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第155話:リスタート(9)

 それからほどなくして、白薔薇は目を覚ました。

 体調の変化に気づいて、私に現在の状況を尋ねた。

 教会で気絶してからの記憶がない彼女にこれまでの経緯を説明した。錬金術で解毒したことも合わせて伝えた。

 白薔薇は、信じられないと言わんばかりの表情で驚愕した。


「まさかアナタに二度も救われるなんて夢にも思わなかったわ。どうやら私はアナタに大きな借りを作ってしまったみたいね」

「気にしなくていいよ。私も好きでやっていることだから。それに、私も今回の一件で大きな収穫を得た。だからそれで満足」


 ロイドに頼らずともレシピ本があれば錬金術ができるようになったこと。

 これは私にとって大きな進展だった。

 今回のきっかけを作ってくれた白薔薇には私からも感謝の言葉を伝えたいくらいだ。

 白薔薇が近づいて来て私の手をギュッと握った。


「いいえ、私が納得できないの。私にアナタのお手伝いをさせてちょうだい。これでも私、他人から受けた恩はちゃんと返す方なのよ」


 私の瞳を覗き込むような真剣な眼差しでそう答えた。

 元々綺麗な女性だったが、こうして間近で見るとなおさら美しく映った。

 ジッと眺めていると無性に恥ずかしくなったので、私は白薔薇から視線を逸らし、その提案を呑むことと了承した。

 白薔薇は大変喜び、私の体に思いっきり抱き着いた。私は手をばたつかせながら慌てる。


「はわわ、急に抱き着かないで」

「ふふふ、ルビーって案外恥ずかしがりやなのね。でもやめてあげないわ。だって今のルビー、すごくかわいいもの♪」


 白薔薇はそう答えてギュッと両腕に力を込めた。

 しばらくは離れてくれなさそうだ。

 信頼されるとアグレッシブになるところはフェアと似ているところがあった。

 白薔薇からはふんわりと花の匂いがして密着してるとすごく安心する。


「いい匂いがする」

「アルラウネですもの。蜜の香りで獲物を引き寄せるのは大得意よ」

「恩人を食べないでよ」

「食べるなと言われると余計食べたくなるわ」

「ダメだこりゃ」

「……誰かにこんなに強い関心を抱いたのは、あの子以来かもしれないわね」


 白薔薇はボソリとそう呟いた。


「え? なんだって?」

「ううん、なんでもないわ。それよりルビー。これから一緒に行動を共にすることになるから、私の通り名ではなく、私の本名を教えてあげる。そっちの方がアナタに迷惑が掛からないと思うわ」

「なんていう名前なの?」

「ハクアよ」


 白薔薇改めハクアは私に本名を教えた。

 どうやらこの本名を知っているのは、私の他には世界に一人しかいないらしい。

 数少ないその一人に選ばれたことはとても名誉だ。認められたという意味でもある。


 それなら呼び方を改めないと。

 流石に真名をそのまま呼ぶのは気が引けるから、


「ハクと呼ぶけど大丈夫?」

「ええ、それで問題ないわ」


 すると、その時。

 私達のいる部屋の窓ガラスが音を立てて砕け散る。

 左右の腕をクロスにして、全身で窓ガラスをぶち破る形でコーネリアが部屋に入ってきたのだ。


「またお会いしましたね、お二人さん。この私からは絶対に逃げられませんよ」


 コーネリアは黒い笑みを浮かべながら剣を抜いた。

 全身から殺気をまき散らしており、近づくものを皆切り捨てそうな勢いだ。


 しかし、幸いなことにハクアが復活したことで2対1の状況下。

 制空園を展開されようとも手数で押し切ることは十分可能だろう。


「ふふふ、その油断が命取りになることを教えてあげますよ。皆の者、火を放ちなさい!」

「「「「かしこま!」」」」



 次の瞬間、窓の外から無数の火の矢がアトリエに飛び込んでくる。


「はぁ!? ちょちょちょちょっと待ちなさいよ! ここ私の家なのよ!」

「エメロード教の聖典にはこう書かれています。聖女は悪を消すためならその行動すべてが正義になる! 聖火に巻かれてここで朽ち果てなさい!」


 め、めちゃくちゃすぎる。

 すると、ハクアが私を守るように一歩前に歩み出た。


「白薔薇?」


 目の前にコーネリアがいるので、私は真名での言及を避けて通り名を口にする。


「ルビー。ここは私に任せて頂戴。この程度の相手ならアナタが出るまでもないわ」

「私も随分と舐められたものですね。これでもメルゼリア王国で最強を誇る聖剣士なんです。西方剣術 《エクストリオン》の前ではどんな技も無力!!!」

「ふん、狭い世界で生きているわね。だったら教えてあげるわ。太古の昔より存在している最強の剣術を」


 ハクアはそう答えて、剣を正中線に構える。

 すると、彼女を包み込むように何重にも魔力の渦が集約する。


 そして、包み込んでいた渦が音を立てて弾け飛んだ。

 ハクアの頭部には大きな狐耳。お尻の少し上の位置には九つの尻尾。

 白狐を彷彿とさせるケモミミ少女になっていた。


「獣王剣……終ノ型『真化』」


 燃え盛る戦場で、ハクアは驚くほどに落ち着いていた。

 そして、ゆっくりと剣を移動させ、左奥から真横に振りぬく構えとなる。


「一撃で終わらせてあげるわ」

「無駄です! 剣式を展開した時点で、私はどんなに速い攻撃も容易に撃ち落とす事がで(ky」


 鷹剣を極めたことで、私の動体視力は、集中すれば音速の物体すらも捉える事ができる。

 しかし、ハクアの動きはまったく捉える事が出来なかった。

 コーネリアはその攻撃をもろに受けたようで、その衝撃で天井をぶち破り、地平線の彼方へと吹き飛んで星になった。


 さらに、いまの一振りで、周囲を包み込んでいた炎も鎮火された。

 まさしく神の一撃。

 ハクアの剣式は、剣士の完成形とも言えるものだった。



※ケモミミ状態になればラスボスも一方的にボコれるくらい強くなりますが、ラスボスは四人(しかも屑)なので、この技だけだと盤外戦術を取られてどこかで詰みます。



白薔薇ハクアの戦歴

1戦目:対ロイド  炎魔法を連打されて回復が追い付かずに涙目敗走

2戦目:対セフィリア 普通に倒して誘拐

3戦目:対セフィリア+ロイド フルグロウで強化されたセフィリアでリズムを崩し、勝利を確信して油断したところを衝かれて即死。

4戦目:対兵士  剣を預けていることを忘れてフルボッコ

5戦目:対コーネリア 聖法力で感度3000倍にされて敗北

今回:対コーネリア 勝利


なんだこれは……これが世界最強の魔人の姿か……

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― 新着の感想 ―
[良い点] 頭が…頭が弱点過ぎる…
[気になる点] >ハクアを守るように私の前に歩み出た 誰が二人の前に歩みでたんだ? そして、その直後に教えて貰ったばかりの真名を襲撃者の前で呟くってありえない。
[一言] 正直これだけ戦えるなら剣なくても城の兵士対応出来たやろ
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