第147話:リスタート(1)
カタストロフィは初老の男性であり、黒衣を身に纏って悠然と玉座に座っている。
彼の周りには数多くの護衛が配置されており、その大半がゾンビ化した一般市民だった。
その中には私の知り合いもいた。
ゾンビの中でも派手な衣装を着ている金髪少女。
メルゼリア王国のトップである陛下だ。
彼女もすでに殺されておりゾンビ化していた。
陛下は私を発見するや奇声を発しながら襲いかかってくる。
そこに昔のようなエレガントさはない。陛下の変わり果てた姿にショックを受ける。
また、陛下の背後には他のゾンビも大勢待ち受けており、彼らは無表情のまま操り人形のように次々と襲いかかってくる。
まともにやり合えば勝ち目はない。
一撃で決めに行く。
私は紅花九尾によって能力値を限界まで引き上げて、彼らの背後にいる元凶のカタストロフィを抹殺するために一気に距離を詰める。
そして、両手に剣を持ち替えて大きく振るった。
しかし、私の剣が奴に届くことはなかった。
風が横を通り過ぎたかと思えば、私の右腕が切断されていた。
次の瞬間、立っていられないほどの激痛が全身を貫いた。
私はたまらず悲鳴を上げてしまう。
「ぐうううッ!?」
「愚かな女だ。この私を倒そうなど千年早い」
カタストロフィは傲慢な表情を浮かべて口元を引き上げる。
その面を一発でもいいからぶん殴ってあげたかった。
しかし、それは一生叶いそうにない。
カタストロフィは手から光線を放つ。
太陽が目の前に現れたような眩しさと熱量を感じた。
死を覚悟した。
走馬灯が映し出された。不思議な事に、その記憶の大半がロイドとの思い出だった。
後悔してないと納得していたつもりだったが、最期にその記憶を呼び覚ました私は、ロイドに未練があったのかもしれない。
せめて、最期にありがとうと一言伝えたかった。
…
……
………
…………
……………
「もう終わりにしよう」
気がつけば、私の目の前に深刻な表情を浮かべたロイドがいた。
彼の右手には、私が過去に捨てた記憶のあるフルールド・エインセルが握られていた。