第142話:いざ王都へ(2)
王都を目指して孤児院を出発した私達は、半日ほど歩いてその日の野宿場所を見つけた。
森の中ではあるが、比較的開けた視界の良い場所なので、野宿にはピッタリである。
「この辺りは美味しいキノコが群生してるので、今日の夕食にしましょう」
レラの提案に乗って、私はレラと一緒に付近を探索する。
ちなみにフェアはお留守番だ。
キノコは木の陰に生えている事が多いので、そこを意識しながら探していく。
「キノコ発見♪」
するとさっそく私は目的のキノコを見つけた。
「えっ!? ルビーさんもうキノコを見つけたんですか!? 流石ですルビーさん!」
「駆け出しのころはよく採取に出かけていたからね」
「なるほど。それで鍛えられたんですね。私もキノコ採取にはそこそこ自信がある方なんですが、ルビーさんには勝てませんね」
「流石にほめ過ぎだよ」
私は苦笑する。
天狗になって破滅した経験があるので、どうしても褒められるのに抵抗感を覚えてしまう。
適当に辺りを散策してると、古びたつり橋を見つけた。
崖と崖を繋いでいる橋。その5メートルほど真下には流れの強い川が通っている。
落ちたら絶対に死ぬ奴だ。
「すごいボロボロだね」
「絶対に渡ってはいけないオーラーがします」
「からのー?」
「いや、絶対に渡りませんよ。どう見ても危ないですもん」
レラの意見は尤もである。私も特別な理由がない限り、ここを渡りたいとは思わない。
「それに、あの先の森の奥からは禍々しいオーラを感じますから、近づかない方が賢明でしょう」
「え? それってどういうこと?」
レラの告げた言葉に驚いて私は聞き返す。
「実は私、エルフ族なので森の状態がある程度わかるんです。この先の森から紫色の禍々しいオーラが伝わってきます」
「エルフ族ってそんな特殊能力があるんだ。レラがそこまで言うのなら近づかない方が無難だよね」
私達は元来た道を引き返そうとするが、突如その方角から甲高い悲鳴が聞こえてきた。
「いまの悲鳴は!?」
「きっとゾンビに襲われている生存者がいるんだ」
「おのれアイリス!」
前回の鬱憤もあったので、勝手にアイリスが原因という事にして私は生存者を助けるべく、私とレラは急いでつり橋を駆け抜けた。
最後まで渡り切ったタイミングでつり橋が崩落した。
「「ああ!?」」
私とレラは同時に叫んだ。
「ど、どうしましょうルビーさん。引き返せなくなってしまいました」
「と、とりあえず、帰り道のことはあとから考えよう。いまは生存者の救出が先だよ」
「そうですね」
私達はお互いにそう頷いて、森の奥へと足を踏み入れる。
先程までいた森と同じ場所のはずだが、こちらは鬱蒼としており、太陽の光をさえぎっているので夜のように暗い。
「《フラッシュボール》」
レラは魔法で発光する光の玉を出現させた。
それはホタルのようにフワフワと宙に浮いており、周囲を明るく照らした。
「へえ、そんな魔法があるんだ。便利な魔法だね」
「これで周囲が暗くても戦闘ができます」
それはとても心強い。
戦闘力はあまりないが、サポート役としてはレラはとても優秀なようだ。
私とレラは先を急ぐ。
そしてふたたび、私はアイリスと遭遇した。
「アイリスさん!?」
レラはアイリスの姿を見るや、すごく驚いたような叫び声を発した。
とても動揺しており、目を白黒させている。
「もしかして知り合い?」
「は、はい。知り合いというか、彼女は師匠の妻です」
「へ? つ、妻!?」
えええええ!?
誰かと結婚してるのはすでにわかっていたが、まさか目の前のアイリスが張本人だったとは……。