに所属している者は、面接審査さえ通れば、別の国でも本国と同じように冒険者として活動できる。
○冒険者ギルドの目的
冒険者ギルドの主な目的は『領域』の安定化。
領域とは土地の危険度を指し示すレベルだ。
領域のレベルを下げる聖女の力はとても偉大であるが聖女は万能ではない。
聖女は国に一人しかいないので、聖女一人にすべてを任せることは不可能なのだ。
かつては聖女が過労で倒れてしまうというトラブルもよく頻発していた。
聖女の負担を減らすために作られた組織と言っても過言ではない。
王国軍(※いわゆる騎士団のことだ)は国境付近では慎重な行動を取らざる得ないし、人が立ち入りづらい森の中や山の中にまでは、わざわざ軍を派遣できない。
冒険者ギルドは騎士団が担当しづらい地域を、聖女なしで解決するために作られた組織と言える。
傭兵との差異はさほどないが、『国が管理している』という部分が大きな違いだろう。
民間組織ではあったが、50年ほど前から国の組織へと昇格し、様々な規則が定められるようになった。
冒険者ギルドにやけにルールが多いのもこれが理由だ。
○冒険者ランク
ギルドにはEランク、Dランク、Cランク、Bランク、Aランク、Sランクの六種類が存在し、ランクに応じて引き受けることができる依頼が決まっている。
しかし、使い手の《~級》によってスタート地点が違うため、マルスやレラのような中級クラスはDランクからスタートできる。
マスター級の場合はSランクからスタートするそうだ。達成感もなにもあったもんじゃないな。
○領域との関連性
冒険者ランクは領域との関係性が非常に重要視されており、領域は次の四種類に分類される。
安全領域、支配領域、危険領域、未開領域
Eランク 安全領域
Dランク 支配領域
Cランク 支配領域
Bランク 支配領域
Aランク 危険領域
Sランク 未開領域
このような対応表が存在している。しかし、BランクによってはAランク相当のものもあるため油断してはいけないらしい。
○ランクの降格
自身のランク未満のクエストを引き受けるためにはギルド側の許可が必要。
よほどの事がなければ却下されることはないが、自身のランク未満のクエストばかり引き受けていると、職員側からランクの降格を提案される場合がある。
○ランクボーナス
Bランク以上になるとギルド側から『ボーナス』がある。噂によるとAランクは避暑地に別荘がもらえるとかなんとか。
○最後に
この西方大陸は呪われており、放っておくと領域レベルが上がっていき、最終的には人が住めない未開領域になってしまいます。
私たちの未来のためにも、100年後の子孫のためにも、冒険者全員が一致団結して呪いと戦いましょう!
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「このような感じになります」
女性職員は説明を終えた。
「相変わらず説明が長いな。半分しか理解できなかったぞ」
「マルスくんらしいね。ロイドさんはどうですか?」
「完璧だ」
「流石ですロイドさん」
説明が終わると、女性職員は引き出しから水晶を取り出して机の上に置いた。
「いまからロイドさまの実力を測るので、この水晶に触れてみてください」
マスター級とバレること自体はもう怖くない。
でも、マスター級は飛び級制度のせいでSランク確定。
そうなると俺は下のランクを安易に引き受けることができなくなる。
ギルド側に許可を取れば一応できるらしいが、毎回申請を通すのは面倒だ。
最初からゴール地点にいるのはなにも面白くない。
セカンドライフだからこそ一からやり直したいのだ。
俺は水晶に手を触れて、自身の魔力の流れを調節して水晶に魔力を加える。
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魔導士 中級上位
剣士 初級上位
僧侶 初級下位
武闘家 初級上位
騎士 初級下位
あなたにオススメの領域 支配領域
現在の冒険者Dランク
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水晶に代表的な五つの職業とオススメの狩場が表示された。
能力値の改竄は成功したようだ。
即興にしてはまずまず。
できればEランクからやってみたかったが、あまりにも極端な改竄をするのと疑われると思ったので『普通』くらいにしてみた。
よくわからんが、中級上位って『普通』くらいだろ。
「なるほど魔導士の方でしたか。
その若さで中級上位に足を踏み入れるとはなかなかやりますね。
ロイドさまは『天才』なんですね」
あ、あれ? 思っていた反応と違う。
というか、中級上位って天才の部類なの!?
中級だから普通だと思ってた……。
「これなら素直に初級にしておけばよかった」
「はい?」
「あっ、いや。褒めてくれてありがとう。頑張った甲斐があったよ」
あぶねぇ。
あやうく水晶の改竄がバレるところだった。
「水晶にも書かれているようにロイドさまは支配領域でクエストをするのが望ましいでしょう。
支配領域は冒険者ランクでいうところのランクBからランクDの中間に値する部分なので、ランクCを目安にすれば安全に冒険できると思います」
「危険領域と未開領域には足を踏み入れてはいけないってことか」
「そのための水晶チェックですからね。
入ったからといって罰則はありませんが命の保証はできません。
あと、未開領域は冗談でも入らない方がいいと思います。
あの領域は冒険者ランクSの方でも普通に死んでしまう超危険エリアです」
女性職員は苦笑いを浮かべてそう答えた。
「また、夜間の冒険もできれば控えましょう。
夜は魔族が活性化するため危険度が増します。また、魔力が混在する関係上、領域レベルの上昇率も高く、昼間は支配領域だと思っていたら、夜になると危険領域に領域レベルが上がっていた事例も数多くあります。
我々が提示する領域レベルとは、あくまで冒険者の身を守るための指標の一つであって絶対的なものではありません。その点をくれぐれも忘れないようにしてください。
適性領域が支配領域であるロイドさまの場合、次のような魔物が出現したら危険領域に突入したということなので充分注意してください」
女性職員は新たに一冊の本を俺に渡した。
本のタイトル名は『猿でもわかる魔物のランク表』。
タイトルには子供が書いたようなニコニコ笑顔の冒険者の絵が描かれている。
雰囲気的に某有名なイラスト素材みたいな感じ。
1ページ目には「適当に読むと死ぬよ」と短く書かれていた。
タイトルと中身の重さが違いすぎる……!
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