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第150話:リスタート(4)

「どこに向かってるの?」


 王都を道なりに歩いてると、急に白薔薇が私の行く先を尋ねてきた。

 私は進行方向を指差した。人差し指が指し示すその彼方にはピンク色のメルゼリア城が見える。

 私はメルゼリア城に向かう目的を説明する。


「メルゼリア王国の陛下に会いに行きたいんだ」

「なるほど、その女を私に殺してもらいたいのね」

「そんなわけないでしょ」

「じゃあなんの目的があるの?」


 目を丸くする白薔薇に私はため息を吐いた。

 どうやら冗談ではなくマジでそう考えていたらしい。

 天然なのか、常識がないのか、それとも両方なのか。

 黒鴉師匠ってかなりの常識人だったんだなと実感する。


「これから王都を長期間離れるから、その了解を得なければならないんだ」

「しないとどうなるの?」

「陛下が部下を使って追ってくるよ。これでも王国一の錬金術師だからね」

「随分と人気者じゃないの。妬けちゃうわね」

「まったくそんなこと思ってない癖に。とにかく、手続きの邪魔はしないで下さいね」

「ふふふっ、了解」


 前世の記憶が正しければ、ここで陛下の対応をミスるとかなり面倒なことになる。

 だから多少面倒でも陛下の了解を得て、公的に王都を出発しなければならない。

 道なりに歩いて、私と白薔薇の二人は、敷地へと続く正門へと到着する。


 正門の左右には兵士が二人配置されており、私達を一旦止めた。

 幸いなことに私は王国ではかなりの有名人。

 陛下にお会いしたいと伝えると、あっさりと許可を得る事が出来た。


 その際、手荷物検査だけは受ける必要があった。


「悪いが、この短剣は預からせてもらうぞ」


 兵士は白薔薇から短剣を二本押収した。

 白薔薇は不服そうな表情を見せたが、兵士の要求に素直に応じた。


 私はそれを見て感心した声を発した。


「案外素直なのね」

「邪魔はしないと約束したもの。私は約束は守るわ」


 意外と律儀だ。

 それを口にすると白薔薇は少しだけ不機嫌になったので、それ以上はなにも言わず、私達は謁見の間まで案内人に誘導してもらった。


 メルゼリア王国の女王。

 金髪のロリ少女が玉座の上から私達を見下ろしている。

 その表情には威厳と余裕が満ち溢れており、不思議と嫌味な印象は感じられない。


「私に対して、すぐに伝えたい事があると大臣から聞かされたけど、何か問題でもあったのかしら?」

「専属魔導士のロイドに契約を打ち切られました」

「ロイド……? って誰だっけ?」

「採取率40%の無能魔導士です」と大臣が陛下に耳打ちする。


 私はその言葉にムッとなったが、元凶は私なので何か言える立場ではない。


「つまり、新しい専属魔導士を雇いたいの?」

「いいえ、彼を探しに行きたいのです。だから陛下の許可を頂きたい」

「エレガントじゃないわね。縁故採用の男の存在なんて忘れなさい。私が素晴らしい専属魔導士を見繕ってあげるわ」

「ありがたいお言葉ですが遠慮しておきます。私の専属魔導士はあとにも先にもロイドただ一人です。ロイド以外を専属魔導士にするなら、私は錬金術師を引退します」


 そもそも、ロイドの採取した激レア素材でしか調合できない。

 自分の情けなさに乾いた笑いが零れそうだった。


 私の反抗的な言葉に陛下はやや驚きつつも、威厳を保つため、怖い表情で私を問い詰めてくる。


「それは、女王である私の言葉に逆らう、という意味かしら?」

「はい」

「ルビー。私は善意で提案してるのよ。アナタの錬金術の失敗は、あの男が原因である事は私だって把握している。だから、その原因を取り除いてあげようと思っているの」

「陛下、それは誤解です。ロイドはとても優秀な魔導士です。彼は本来ならありえないレベルの素材を採取してきているんです」

「どういう意味?」


 私はロイドの普段採取している素材の件を説明する。

 陛下は面白くなさそうな表情でその話を黙って聞いている。


「ルビー。どうせ嘘をつくなら、もう少しわかりづらい嘘をつきなさい。エリアゼロで素材を採取するなんて不可能に決まっているでしょう」

「それが彼なら簡単にできてしまうんです」

「ノットエレガント! それ以上口答えをするなら牢屋にぶち込むわよ”!」


 陛下は声を荒げて私を叱責する。

 陛下の怒りを買って、私は焦りを隠せなくなる。

 真実を言っても信じてもらえないのは流石に想定外だった。

 前回は嘘に嘘を塗り重ねてやらかしたが、今回はその逆パターンだ。


 このままだと前世と同じ展開になってしまう。


「はぁ……話の通じないガキンチョね」


 すると、白薔薇が大きなため息を吐いた。


「は?」


 陛下の眉間に怒りマークが浮かび上がった。


「そこのアナタ。いまこの私に対してなんて言ったかしら? 内容によってはただじゃ済まないわよ」

「黙りなさいチビ。聞こえなかったのなら、何度でもガキンチョと繰り返してあげるわ」

「~~~~~~~ッッ! ノットエレガンッッット!!!!!!!!! アナタ達、そこの白髪ババアをボコボコにしなさい!!!!!! ひっさびさに怒天髪に来たわ!」

「「「「「かしこまりました」」」」」


 二十人余りの騎士達が一斉に動き出して私達を囲んだ。

 そして、白薔薇めがけて飛び掛かってきた。


「やれやれ、戦う相手の力量すらわからないなんて、本当に人間は愚かね。全員死になさい」


 白薔薇はそう言って腰に手を当てる。


「あっ、やばっ。そういえば剣はあの兵士に預けたままぎゃあああああああああああああ!!?」



 バキバキボコボコボコボコ!!!!!!

 白薔薇は数の暴力によって撃沈した。


 なんだこいつ!?

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― 新着の感想 ―
[一言] え?まさか白薔薇って得物がない、もしくはちょっとでもパニクるとクソ雑魚化してしますタイプ? それはそれとして、女王陛下はロイドの実力はある程度把握してたと思ったがどうなってんだ?
[一言] なんだこいつ!?って本当になんだこいつ!?
[良い点] お前…お前ー!仮にもあの域に足を踏み入れた剣士がなんだそのザマはー!
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